魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫

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青年期

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ジリジリと後ろに後退するも、後ろは教会の扉で行き場を阻まれた。
男はその場から動かずにっこりと笑っている。

フードはかぶってるよな?

「そんなに警戒しなくて大丈夫だよ。ほら、覚えてない?5歳の君を鑑定したの僕だよ」
自分を指さし、イケメンがきりっとした顔をした。
薄くだが先ほどより目も開いている…ような気がする。

「あ、ああ!お前っ、……そんな顔だったっけ?」
イケメンを指さしたものの本気で覚えていなかったので誰おま状態だ。

目の前のイケメンが漫画みたいにガクッと足を踏み外すようにたたらを踏んだ。
何してんだ?

鑑定した奴いるかなとは思ったものの、本当にいるとは思っていなかった。


うーん、こんな若かったか?もっとおじさんだったような。
べたべた触りやがって、って思った記憶があるし。
俺が、子供だったからだろうか。

いやいや、それにしても若すぎだろ。
見た感じ、20代だぞ。

俺が5歳の時に20代だったとしても、あれから13年経ってるんだぞ。
あり得ねえだろ。
それか…老け顔なのか?

…その線が濃厚だな。
外国人ってみんな大人っぽい顔してるし。
ホントに同い年かよ、みたいな。


…ん?そういや、あの時から俺は魔力を吸い取ってたはずなんだよな。
なんで魔力を測られたときは平気だったんだ?

「まあ、君は5歳だったからね。無理もないよ」
ハハハ、と笑う男に不信感が募る。

安心感なんて微塵も感じない。
勘違いだった。

糸目の奴には気をつけろって前世の俺が言ってるんだ。

「で、俺を鑑定してくださった神官さん、何の用ですか?」
変な奴には、近づかない。さっさと離れるに限る。
ジトっと男を見ながら言うと、大げさなほどに大声で返事が返ってくる。

「用があるのは君だろうっ?!」
うるさっ!
さっきから何を必死になっているんだろうか。
残念なイケメンだな。
「いや、あなたにはないんですけど」

「クリーン魔法をかけてもらいに来たんだろう?」

「ああ、そういえば。じゃあお願いします」
男のインパクトにすっかり忘れていたがそういやクリーン魔法かけてもらいに来たんだった。

できれば違う人にしてもらいたいなぁ。

この男に5歳の頃の俺を覚えられているきもさや、認識阻害が効いていないことも相まって余計に…キモイ。
ただしイケメンに限るというのは前世でよく見たが、イケメンでもそれを上回ることはあるらしい。


「あ、でも中に入らないとしちゃいけないんだ。中に入ってもらえるかな?」
先ほどとは打って変わって語尾に♪がつくような話し方をされて驚いた。

だから、誰なんだよ。まじで俺の記憶にないんだが。

こんなくせつよ男に出会ったら絶対忘れないだろ。


逃げようにもこの男が前に立ちふさがっているせいで逃げられない。
魔力を吸うのは最終手段として残しておきたい。

腕についたバングルを撫でながら渋々男の後についていく。
できれば、回れ右をしたいところだ。

「ああ、ここでは君は魔力は吸えないので、安心してください」
教会の扉をくぐったところで男が突然そんなことを言った。

っっ!!
ビビったあぁ!

なんで俺が魔力吸えるって知ってるんだ。

思わず立ち止まると「どうしました?」と笑いながら振り向いた。
なんで、急に敬語なの。教会入ったから?お仕事モードになったの?

人は、理解できないものに出会うと恐怖を感じるというがまさしく今がそれだ。

「なんでそれを…」

目の前で立ち止まった男は人畜無害みたいな顔でにっこり笑った。
教会のステンドグラスが日に反射して男の顔を暗くする。
瞬間ドッと冷や汗が出た。

――これは、ダメだ。

「おや、どうしました?青い顔をしてますが。今、クリーン魔法をかけますね」
男の手がゆっくりと俺の頭上に伸びるのが見えた。

頭が急に真っ白になって体が動かなくなってしまった。

ポタリと自分の額から流れる汗が手に当たりハッとした。
金縛りが解けたように手が、口が、足が動く。

「……い、、や、大丈夫…です。帰、ります」

言った瞬間全力疾走で教会から逃げた。
後ろを振り返るのさえ怖かった。

意を決して振り返ると男はもういなかった。

そのことに安堵の息を漏らし、あそこの教会には二度と行かないと決めた。

体は熱いのに震えていた。

何だったんだ。あいつ。
あんな怖いやつに会ったのは初めてだった。

ホラー映画でも観た気分だ。


額に浮かぶ汗をぬぐって、一息ついたところで思い出した。

あ、家具屋行くんだったわ。

よし、クリーン魔法は諦めよて家具屋に行こう。
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