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青年期
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俯いたまま動かない男の前を通り過ぎギルドマスターの後をネロと共に歩く。
相変わらず周りの視線が集中している。
ギルドマス……ギルマスの身長は、180センチくらいだろうか。長い髪を一つ結びにして馬の尻尾みたいにゆらゆらと揺らしている。
後ろ姿を追っていくと二階に上がっていく。
どうやら事務所は二階にあるらしい。
初めて来る場所なのにこんなところまできていいんだろうか。
二階に上がりながら一階を見ると、先ほどの男のもとに仲間らしき人たちが集まっているのが見えた。
その様子は、注意された仲間を慰めているように見えた。
そんなにギルマスに注意されたのが悔しいのだろうか。
皆の前でさらされたのが嫌だったのかもな。それは分かる。
…なんかごめんな。
二階に上り廊下を進んでいく。
時折、受付嬢らしき人や、冒険者たち何人かとすれ違った。
会釈しながら進んでいくと扉の前でギルマスが止まった。
ドアノブに手をかざすとガチャリと鍵の開く音がした。
やはり、魔法でロックされているようだ。
初めて見たけど、そうやって開くんだ。
後ろからその様子を眺めていると、声がかかる。
「さ、入ってくれ」
中から扉を開けて入室を促された。
「失礼します」
と、ネロと共に入室。
何だか、仕事の面接に来た気分である。
中はソファ二つが向かい合わせになっており、真ん中に長テーブルと奥に事務作業をするのであろう机がある。綺麗めなこざっぱりとした部屋だ。長テーブルにはバラのような真っ赤な花が置いてある。
ギルマスというと想像では、もう少し豪快な感じの粗野っぽさがあると思っていた。
だが、この人は全然そんな感じはしないな。
氷の騎士とか言われてそうだ。
知らんけど。
向かい合いになるように彼が座ったので、こちらも座る。
この世界上座とかあるんだろうか。
「改めてこのギルドのギルドマスターを務めているグレイヴだ。よろしく頼む」
「私はシルヴァと言います。そしてこの子が……ネロです」
息子というとまた面倒なので濁すことにする。
「先ほどはすまなかった。威圧まで使ってしまって。……君たちにはあまり効いていないようだったがな」
うわ、効いたふりしといたほうがよかった?
てか、なんで効かなかったんだろ。魔力に関係あるんだろうか。
でもネロもとなると……魔法の相性とかもあるのかもしれない。
魔法使えないからってあんまり身を入れて勉強しなかったんだよなぁ。
考えているとグレイヴさんが指をパチンと鳴らした。
なんだ?!と慄いていると、なんと!
カップとポットがひとりでに動きお茶が淹れられていくじゃありませんかっ!
うわっ、便利!何それ、一番うらやましいかも。
俺もやりてぇー。勝手にお茶とか入ってほしい。
……ネロ使えるようにならないだろうか。
いやいや、無理に使わせるのは良くないぞ。
そもそも、俺は魔法を教えられないんだから。
「言い訳のようになってしまうが先ほどの彼は、魔物との戦いで最近ギルドメンバーの一人を亡くしているんだ。大目に見てやってほしい」
グレイヴの声でハッとした。
今はそんなことを考えている場合じゃなかった。
てか、待て。あの絡んできた彼にそんな過去があったとは。
嫌味まで言ってしまった。
申し訳ないじゃないか。
今度会ったら謝っとこう。
そう決めてグレイヴの話に耳を傾ける。
「今回来てもらったのは少し気になることがあったからなのだが、さすがにあの場では言えなくてな」
「はぁ」
「ああ、そうだ。ギルドには何の用で来たんだろうか」
なんでだよ。
そっちの要件を話すんじゃないんかい。
「あ、そうでした。この子と親子登録ってできます?門番さんに、絡まれたくないならしておけって言われたんですけど…」
「親子登録?そうだな。できるにはできる…が、別にしなくても大丈夫じゃないか?」
なぜか後半言いにくそうに言うグレイヴ。
何か躊躇しているようにも見える。
「え、なんでですか?」
しなくてもいいとは?
「その子とは親子じゃないんだな?」
探るような視線に身構えてしまう。
嫌な予感がする。
じんわりと汗が滲む。
「はい、そうですね。ですが、もうこの子は息子なので。私が育てようと思っています」
「いやいや、誤解しないでくれ。ネロ君を取ろうというんじゃないんだ。ただ……その子は随分魔力が多いようだ。認識阻害をかけているようだが、見るものが見ればわかる」
「はぁ、何が言いたいんでしょう。グレイヴさんも魔力が多いように見受けられますが」
「そうだな、そうだ。僕も多い。……君はどうなんだ?シルヴァ君と言ったか。君には魔力があるように見えない。そんな君がネロ君を育てるという。大人として見過ごせない」
「何が問題なんですか。こう見えて私も大人です。物事の分別はつくつもりです」
「……落ち着いてくれ。言い争いをしたいわけじゃない。ネロ君が怪しまれているのは知っているか?」
「――え」
何それ。
そんなの知らない。
思わずネロに視線を向ける。
ネロは状況がよくわかっていないようで、こちらの顔を見つめ返すだけだ。
「昨日、森でボヤがあった。普段人がいない場所でだ。人を派遣したいところだがあそこはハーベル王国だ。こちらが安易に調査などできるわけがない。だが、ハーベル王国の者に聞いたところ、あそこはある貴族の屋敷だそうだ。
薄暗い噂の多い貴族らしくそのものもあまり詳しくは教えてくれなかった」
「この情報は近くのギルドや貴族しか知らないだろう。あまり騒がれても面倒だからな。緘口令が敷かれている」
おい、そんなの俺に言っちゃっていいの?
こちとら初めましてだぞ。
俺としては聞きたくないんだが。
そんな俺の願いむなしくグレイヴの口が開いた。
「……問題はその後だ。その貴族の噂というのが――魔王に関することだった」
相変わらず周りの視線が集中している。
ギルドマス……ギルマスの身長は、180センチくらいだろうか。長い髪を一つ結びにして馬の尻尾みたいにゆらゆらと揺らしている。
後ろ姿を追っていくと二階に上がっていく。
どうやら事務所は二階にあるらしい。
初めて来る場所なのにこんなところまできていいんだろうか。
二階に上がりながら一階を見ると、先ほどの男のもとに仲間らしき人たちが集まっているのが見えた。
その様子は、注意された仲間を慰めているように見えた。
そんなにギルマスに注意されたのが悔しいのだろうか。
皆の前でさらされたのが嫌だったのかもな。それは分かる。
…なんかごめんな。
二階に上り廊下を進んでいく。
時折、受付嬢らしき人や、冒険者たち何人かとすれ違った。
会釈しながら進んでいくと扉の前でギルマスが止まった。
ドアノブに手をかざすとガチャリと鍵の開く音がした。
やはり、魔法でロックされているようだ。
初めて見たけど、そうやって開くんだ。
後ろからその様子を眺めていると、声がかかる。
「さ、入ってくれ」
中から扉を開けて入室を促された。
「失礼します」
と、ネロと共に入室。
何だか、仕事の面接に来た気分である。
中はソファ二つが向かい合わせになっており、真ん中に長テーブルと奥に事務作業をするのであろう机がある。綺麗めなこざっぱりとした部屋だ。長テーブルにはバラのような真っ赤な花が置いてある。
ギルマスというと想像では、もう少し豪快な感じの粗野っぽさがあると思っていた。
だが、この人は全然そんな感じはしないな。
氷の騎士とか言われてそうだ。
知らんけど。
向かい合いになるように彼が座ったので、こちらも座る。
この世界上座とかあるんだろうか。
「改めてこのギルドのギルドマスターを務めているグレイヴだ。よろしく頼む」
「私はシルヴァと言います。そしてこの子が……ネロです」
息子というとまた面倒なので濁すことにする。
「先ほどはすまなかった。威圧まで使ってしまって。……君たちにはあまり効いていないようだったがな」
うわ、効いたふりしといたほうがよかった?
てか、なんで効かなかったんだろ。魔力に関係あるんだろうか。
でもネロもとなると……魔法の相性とかもあるのかもしれない。
魔法使えないからってあんまり身を入れて勉強しなかったんだよなぁ。
考えているとグレイヴさんが指をパチンと鳴らした。
なんだ?!と慄いていると、なんと!
カップとポットがひとりでに動きお茶が淹れられていくじゃありませんかっ!
うわっ、便利!何それ、一番うらやましいかも。
俺もやりてぇー。勝手にお茶とか入ってほしい。
……ネロ使えるようにならないだろうか。
いやいや、無理に使わせるのは良くないぞ。
そもそも、俺は魔法を教えられないんだから。
「言い訳のようになってしまうが先ほどの彼は、魔物との戦いで最近ギルドメンバーの一人を亡くしているんだ。大目に見てやってほしい」
グレイヴの声でハッとした。
今はそんなことを考えている場合じゃなかった。
てか、待て。あの絡んできた彼にそんな過去があったとは。
嫌味まで言ってしまった。
申し訳ないじゃないか。
今度会ったら謝っとこう。
そう決めてグレイヴの話に耳を傾ける。
「今回来てもらったのは少し気になることがあったからなのだが、さすがにあの場では言えなくてな」
「はぁ」
「ああ、そうだ。ギルドには何の用で来たんだろうか」
なんでだよ。
そっちの要件を話すんじゃないんかい。
「あ、そうでした。この子と親子登録ってできます?門番さんに、絡まれたくないならしておけって言われたんですけど…」
「親子登録?そうだな。できるにはできる…が、別にしなくても大丈夫じゃないか?」
なぜか後半言いにくそうに言うグレイヴ。
何か躊躇しているようにも見える。
「え、なんでですか?」
しなくてもいいとは?
「その子とは親子じゃないんだな?」
探るような視線に身構えてしまう。
嫌な予感がする。
じんわりと汗が滲む。
「はい、そうですね。ですが、もうこの子は息子なので。私が育てようと思っています」
「いやいや、誤解しないでくれ。ネロ君を取ろうというんじゃないんだ。ただ……その子は随分魔力が多いようだ。認識阻害をかけているようだが、見るものが見ればわかる」
「はぁ、何が言いたいんでしょう。グレイヴさんも魔力が多いように見受けられますが」
「そうだな、そうだ。僕も多い。……君はどうなんだ?シルヴァ君と言ったか。君には魔力があるように見えない。そんな君がネロ君を育てるという。大人として見過ごせない」
「何が問題なんですか。こう見えて私も大人です。物事の分別はつくつもりです」
「……落ち着いてくれ。言い争いをしたいわけじゃない。ネロ君が怪しまれているのは知っているか?」
「――え」
何それ。
そんなの知らない。
思わずネロに視線を向ける。
ネロは状況がよくわかっていないようで、こちらの顔を見つめ返すだけだ。
「昨日、森でボヤがあった。普段人がいない場所でだ。人を派遣したいところだがあそこはハーベル王国だ。こちらが安易に調査などできるわけがない。だが、ハーベル王国の者に聞いたところ、あそこはある貴族の屋敷だそうだ。
薄暗い噂の多い貴族らしくそのものもあまり詳しくは教えてくれなかった」
「この情報は近くのギルドや貴族しか知らないだろう。あまり騒がれても面倒だからな。緘口令が敷かれている」
おい、そんなの俺に言っちゃっていいの?
こちとら初めましてだぞ。
俺としては聞きたくないんだが。
そんな俺の願いむなしくグレイヴの口が開いた。
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