魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫

文字の大きさ
61 / 63
青年期

60

しおりを挟む
突き刺さる視線の中、まっすぐに受付に向かう。
こういうのはおどおどしてたらだめだ。
舐められたら絡まれる。
強気でいかなければ。

あちこちでこそこそとした話し声が聞こえる。
 白い、魔力、よそ者等々おおよそ友好的ではない言葉が聞こえる。

視界の端で明らかに俺らに向かって近づいてくるものまでいる。
前世で見たことあるぞ。お前、日本にいたら、コンビニの前でたむろしてるタイプだろ。
暇なんか?

面倒くさいのでそいつよりも早足で歩き、受付に向かう。

今まで会ってきた人たちは割と友好的だった。焼き鳥屋の店主や、家具屋の二人とかな。
だからレストランの男が珍しいのだと思っていたけどそうでもないらしい。

歩いていると受付のお姉さんと目が合った。
まあ、お姉さんもこっちを見てたから合うも何もないんだが。
むしろ、俺が合わせにいったようなもんだな。

あと数メートルで受付というときに、お姉さんが「あ」という顔をした。
その視線は後ろに向かっていた。
嫌な予感がして後ろを振り返る。

!!
見ると、先ほどの男がネロの腕をつかんでいた。
見た瞬間、早歩きでネロのもとまで行き男の腕をつかむ。
「…おい、息子に汚い手で触んな」

思ったより低い声が出た。
ぎりぎりと男の腕を強くつかむ。もちろん素手で直接だ。

顔をしかめてうめき声をあげた男は、俺の腕と共にネロの腕も払いのけるように離した。
乱暴に払いのけられたネロがドサッと尻餅をつく。

おい!何すんだ!

ネロのもとに駆け寄り、男を下から睨みつけると、男は力が抜けたように座り込んだ。
魔力を取りすぎたかな。
周囲の人たちが一層ざわめき出した。

「…なんだよ。よそ者が何の用だ。怪しい奴らめ」

負けじとこちらを睨む男。
出ていけ、とまで言う男にイラついた。

閉鎖的な村とかではないのだからそこまでよそ者扱いされる筋合いはない。
立ち上がりながら男を見据える。

「何も迷惑をかけた覚えがないんだが。どうしてそこまで言われなきゃいけないんだ?」

淡々と男に聞く。
普通に理由が知りたい。

「…その髪、魔法が使えないんだろう。ここはギルドだぞ。冷やかしか?」

逆にこの男の方が冷やかしで絡んできたと思っていたのだが、違うらしい。
かといって心配で、という感じではない。

「何をしようが自由でしょう。それとも何ですか?何かあなたにとって不都合なことが?言っておきますけど、冷やかしなんかじゃないですから」

つっけんどんに言うと男が黙った。

ギルドって別に依頼を受けるだけが仕事じゃないよなぁ。
依頼する人だって来るだろうし。
魔法の使えない俺が来たって何の問題もないはずだ。

なお言い募ろうと男が口を開いたその瞬間。

隣に知らない男が立っていた。

「そこまで」

低い声がその場に響いた。
その瞬間、全員に緊張が走ったように固まった。

俺はというと、突然瞬きの間に隣に長身の男がいたもんだから心臓が飛び出るくらいに驚いた。
ホラー映画さながらの登場だ。

今も心臓がバクバクとうるさくなっている。

もしかして、周りが静かなのって俺の心臓の音が大きすぎるからでは、と錯覚しそうになる。


男がこちらを向いた。
バチりと視線が合う。

金縛りが溶けたようにほうっと息を吐きだした。
俺の体も固まっていたらしい。

銀色の瞳に同色の髪色。
といっても、黒に近い色だ。

ネロの色に少し白色を混ぜたような色だな。
光に当たりキラついている。ネロは光に反射しないもんな。

 白って二百色あんねん。

頭の中で誰かの声が聞こえたような気がした。
そういや、黒は三百あるらしいな。

と、そんなことはどうでもよくて。

この男は一体誰なんだ。
と、思う間もなく先ほどまで言い合っていた男が答えを教えてくれた。

「ギルドマスター」

ギルドマスター?この男が?

「何があった?」

「す、すみません。魔力の無いこの男が入ってきたので…」

「それで?」

こわ。
短い言葉が余計に冷たく感じさせる。

「……命をはる仕事なのにっ、冷やかしかと…」

男が汗をかきながらギルドマスターの質問に答えている。
まじでそんな理由だったのかよ。

と思いながら、男に視線を向けると、顔色まで悪くなっている。
何か圧をかけられているんだろうか?

「ふむ、それで何かされたのか」

「い、いえ」

「…すまないな。少年たち、うちのものが迷惑をかけたようだ」

言ってからスッと綺麗なお辞儀をした。

どうやら話の分かる人らしい。
幾分か溜飲が下がった俺はにこやかにギルドマスターに応じる。

「いえ、きっと彼にとって俺のようなものが現れてプライドに傷がついたんでしょう」

嫌味は忘れないけどな。

「っく、いい性格をしているな。…少しいいだろうか。私の事務所に来てほしい」

前半小声で言ってるがすぐ隣にいる俺にはばっちり聞こえているからな?

先ほどまで能面のように無表情だったくせに噛み殺したような笑みを見せるギルドマスター。
イケメンのギャップを間近に浴びた何人かの女性が「うっ」と、うめき声をあげた。
何人か野太い男の声も聞こえたのでよほど人気なギルドマスターなのだろう。

そして、なぜかそんなイケメンの事務所にお呼ばれされてしまった。
周囲の視線が痛い。

なんだ?
厄介事はごめんだぞ。

そう思うものの、このギルドの長に逆らえるわけもなく渋々ついていく。

どうしてこうも面倒くさいことが次々と起こるのだろうか。
面倒事はお断りである。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

魔王様の執着から逃れたいっ!

クズねこ
BL
「孤独をわかってくれるのは君だけなんだ、死ぬまで一緒にいようね」 魔王様に執着されて俺の普通の生活は終わりを迎えた。いつからこの魔王城にいるかわからない。ずっと外に出させてもらってないんだよね 俺がいれば魔王様は安心して楽しく生活が送れる。俺さえ我慢すれば大丈夫なんだ‥‥‥でも、自由になりたい 魔王様に縛られず、また自由な生活がしたい。 他の人と話すだけでその人は罰を与えられ、生活も制限される。そんな生活は苦しい。心が壊れそう だから、心が壊れてしまう前に逃げ出さなくてはいけないの でも、最近思うんだよね。魔王様のことあんまり考えてなかったって。 あの頃は、魔王様から逃げ出すことしか考えてなかった。 ずっと、執着されて辛かったのは本当だけど、もう少し魔王様のこと考えられたんじゃないかな? はじめは、魔王様の愛を受け入れられず苦しんでいたユキ。自由を求めてある人の家にお世話になります。 魔王様と離れて自由を手に入れたユキは魔王様のことを思い返し、もう少し魔王様の気持ちをわかってあげればよかったかな? と言う気持ちが湧いてきます。 次に魔王様に会った時、ユキは魔王様の愛を受け入れるのでしょうか?  それとも受け入れずに他の人のところへ行ってしまうのでしょうか? 三角関係が繰り広げる執着BLストーリーをぜひ、お楽しみください。 誰と一緒になって欲しい など思ってくださりましたら、感想で待ってますっ 『面白い』『好きっ』と、思われましたら、♡やお気に入り登録をしていただけると嬉しいですっ 第一章 魔王様の執着から逃れたいっ 連載中❗️ 第二章 自由を求めてお世話になりますっ 第三章 魔王様に見つかりますっ 第四章 ハッピーエンドを目指しますっ 週一更新! 日曜日に更新しますっ!

囚われた元王は逃げ出せない

スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた そうあの日までは 忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに なんで俺にこんな事を 「国王でないならもう俺のものだ」 「僕をあなたの側にずっといさせて」 「君のいない人生は生きられない」 「私の国の王妃にならないか」 いやいや、みんな何いってんの?

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

『悪の幹部ですが、正義のヒーローの愛が重すぎて殉職しそうです』

るみ乃。
BL
世界を脅かす悪の組織『デッド・エンド』。 その幹部として恐れられる「冷徹な死神」シャドウ…… しかしその正体は、組織壊滅を目的に潜入中の捜査官・瀬戸だった。 悪役を演じつつ任務に励む日々の中、彼の前に立ちはだかる最大の難敵は、正義のヒーロー「ルミエール」こと天道光希。 敵同士のはずなのに、なぜか光希は瀬戸を命がけで守り、 命がけで溺愛してくる。 爽やかさゼロ、純度100%、とにかく重い愛情に振り回されながら、 瀬戸は今日も正義と悪の狭間で右往左往。 これは、逃げたいのに逃げられない潜入捜査官と、愛が重すぎるヒーローが織りなす、甘くて騒がしいBLラブコメ。

平凡な俺が完璧なお兄様に執着されてます

クズねこ
BL
いつもは目も合わせてくれないのにある時だけ異様に甘えてくるお兄様と義理の弟の話。 『次期公爵家当主』『皇太子様の右腕』そんなふうに言われているのは俺の義理のお兄様である。 何をするにも完璧で、なんでも片手間にやってしまうそんなお兄様に執着されるお話。 BLでヤンデレものです。 第13回BL大賞に応募中です。ぜひ、応援よろしくお願いします! 週一 更新予定  ときどきプラスで更新します!

悪役の僕 何故か愛される

いもち
BL
BLゲーム『恋と魔法と君と』に登場する悪役 セイン・ゴースティ 王子の魔力暴走によって火傷を負った直後に自身が悪役であったことを思い出す。 悪役にならないよう、攻略対象の王子や義弟に近寄らないようにしていたが、逆に構われてしまう。 そしてついにゲーム本編に突入してしまうが、主人公や他の攻略対象の様子もおかしくて… ファンタジーラブコメBL 不定期更新

「これからも応援してます」と言おう思ったら誘拐された

あまさき
BL
国民的アイドル×リアコファン社会人 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 学生時代からずっと大好きな国民的アイドルのシャロンくん。デビューから一度たりともファンと直接交流してこなかった彼が、初めて握手会を開くことになったらしい。一名様限定の激レアチケットを手に入れてしまった僕は、感動の対面に胸を躍らせていると… 「あぁ、ずっと会いたかった俺の天使」 気付けば、僕の世界は180°変わってしまっていた。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 初めましてです。お手柔らかにお願いします。 ムーンライトノベルズさんにも掲載しております

英雄の溺愛と執着

AzureHaru
BL
転生した世界は前世でどハマりしたBLゲーム。最推しは攻略対象!ではなく、攻略対象達の剣術の師匠である、英雄の将軍閣下。メチャクチャイケオジでドストライクだった主人公はこのイケオジみたさにゲームをやっていた。その為に、ゲームの内容など微塵も覚えていなかった。 転生したからには将軍閣下を生でみないとというファン根性で付きまとう。 付き纏われていることに気づいていた将軍だか、自分に向けられる視線が他とは違う純粋な好意しかなかったため、戸惑いながらも心地よく感じていた。 あの時までは‥。 主人公は気づいていなかったが、自分達にかけらも興味を持たないことに攻略対象者達は興味をそそられ、次第に執着していく。そのことにいち早く気づいたのは剣術指南役の将軍のみ。将軍はその光景をみて、自分の中に徐々に独占欲が芽生えていくのを感じた。 そして戸惑う、自分と主人公は親子ほどに歳が離れているのにこの感情はなんなのだと。 そして、将軍が自分の気持ちを認めた時、壮絶な溺愛、執着がはじまる。

処理中です...