魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫

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青年期

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口元にフォークを持っていく。
ネロはそれをぼんやりと見つめている。

「ん?どうした?ほら、食べていいぞ」

恥ずかしいのだろうか?

口元に持って行ったハンバーグをネロの唇につける。
ほら、美味しいぞ~。

すると、おずおずと口を開けてくれた。

ゆっくりと咀嚼するネロ。
良かった。食べてくれた。
地味に体勢がきつかったんだよな。テーブル挟んでるから。

自分の席に座り直し、空のフォークをお皿の上に置く。
さて、ネロの口に合っただろうか。
半ば無理やりだったから嫌いじゃないといいんだが。

ネロの様子を見守っていると急に動き出した。
口元をもぐもぐと動かし嚥下する。

初めてそんな素早い動きを見た、と凝視していると次の瞬間にはフォークを手にしハンバーグにかぶりついていた。

待て待て、お前あんなガリッガリなのにそんないきなり早食いは良くないぞ!

止めようにも俺は触れられないし!
と、あたふたしている間に8割はもう、ネロの胃の中だ。

はぁ…細かく切っといてよかった。
でかいままいってたら喉に詰まらせてるとこだぞ。

声をかけても止まりそうな気配がないので好きにさせることにした。
もし、お腹壊したらポーション飲ませよう。

――
喉に詰まらせやしないかと、ハラハラしながら見守っていると、満足したのかフォークを置いた。

よっぽどおいしかったらしい。
ソースまで飲み干している。

子供が食べるには割と量があったハンバーグをものの数分で食べ終えた。
すごいな。食べさせがいがある。


コップに水を注いで渡す。

「うまかったか?」

ぺろりと口元をなめるネロ。
猫みたいだ。

あ、ソースが。
右頬にソースが跳ねている。
拭ってあげたい。

俺が普通の人なら。
魔力を奪ってしまわなかったら。
触れられたら。

自身の手を強く握りしめる。

「ネロ、ついてるぞ」
自分の右頬をトントンとたたく。

気付いたネロが自身の手で拭った。

子供のようなその姿に知らずに笑みがこぼれる。

表情というものをどこかに置いてきたようにぼーっとしていたネロに表情がある。
それを引き出したのがハンバーグというのは何というか…悔しいというか、さすがというべきか。

双子の門番にここを教えてもらってよかった。


俺とネロのお皿が空になり満腹になった俺は、ネロと共に席を立つ。

「行こうか。…と、その前にお金を払わなきゃな」

メニュー表もなく代金もわからないので店員に聞けばいいか?

ちょこまかと動いている店員に声をかける。
「すみません!お会計したいんですけどっ!」

「あ、はい。今、行きますね」

しばらく待っていると店員が近づいてきた。

「ハンバーグ定食二人前ですね。…銀貨一枚です」
千円くらいか。二人分なら安いな。
一人500円だぞ。

鞄から銀貨を取り出し、店員に渡す。

「はい、ありがとうございます。…あの、お兄さんここらで見ない顔ですけど…どこからいらしたんです?」

「なぜそんなことを?」
突然そんなことを聞いてくる店員に訝しげに見上げる。

「あ、ぶしつけにすみません。…先ほど倒した男ですけど、ここらでは割と知られているCランクの男なんですよ。それをあんなに軽々と倒しちゃうなんてっ!あ、ああ、すみませんっ。興奮してしまって」

前のめりになる彼に思わずのけぞった。

いったん落ち着け?

Cランクって強いの?Aとかならわかるけど…Cって微妙じゃね?
それか、この街には高ランクの冒険者はいないのだろうか。

「やっぱり、外の冒険者の方は強いんですね!かっこいいなぁ」
きらきらの瞳を見せる彼に罪悪感が湧いてくる。

なんか勘違いされてんなぁ。

褒めてくれてるところ悪いけど、あれ、ずるなんだ。
そして俺は冒険者じゃない。
と、言うといろいろと面倒くさそうなので曖昧に相槌を打ってごまかしておく。

「ああ、ありがとう。…そろそろいいかな。これから予定があるんだ」

「あ、すみません。ありがとうございました!また、来てくださいね!」

「ああ、ここは美味しかった。また来るよ。今度は静かに食べられるといいんだが…」

「うっ、止められずすみません」

ホントにな。


店を後にした俺たちは、さっそくギルドに向かうことにした。
ギルドの場所はわからなかったが、クエスト終わりと思われる冒険者たち六人ほどがぞろぞろと一点に向かうのでついていくことにした。
その先がギルドだと思われる。

皆、満身創痍って感じだ。
鎧に血がついていて戦いの怖さを物語っている。

歩いていくみんなの後をついていくと目の前に現れたのはザ・ギルドという面持ちの建物だった。

年季の入った建物からは喧騒が外からでも聞こえてくる。
前の冒険者たちがギルドに入っていったので俺たちもしれっと一緒に入る。

入った瞬間、ムワンといろんな匂いが鼻を刺激した。
思わず顔をしかめる。

お酒、たばこ、血。
それから汗臭い。
致命的だ。

あんまりここにはいたくないな。
というより今すぐここから出たい。

結構な人がいるがこの人たちは皆冒険者なのだろうか。
こんな空間によくいられるな。

鼻が馬鹿になっているのだろうか。


お酒を飲んで陽気に歌っている人や、喧嘩をしている人。
それを止める職員さんらしき人と喧嘩を楽しそうに眺めている人。
壁に貼られている貼り紙を眺めている人。

いろんな人がいる。
だけど、白髪は誰もいない。
もちろん黒髪も。

つまり…みんなの視線が俺に突き刺さっている。

…またかよ?!
すっごいデジャヴだよ!
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