59 / 75
青年期
58
しおりを挟む
ガタっと音を立てて木製の長椅子から立ち上がる。
周りの空気が動いた感じがした。
いつの間にか俺と男のタイマンのように円形に場が開いている。
やっちまえ、いけー!兄貴ー!などと男への声ばかりで、俺への応援の声は聞こえない。
アウェーだなぁ、と思いつつも男の前に立つ。
俺と男のどちらが勝つか、などと賭けている声も聞こえる。
残念ながら俺に賭ける奴がいないようだ。
ふざけんな。
座っていた時も思っていたが、この男でかいな。
俺の身長は160センチ。それに対し、この男は170以上。180近くありそうだ。
日本ではこんな背の高いやつ身近にいなかったからちょっと威圧感がある。
おまけにがたいの良さまで兼ね備えてやがる。
俺がひょろいのをみて絡んできたのだろうか。
嫌な奴である。
この前も絡まれたし…俺って絡まれやすいのだろうか。
迷惑甚だしいな。
立ち上がったのは良いものの…ここからどうすればいいんだ?
魔法使いと言うと、お辞儀をして杖を構えて…までがセットだと思うのだがこの世界に杖はない。
魔法を使われても困るんだけどな。
使われたら俺勝てないし。
我慢比べでもするんだろうか。
真顔で見合って笑ったら負けとか?んなわけないか。
もう、恥をかいてもいいや。めんどくさい。
聞いてしまおう。
"聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥”である。
「あの…何をするんですか?」
そう聞くと、周りがどっと笑った。
「おいおい、何をするかもわからず立ったのか?お前、度胸あるなぁ。いや、世間知らずのお嬢様か?」
深窓のお嬢様と言いたかったのだろうか?
ギャハハとまたも笑う外野。
笑ってねぇで教えろって。
笑ってばかりで教えてくれそうにないので、外野ではなく傍観している周りの客に視線を向ける。
あ、店員いんじゃん。
「店員さん、ご飯そろそろできそうです?」
急に俺に振られたことで視線が店員に集中した。
「…えっ、あ、はい!」
そのことに視線をさまよわせ、自分に言われたのだと気付くと裏返った声で返事をしてくれた。
もういいかな?せっかくのご飯が冷めちゃうじゃん。
「なんでもいいけど。伸せばいいの?」
「ああ?!魔法も使えないようなガキが言うじゃねぇか」
「そうなんですよ。俺、魔法使えないんで。魔法の使用なしでお願いしますよ?」
へらへら笑いながら釘を刺しておく。
強化魔法とかもやめろよ?
さすがにこの場所で魔法を使うほど馬鹿ではないと信じたい。
「おめえなんか魔法使わなくても負ける気がしねぇよ。なぁお前ら」
そうだ、そうだと湧く男の仲間たち。
「それなら、握手しましょう。紳士的にね」
にっこり笑って右手を差し出す。
周りにこれだけ観客がいるのだ。断らないだろ。
パフォーマンスは大事である。
ふんと鼻を鳴らしながら握手に応じる男。
ちょろくて助かる。
しめしめ、かかったな。
内心ほくそ笑む。
ぎゅっと握って「お願いしますね」と笑いかける。
その数秒後――男の体がぐらついた。
その瞬間を見逃さず、男の間合いに入って下から持ち上げるように両肩を思い切り押す。
するとあっけなく男の体は倒れた。
周りも何が起こっているのかよくわかっていないようだった。
空気が止まった。
ふふん、驚いただろう。俺みたいな小柄な男にやられて。
母上直伝の技だ。と言っても、魔力を吸える俺にしかできないのだけど。
観衆も一拍を置いたのち、歓声を上げた。
お前らさっきまで男のことを持ち上げていたくせに薄情だな。
未だ倒れている男を見下ろし声をかける。
「もういいか?そろそろご飯が食べたいんだが…」
呼びかけたが返事がない。
え、死んでないよな。
ちょっと不安になる。
「リーダー!お、お前、今なんかしただろ!」
指をさしながら吠える男の仲間たちに、俺は全くと言いたげに溜め息をついた。
「俺が何したっていうんだよ。こんな大勢に見られてる中で。強いて言えば運が良かっただけだろ」
すまんな。嘘ついて。
仲間たちがリーダーだという男の肩を揺さぶると「うぅっ」と、うめき声がした。
良かった。生きてるわ。
回収されていくリーダーを見送り周囲を見渡す。
さぁ散った散った。
見世物は終わりだ。
さてもう気は済んだろう。
「ネロ、お待たせご飯にしよう」
ネロはこちらをジッと見つめていた。
待ちくたびれただろうネロに笑いかけながら椅子に座りなおす。
「店員さんご飯お願いします!」
手をあげて主張する。
「あ、はっはい」
店員さんが人の間を縫って料理を持ってきてくれた。
「おおー!うまそう!ネロ食べられそうか?苦手なのあったら無理しなくていいからな」
目の前にはハンバーグにデミグラスソースがかかったプレートが。
ブロッコリーらしき野菜と芋もついている。
最高だ。
前世ぶりのハンバーグだ。
この世界はご飯が日本とそっくりで本当に助かる。
ま、この世界を作ったのは日本なのだからそれはそうなのだけど。
いざ、ナイフで切り分け口に運ぶ。
その瞬間口内にあふれる肉汁。
う、うめぇぇー。
舌鼓を打ちつつネロの様子を見ていると、料理を前にしても動く様子がない。
どうしたんだろうか?肉はダメだったかな。
「ネロ、肉は無理か?魚とかなら大丈夫かな?変えてもらう?」
フルフルと首を振るネロ。
両手にナイフとフォークを持っているがそれらが肉に刺さることはない。
もしかして…食べ方が分からない…とか?
今、教えてもいいが温かいうちに食べてほしいな。
そうだ、食べさせればいいのか。
思いついた俺はさっそくネロのお皿のハンバーグを食べやすいように切っていく。
ひとかけらをフォークで刺すとネロの口元に。
いわゆるあーんである。
周りの空気が動いた感じがした。
いつの間にか俺と男のタイマンのように円形に場が開いている。
やっちまえ、いけー!兄貴ー!などと男への声ばかりで、俺への応援の声は聞こえない。
アウェーだなぁ、と思いつつも男の前に立つ。
俺と男のどちらが勝つか、などと賭けている声も聞こえる。
残念ながら俺に賭ける奴がいないようだ。
ふざけんな。
座っていた時も思っていたが、この男でかいな。
俺の身長は160センチ。それに対し、この男は170以上。180近くありそうだ。
日本ではこんな背の高いやつ身近にいなかったからちょっと威圧感がある。
おまけにがたいの良さまで兼ね備えてやがる。
俺がひょろいのをみて絡んできたのだろうか。
嫌な奴である。
この前も絡まれたし…俺って絡まれやすいのだろうか。
迷惑甚だしいな。
立ち上がったのは良いものの…ここからどうすればいいんだ?
魔法使いと言うと、お辞儀をして杖を構えて…までがセットだと思うのだがこの世界に杖はない。
魔法を使われても困るんだけどな。
使われたら俺勝てないし。
我慢比べでもするんだろうか。
真顔で見合って笑ったら負けとか?んなわけないか。
もう、恥をかいてもいいや。めんどくさい。
聞いてしまおう。
"聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥”である。
「あの…何をするんですか?」
そう聞くと、周りがどっと笑った。
「おいおい、何をするかもわからず立ったのか?お前、度胸あるなぁ。いや、世間知らずのお嬢様か?」
深窓のお嬢様と言いたかったのだろうか?
ギャハハとまたも笑う外野。
笑ってねぇで教えろって。
笑ってばかりで教えてくれそうにないので、外野ではなく傍観している周りの客に視線を向ける。
あ、店員いんじゃん。
「店員さん、ご飯そろそろできそうです?」
急に俺に振られたことで視線が店員に集中した。
「…えっ、あ、はい!」
そのことに視線をさまよわせ、自分に言われたのだと気付くと裏返った声で返事をしてくれた。
もういいかな?せっかくのご飯が冷めちゃうじゃん。
「なんでもいいけど。伸せばいいの?」
「ああ?!魔法も使えないようなガキが言うじゃねぇか」
「そうなんですよ。俺、魔法使えないんで。魔法の使用なしでお願いしますよ?」
へらへら笑いながら釘を刺しておく。
強化魔法とかもやめろよ?
さすがにこの場所で魔法を使うほど馬鹿ではないと信じたい。
「おめえなんか魔法使わなくても負ける気がしねぇよ。なぁお前ら」
そうだ、そうだと湧く男の仲間たち。
「それなら、握手しましょう。紳士的にね」
にっこり笑って右手を差し出す。
周りにこれだけ観客がいるのだ。断らないだろ。
パフォーマンスは大事である。
ふんと鼻を鳴らしながら握手に応じる男。
ちょろくて助かる。
しめしめ、かかったな。
内心ほくそ笑む。
ぎゅっと握って「お願いしますね」と笑いかける。
その数秒後――男の体がぐらついた。
その瞬間を見逃さず、男の間合いに入って下から持ち上げるように両肩を思い切り押す。
するとあっけなく男の体は倒れた。
周りも何が起こっているのかよくわかっていないようだった。
空気が止まった。
ふふん、驚いただろう。俺みたいな小柄な男にやられて。
母上直伝の技だ。と言っても、魔力を吸える俺にしかできないのだけど。
観衆も一拍を置いたのち、歓声を上げた。
お前らさっきまで男のことを持ち上げていたくせに薄情だな。
未だ倒れている男を見下ろし声をかける。
「もういいか?そろそろご飯が食べたいんだが…」
呼びかけたが返事がない。
え、死んでないよな。
ちょっと不安になる。
「リーダー!お、お前、今なんかしただろ!」
指をさしながら吠える男の仲間たちに、俺は全くと言いたげに溜め息をついた。
「俺が何したっていうんだよ。こんな大勢に見られてる中で。強いて言えば運が良かっただけだろ」
すまんな。嘘ついて。
仲間たちがリーダーだという男の肩を揺さぶると「うぅっ」と、うめき声がした。
良かった。生きてるわ。
回収されていくリーダーを見送り周囲を見渡す。
さぁ散った散った。
見世物は終わりだ。
さてもう気は済んだろう。
「ネロ、お待たせご飯にしよう」
ネロはこちらをジッと見つめていた。
待ちくたびれただろうネロに笑いかけながら椅子に座りなおす。
「店員さんご飯お願いします!」
手をあげて主張する。
「あ、はっはい」
店員さんが人の間を縫って料理を持ってきてくれた。
「おおー!うまそう!ネロ食べられそうか?苦手なのあったら無理しなくていいからな」
目の前にはハンバーグにデミグラスソースがかかったプレートが。
ブロッコリーらしき野菜と芋もついている。
最高だ。
前世ぶりのハンバーグだ。
この世界はご飯が日本とそっくりで本当に助かる。
ま、この世界を作ったのは日本なのだからそれはそうなのだけど。
いざ、ナイフで切り分け口に運ぶ。
その瞬間口内にあふれる肉汁。
う、うめぇぇー。
舌鼓を打ちつつネロの様子を見ていると、料理を前にしても動く様子がない。
どうしたんだろうか?肉はダメだったかな。
「ネロ、肉は無理か?魚とかなら大丈夫かな?変えてもらう?」
フルフルと首を振るネロ。
両手にナイフとフォークを持っているがそれらが肉に刺さることはない。
もしかして…食べ方が分からない…とか?
今、教えてもいいが温かいうちに食べてほしいな。
そうだ、食べさせればいいのか。
思いついた俺はさっそくネロのお皿のハンバーグを食べやすいように切っていく。
ひとかけらをフォークで刺すとネロの口元に。
いわゆるあーんである。
345
あなたにおすすめの小説
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
異世界オークションで売られた俺、落札したのは昔助けた狼でした
うんとこどっこいしょ
BL
異世界の闇オークションで商品として目覚めた青年・アキラ。
獣人族たちに値踏みされ、競りにかけられる恐怖の中、彼を千枚の金貨で落札したのは、銀灰色の髪を持つ狼の獣人・ロウだった。
怯えるアキラに、ロウは思いがけない言葉を告げる。
「やっと会えた。お前は俺の命の恩人だ」
戸惑うアキラの脳裏に蘇るのは、かつて雨の日に助けた一匹の子狼との記憶。
獣人世界を舞台に、命の恩人であるアキラと、一途に想い続けた狼獣人が紡ぐ、執着と溺愛の異世界BLロマンス。
第一章 完結
第二章 完結
『悪の幹部ですが、正義のヒーローの愛が重すぎて殉職しそうです』
るみ乃。
BL
世界を脅かす悪の組織『デッド・エンド』。
その幹部として恐れられる「冷徹な死神」シャドウ……
しかしその正体は、組織壊滅を目的に潜入中の捜査官・瀬戸だった。
悪役を演じつつ任務に励む日々の中、彼の前に立ちはだかる最大の難敵は、正義のヒーロー「ルミエール」こと天道光希。
敵同士のはずなのに、なぜか光希は瀬戸を命がけで守り、
命がけで溺愛してくる。
爽やかさゼロ、純度100%、とにかく重い愛情に振り回されながら、
瀬戸は今日も正義と悪の狭間で右往左往。
これは、逃げたいのに逃げられない潜入捜査官と、愛が重すぎるヒーローが織りなす、甘くて騒がしいBLラブコメ。
平凡な俺が完璧なお兄様に執着されてます
クズねこ
BL
いつもは目も合わせてくれないのにある時だけ異様に甘えてくるお兄様と義理の弟の話。
『次期公爵家当主』『皇太子様の右腕』そんなふうに言われているのは俺の義理のお兄様である。
何をするにも完璧で、なんでも片手間にやってしまうそんなお兄様に執着されるお話。
BLでヤンデレものです。
第13回BL大賞に応募中です。ぜひ、応援よろしくお願いします!
週一 更新予定
ときどきプラスで更新します!
囚われた元王は逃げ出せない
スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた
そうあの日までは
忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに
なんで俺にこんな事を
「国王でないならもう俺のものだ」
「僕をあなたの側にずっといさせて」
「君のいない人生は生きられない」
「私の国の王妃にならないか」
いやいや、みんな何いってんの?
魔王様の執着から逃れたいっ!
クズねこ
BL
「孤独をわかってくれるのは君だけなんだ、死ぬまで一緒にいようね」
魔王様に執着されて俺の普通の生活は終わりを迎えた。いつからこの魔王城にいるかわからない。ずっと外に出させてもらってないんだよね
俺がいれば魔王様は安心して楽しく生活が送れる。俺さえ我慢すれば大丈夫なんだ‥‥‥でも、自由になりたい
魔王様に縛られず、また自由な生活がしたい。
他の人と話すだけでその人は罰を与えられ、生活も制限される。そんな生活は苦しい。心が壊れそう
だから、心が壊れてしまう前に逃げ出さなくてはいけないの
でも、最近思うんだよね。魔王様のことあんまり考えてなかったって。
あの頃は、魔王様から逃げ出すことしか考えてなかった。
ずっと、執着されて辛かったのは本当だけど、もう少し魔王様のこと考えられたんじゃないかな?
はじめは、魔王様の愛を受け入れられず苦しんでいたユキ。自由を求めてある人の家にお世話になります。
魔王様と離れて自由を手に入れたユキは魔王様のことを思い返し、もう少し魔王様の気持ちをわかってあげればよかったかな? と言う気持ちが湧いてきます。
次に魔王様に会った時、ユキは魔王様の愛を受け入れるのでしょうか?
それとも受け入れずに他の人のところへ行ってしまうのでしょうか?
三角関係が繰り広げる執着BLストーリーをぜひ、お楽しみください。
誰と一緒になって欲しい など思ってくださりましたら、感想で待ってますっ
『面白い』『好きっ』と、思われましたら、♡やお気に入り登録をしていただけると嬉しいですっ
第一章 魔王様の執着から逃れたいっ 連載中❗️
第二章 自由を求めてお世話になりますっ
第三章 魔王様に見つかりますっ
第四章 ハッピーエンドを目指しますっ
週一更新! 日曜日に更新しますっ!
俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜
小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」
魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で―――
義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる