魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫

文字の大きさ
72 / 75
青年期

71

しおりを挟む
うーん、呪文、呪文。
いざ、考えようとすると恥ずかしさがこみ上げてなかなか浮かばない。

くそう、ロット君を馬鹿にできないじゃないか。


目覚めろ!中二病の俺!

炎、火、……燃えろよ燃えろーよ、炎よ燃えろー。
今、懐かしの歌が頭をよぎったな。

はあ、楽しかったなぁ。あんま覚えてねぇけど。
学生の頃はキャンプなんかで友達と火を囲んで歌ったりしたっけ。

と、いかんこんなことを考えている場合ではない。
今は、朝食づくりの真っ最中である。


こう、かっこいいファンタジー感ある言葉ないかなぁ。

火……ファイア、燃える……
「……ファ、ファイアーバーン……」

…何も起きなかった。

アー、ダメだ!恥ずかしすぎる!
顔から火が出そうだ。
子供の頃は、魔法の呪文とか考えてたけども!俺の語彙力の問題なのか?
こんなん黒歴史をほじくり返されてるようなもんだろ!ふざけんなっ。

ネロ、今だけはその瞳で見てくんな。恥ずかしさ倍増だ。


待てよ?魔法には適正というものがある。
この世界でもそれは同じだろう。

俺は子供の頃ほんのちょっと薄紫色だった。んで、瞳は薄緑色。

俺ってば昔は色付いてたのになぁ。
いつの間にやら色が抜けてしまった。
今では、真っ白けだ。
外にほとんど出てこなかったせいか、肌まで病弱的に白いしまつだ。


リュカは、緑の髪で風属性。母上は紫色で炎属性。伯爵は知らん。

つまりだ、俺が魔法を使えるのであれば風属性か炎属性ということになる。

で、今検証したところ炎が使える可能性は低い。
まあ、やり方が悪い。呪文が悪い。想像力が足りない等々のせいかもしれないけど。
それか、英語で言ったせい?いやいや、呪文は想像力を補うものなら問題ないはずだ。

「肉…どうしよう。焼かないことには食べられないぞ?」

フライパンを持ったまま、茫然とする。

これは、ネロに魔法を覚えてもらった方が早いのではなかろうか。
いや、魔道具を買った方が早い気も。

待て、ネロに魔法を覚えてもらったところでネロだって特定の魔法しか使えないのでは?
ネロって何属性なんだ。黒だと、闇か?
ロット君と同じなのは癪だが。


と、思考の渦の中にいたところ、くいっと服の裾を引かれた。

ネロがこちらを見ている。
ごめんな。不甲斐ない親で。まさか朝食づくりもままならないとは。
伯爵家ではあんなに「料理得意です」みたいな顔ができていたのに。
ああ、ちなみに火を出すときや水を出すときはすべて近くにいたシェフか、別邸に移ったときはステラにしてもらっていた。

「ごめん、えっと、朝食はだな……」

といったところでネロが俺の前に出てきた。
そして俺の右手を掴む。
向かい合う形になっている。

なんだ、なんだ。

とネロを見た瞬間。

ぼわっと肉が燃えた。
文字通り肉から火が出たのだ。

「は?」

間の抜けた声が漏れた。

ネロを見ていたせいで燃える瞬間は見ていないが、視界の隅で火柱が上ったのが映った。

フライパンを落としそうになりつつ慌てて机の上に置くと……真っ黒に焼けた肉。
一応肉の形は残っている。
肉の焦げた匂いが立ち込め、お世辞にもおいしそうな匂いとは言えない。
無残な姿となってしまった肉を凝視していると、またもやネロに裾を引かれる。

肉に意識を持っていかれながらも、ネロを見ると心なしかシュンとしている。
犬のたれ耳が見える。

そこで気づく。

「あ、これネロがやったん?」

こくりと頷くネロ。

「お前、お前……」

口元に手をやってネロをジッと見つめる。

「天才?!うちの子天才だった件!」

思わず声がでかくなる。

「すげぇ!!無詠唱で属性じゃない火を?しかも俺の腕を掴んでただけなのに?!」

やばい、興奮してきた。

「ネロ!お前天才だな!教えてないのに!!」
しゃがんでネロにぎゅっと抱き着き、わしゃわしゃと頭を撫でまわす。

一体どこで覚えてきたんだ。魔力を流すのはうまくないくせに。

一瞬、にやりと笑う変態の姿が浮かんだがそれを慌てて打ち消す。
あの変態のおかげで飯にありつける、などと思いたくはない。

きっと、ネロが天才なだけだ。
うん。

「さてと、肉は焼けたし、あとは買ったパンでご飯にするか」

俺の魔法適正は後々検証するとして……まずはご飯だ。

できるだけ食べられる部分を残し、焦げた部分は削る。良かった、燃えカスになってなくて。
ちょっと不格好だが、正真正銘初めてネロが作った料理である。
焼いただけとか言うなよ。今、俺は感動してるんだ。


そうして、ちぎったレタスらしき野菜と肉を盛り付け、ルンルンでテーブルに座ったときである。
問題のノック音がしたのは。

狙ってきたんか、というタイミングに思わず舌打ちした。
なんだ!誰だ!内容次第によっては許さんぞ!

荒々しくドアに向かい、鍵を開ける。
思い切り開けてやりたいところだが、さすがにそれは…という前世社会人の俺が顔を出しゆっくりめにドアを開ける。

そっと、顔だけ出し招かれざる客をねめつける。

ん?!

「ロット君?!」
そこには、全く変わらないロット君の姿があった。いや、いくらかやつれて見える。

招かれざる客改めロット君は、なぜか目を見開き驚いていた。

来た側が驚くってどういうこと?

「な、なんであんたがここに?」

それはこちらのセリフである。

「一週間ぶりだねロット君。俺たちの新居に何しに来たのかな」

明らかに動揺しているロット君。
いつか来るとは思ったけど、俺もまさかこんなに早く会うとは思わなかったよ。

「ステラにここに行くように言われたんだが……」

こちらを訝しげに見ながら、ぼそぼそと話すロット君。

ステラと聞いてピンときた。
なるほど、ステラはロット君のサイドミッションを早々にこなしたようだ。
さすがステラ、オタクは行動が早い。

ふむ、まあいいや。

「とりあえず立ち話もなんだし入ってよ」

解せぬ、という顔をしているロット君を招き入れたところで椅子に座るネロと目が合う。

あ、マントしてねえ。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

異世界オークションで売られた俺、落札したのは昔助けた狼でした

うんとこどっこいしょ
BL
異世界の闇オークションで商品として目覚めた青年・アキラ。 獣人族たちに値踏みされ、競りにかけられる恐怖の中、彼を千枚の金貨で落札したのは、銀灰色の髪を持つ狼の獣人・ロウだった。 怯えるアキラに、ロウは思いがけない言葉を告げる。 「やっと会えた。お前は俺の命の恩人だ」 戸惑うアキラの脳裏に蘇るのは、かつて雨の日に助けた一匹の子狼との記憶。 獣人世界を舞台に、命の恩人であるアキラと、一途に想い続けた狼獣人が紡ぐ、執着と溺愛の異世界BLロマンス。 第一章 完結 第二章 完結

『悪の幹部ですが、正義のヒーローの愛が重すぎて殉職しそうです』

るみ乃。
BL
世界を脅かす悪の組織『デッド・エンド』。 その幹部として恐れられる「冷徹な死神」シャドウ…… しかしその正体は、組織壊滅を目的に潜入中の捜査官・瀬戸だった。 悪役を演じつつ任務に励む日々の中、彼の前に立ちはだかる最大の難敵は、正義のヒーロー「ルミエール」こと天道光希。 敵同士のはずなのに、なぜか光希は瀬戸を命がけで守り、 命がけで溺愛してくる。 爽やかさゼロ、純度100%、とにかく重い愛情に振り回されながら、 瀬戸は今日も正義と悪の狭間で右往左往。 これは、逃げたいのに逃げられない潜入捜査官と、愛が重すぎるヒーローが織りなす、甘くて騒がしいBLラブコメ。

平凡な俺が完璧なお兄様に執着されてます

クズねこ
BL
いつもは目も合わせてくれないのにある時だけ異様に甘えてくるお兄様と義理の弟の話。 『次期公爵家当主』『皇太子様の右腕』そんなふうに言われているのは俺の義理のお兄様である。 何をするにも完璧で、なんでも片手間にやってしまうそんなお兄様に執着されるお話。 BLでヤンデレものです。 第13回BL大賞に応募中です。ぜひ、応援よろしくお願いします! 週一 更新予定  ときどきプラスで更新します!

囚われた元王は逃げ出せない

スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた そうあの日までは 忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに なんで俺にこんな事を 「国王でないならもう俺のものだ」 「僕をあなたの側にずっといさせて」 「君のいない人生は生きられない」 「私の国の王妃にならないか」 いやいや、みんな何いってんの?

魔王様の執着から逃れたいっ!

クズねこ
BL
「孤独をわかってくれるのは君だけなんだ、死ぬまで一緒にいようね」 魔王様に執着されて俺の普通の生活は終わりを迎えた。いつからこの魔王城にいるかわからない。ずっと外に出させてもらってないんだよね 俺がいれば魔王様は安心して楽しく生活が送れる。俺さえ我慢すれば大丈夫なんだ‥‥‥でも、自由になりたい 魔王様に縛られず、また自由な生活がしたい。 他の人と話すだけでその人は罰を与えられ、生活も制限される。そんな生活は苦しい。心が壊れそう だから、心が壊れてしまう前に逃げ出さなくてはいけないの でも、最近思うんだよね。魔王様のことあんまり考えてなかったって。 あの頃は、魔王様から逃げ出すことしか考えてなかった。 ずっと、執着されて辛かったのは本当だけど、もう少し魔王様のこと考えられたんじゃないかな? はじめは、魔王様の愛を受け入れられず苦しんでいたユキ。自由を求めてある人の家にお世話になります。 魔王様と離れて自由を手に入れたユキは魔王様のことを思い返し、もう少し魔王様の気持ちをわかってあげればよかったかな? と言う気持ちが湧いてきます。 次に魔王様に会った時、ユキは魔王様の愛を受け入れるのでしょうか?  それとも受け入れずに他の人のところへ行ってしまうのでしょうか? 三角関係が繰り広げる執着BLストーリーをぜひ、お楽しみください。 誰と一緒になって欲しい など思ってくださりましたら、感想で待ってますっ 『面白い』『好きっ』と、思われましたら、♡やお気に入り登録をしていただけると嬉しいですっ 第一章 魔王様の執着から逃れたいっ 連載中❗️ 第二章 自由を求めてお世話になりますっ 第三章 魔王様に見つかりますっ 第四章 ハッピーエンドを目指しますっ 週一更新! 日曜日に更新しますっ!

俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜

小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」 魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で――― 義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

処理中です...