魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫

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青年期

83

23歳になった俺は、相変わらずな毎日を送っていた。

相変わらず――ネロのキス攻撃を避けつつ起床。

朝ご飯を作りテーブルに並べ三人で食べる。
ネロ、そんな近くによると食べづらいから離れてくれ。

二人の喧嘩を止めつつ、家事。

その間にネロは勉強。

ロット君は出稼ぎ。
まぁ、つまりリュカのところだな。

帰ってきたと思ったらなぜか、ステラを連れてきた。
ステラの顔を見たネロが露骨に嫌な顔をした。
やはりファーストコンタクトが良くなかったな。
ざまぁ。


え?なんでロット君が普通にいるのかって?


それは――


――5年前。
ステラに聞かれるままネロのことを伝え、今後のことを聞いた後、解散となったときのこと。
ロット君を捕まえ伝え忘れていたことを告げた。
「ロット君、今日から俺の下僕ってことで」

さらっといった俺の言葉に顔をしかめたロット君。

「それリリアにも言っていたが、なんなんだ。冗談じゃないぞ。俺はリュカ様の従者であってお前の従者ではない」

誰が従者だって?下僕だって言っただろ?

「命の恩人にそんなこと言っていいのかなぁ。君の首輪取ってあげたこと忘れたの?」

未だ、ロット君の首には痕がついて赤くなっている。
あれって、首輪が見えてない人でも痕は見えるんだろうか。

「ぐっ、いや……それに関しては本当に感謝している。それ相応の謝礼はするつもりだ」
なんで上からなんだろうな。
無性にイラっとする。

「当たり前。で、君便利な魔法が使えるじゃん?屋敷からだってすぐ来れるし。だからさぁ、ネロに魔法を教えてあげてくれない?」

「な、は?魔法だと?……あれだけ高火力の火が出せるんだ。師なんかいらないだろう」
吐き捨てるように言ったロット君は、本心で言っているように見える。
だからと言って、知らない人を入れるのはなぁ。
ん?

「いやいや、知らない人よりロット君の方が……え、何?高火力の火?俺そんなの知らないんだけど」
初耳情報にさすがに待ったをかける。

「あんたが寝てる間にそいつがリリアに火魔法を放った。それも無詠唱でだ。さすがに殺しはまずいと思って突き飛ばしたが……結果的にリリアはちょっと焦げて周りの木も燃えた。その時の顔といったら……夢に出てきそうだ」

言いながらブルリと震えたロット君は、まるで恐ろしい怪物を見るかのような目をしていた。
さっきからネロと露骨に距離を取っているのはそれか。

「待ってくんない?リリアのことは良いとして、教えてもいない高火力魔法だって?……やっぱりうちの子天才?」
料理中に披露した魔法をもう使えるようになったとは。
口元に手をやって震えていると、ロット君がドン引きした顔をしていた。

「親ばかかよ」

む、失礼な。
間違いじゃないだろ。

頬を膨らませていると、ロット君が一歩近づいてきた。
悪態をついた顔から唐突に真剣な顔に切り替わったかと思うと、俺のもとに顔を寄せてくる。

なんだ。寄るな、寄るな。

「冗談で言っているんじゃない。あの年であんな高度な魔法見たことない。それも教えてないだって?今は子供だからいいが、大人になったらお前じゃ制御できなくなるぞ。早々に手放したほうがいい」
それに、属性が全く違うものを……等々ぶつぶつ言っている。

こそこそと何を言ってくるのかと思ったらそんなこと?
知ってるよ。だって大人になったら魔王になる子だよ?

「だからこそ君にお願いしてるんだろ?そもそも、君に拒否権無いから」

「っだから、俺じゃなくてちゃんとした師をだなぁ!」

「……ネロは魔力が膨大なんだ。他の奴を連れてきてみろ。何を企むか分からない。それに、俺は……給料を払えない」
視線を逸らしながら小声で言ってみる。

「おま、お前!それだろ!俺をタダ働きさせるつもりか!」

顔を赤くしたロット君が何か叫んでいる。
うるさいなぁ。
しょうがないだろ?俺は、金が稼げないんだ。


「もう!うるさいんですよ。お二人とも!言い争ってないで手伝ってください」

と、リリアを馬車の中に押し込んでいたステラに怒られてしまった。
本当に焦げてんなぁ。
おお、リリアまで怯えた目でネロを見ている。
あの焦げたまま子爵家に帰すんだろうか。

よく無事だったね、と聞くとどうやらポーションを飲ませたらしい。
死にかけ一歩手前だったというから、やはりポーションの効き目はすごいらしい。


「うるさいって、怒られたじゃん。ほらほら、手伝ってきなよ」

「お前が言うな!」

と怒るくせに律儀に手伝いに行くのだから、憎めない性格である。

やれやれ、と腰に手をやって三人を見送る。

――
とまあ、そんなこんなでロット君に家庭教師をお願いしたわけだが……これがまぁ、相性が悪かった。

「そうじゃなくて、頭の中でイメージしてそれを出すんだ。ギュッとやってボッだ」

「うるさい、ロットの教え方が悪いんだろ?なんだよ。ギュッとやってボッて。バカかよ」

うーん、人選を間違えたかもしれない。
天才のネロでもロット君のような感覚派は、受け付けないらしい。

ロット君に対しては、ネロも割と口が悪くなる。
まるで俺とロット君のやり取りを見ているようである。
いいぞ、もっと言ってやれ。

が、そろそろ夕飯ができるのでやめていただきたい。
二人の言い争いに終止符を打つべく、夕ご飯を並べる。
今日は、鍋もどきである。
この世界、鍋の元なる便利なものが無いのでなんちゃって鍋だ。

「で、なんでステラもついてきたわけ?」
ジトっとした目でステラを見つめる。
ステラが来るときは大体ろくなことがない。

「え~っとですねぇ。多分、シルヴァ様ネロきゅ……くんを冒険者にさせるつもりですよね」

ネロの顔をチラリと見ながら、頷く。

言いにくそうに話すステラに嫌な予感をひしひしと感じる。

「そうだな。だって、ステラが言ったんだろ?旅に出させろって」

だから再三言い続けていた。
嫌がってたから15になるまで家にいるわけだけども。
まるでなかなか自立しない息子を一人暮らしさせようと奮闘する親の気持ちを味わった。

ネロ曰く、「俺がいなかったらシルヴァは体調悪くなるし、俺も死にかける」かららしい。
それはそう。そこを解決しないとネロは一人暮らしができない。
だからこそ、最近は強く言えなかったんだが。

「ですよねぇ」

「なんだよ。はっきり言えって」

「えーと、たいへん言いづらいんですが~。今年から学園に入っていただきたく……」

「「は?」」

三者三様の阿呆面がそろった瞬間だった。
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