私は人魚を殺したい

とるこいし

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ずっと一緒に

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 瑠璃ちゃんは死んだ。人気者の瑠璃ちゃんも、独りの瑠璃ちゃんも、狂った瑠璃ちゃんも好きだったけど、今の瑠璃ちゃんが一番美しいと思った。抱きしめても何の抵抗もしない姿が、まるで私の全てを受け入れてくれたみたいだった。私は、どうしても瑠璃ちゃんを取られたくなかった。包丁にはがっつり私の指紋がついているだろうし、服も血でびちゃびちゃだ。目撃者は多分いないけど、調べられたらすぐ分かってしまうだろう。私は捕まって、瑠璃ちゃんの身体は奪われて、知らない男か女がそれを切り裂いて蹂躙して、最後は燃やされて灰になるのだろうか。そう考えて寒気がした。瑠璃ちゃんを守らなくては。瑠璃ちゃんがそうしてくれたように、私も瑠璃ちゃんの全てを受け入れたい。
 うるは、人間が人魚になる方法があると言った。人魚の肉を食べること、そして海で溺れて死ぬこと。そうして生まれ直すことができるそう。手を差し出されて、私はそれを取った。未練がないわけじゃなかったけど、どうしても瑠璃ちゃんを誰にも渡したくなかった。
「ねえ、顔は全部私のだからね。一口でも取ったら殺すから」
「分かってるよお」
 瑠璃ちゃんの死体を海に引き込んで二つに裂いた。右腕、右足、心臓、胃は私、左腕、左足、肝臓、腎臓はうる、骨は折って半分にした。瑠璃ちゃんはうるのことが好きだったし、うるの肉で生まれた私たちは半身みたいなものだから、仕方ないので分けてやった。とうとう首だけになった瑠璃ちゃんが勿体なくてしばらく抱えていたけど、段々とろとろになってしまっていたので観念して食べ切ることにした。
 舌が唇に触れる。甘いさくらんぼの味がした。私のファーストキス。好きな人に捧げられたんだ。ちょっとずつちょっとずつ舐めとるようにして食べた。頭蓋骨だけになって、それも砕いて全部飲み込んだ。瑠璃ちゃんの血が私の体を巡って、瑠璃ちゃんの骨が私の体を支えて、瑠璃ちゃんの瞳が私に世界を見せる。なんて素敵なんだろう。瑠璃ちゃんは死んでも私をずっと恋させてくれるんだ。
 私はこれから人魚として海で生きていく。うるは当たり前のように私について来てせっせと巣を作ったり魚を運んできたりした。うるが私からのプレゼントだと思っていたのは全部勘違いで、私はうるのことを憎んでいて本気で殺そうと思っていたと言っても、やっぱり私のことが好きらしい。変なやつだけど、海の中で見れば中々悪くない顔をしている。喜ぶかと思ってキスしてみればきょとんとした顔をされた。人魚にキスの文化はないらしい。舌を入れたら驚いていたけど噛まれはしなかった。私に構ってもらえるのが嬉しいのか、どこを触っても大人しくキュウキュウ鳴いている。今まで愛することだけが幸せだと思っていたけど、愛されるのも悪くないと思った。

 その街には海がある。海には人魚が住んでいる。とても美しく誰もを魅了する人魚が住んでいる。人魚に愛された人間は、海に連れ去られてしまう。その鋭い爪で背中を切り裂かれ、身体の中身を魂ごと食べられてしまう。だから、人魚を見た人は決して海に近づいてはいけない。彼らは心を惑わせ狂わせる、人とは違うモノだから。
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