後宮に咲く毒花~記憶を失った薬師は見過ごせない~

二位関りをん

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第40話 お茶会②

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 朝日の顔を見上げた美雪は、口をぱくぱくするも言葉が出ていこうとしてくれない状態にある。

「まず……最近君は、白雪について調べていると他の薬師達から聞いた」

 あれだけ聞きまわっていたら朝日の耳に入るのも時間の問題と言える。しかしそれが何か影響をもたらすべきものなのだろうか? 美雪は肯定しながら考え込む。

(やっぱり、何か訳ありのお方なのか……)

 迷ったものの、黙ったまま彼らの話を聞くだけなのもどうかと考え、己が感じた白雪についてをありのままに口にする。
 その間も姜皇后や朝日から放たれる圧のようなものが、美雪の全身へ容赦なく襲い掛かってきていた。それらに屈しようとすると言葉がうまく出てこなくなる。

「それが、美雪の思う白雪の姿なのね」
「はい。配合指南覚書……とても分かりやすい書籍でございました」
「俺も彼女の仕事ぶりは素晴らしいものだと思う」
「!」

 自分の考えが当たった事と、朝日の口から白雪への評価が降りた部分が重なって、美雪の脳天に深い衝撃を与える。

「朝日さん、白雪さんの事ご存じなのですね!」
「当たり前だ! 茶番はここまでにして、彼女について話そう。まず、白雪は優秀な薬師だった」

 配合指南覚書に記されていた内容を含め、彼女はほぼ全ての薬草やその配合について記憶していたと朝日は語る。
 その記憶っぷりは暁華殿の者のみならず、皇帝の耳にも届いたほどだった。

「それに白雪は君みたいな優しい人物でな。おっとりしているのもあってか、薬師達との間で大きなもめ事を起こしたりはしなかったはずだ」
「白雪は時々兵士達や医者達から求婚されていたものねえ。女の薬師や児永達宦官からよく阻止されていたのを思い出すわ。仕事の邪魔をしてはいけないって」
(人気者だったのですね。そんなお方がどうして……)
「白雪がなぜ口に出してはいけないような人物になったのか、それを知りたいのね?」

 姜皇后からの問いへ美雪は大きく頷く。

「簡単に言うと陛下からの寵愛を得たのよ、彼女は」
「白雪さんが、陛下からご寵愛を……」
「ああ。俺も見た事があるが、それはそれは激しいものだった。きっかけは……陛下のお怪我を癒した事だったか」

 朝日の語った内容はこうだ。
 敵対勢力との戦いを視察した皇帝は、その帰り道に敵から矢を放たれた。矢は皇帝の右足太ももの外側をかすめていったと言う。
 命にかかわる怪我ではなかったものの、出血はひどかった。そこへ姜皇后と共に皇帝の帰りを出迎えた白雪が痛み止めや止血に使う薬を惜しみなく与え、献身的に治療を行ったそう。

「あの時、私は体調を崩していたの。だから白雪が熱心に陛下を看病していたわ」
「そうだったのでございますか……」
「白雪はそうなんだ。君と同じ、いやそれ以上に何か事件が起これば放っておけない性格だったんだ」
「そして、治療を機に仲が深まっていったと……」

 才人の位で後宮入りする。そこまで決定していたと朝日から聞かされる。

「後は正式に妃となり、閨入り……そこまでたどり着いていた。だが、もちろんこの話をよく思わなかった者達はいる」
(嫉妬に駆られた妃や……ひょっとして薬師の者達?)

 己の考えを考えがまとまりづらいままに言葉にすると、朝日はそうだ。と返事した。

「しかしながら結局この話は実現しなかったんだ。だからこの話はこれでおしまいになる」
「え……?」
「美雪、白雪は、いえ、あなたのお姉さんはね……殺されたの」

 
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