18 / 79
第18話 両親が作っていた桃
しおりを挟む
「見た目と色合い……間違いない、お父さんとお母さんが作っていた桃のような気がする……! だけど仙桃? そんな桃だったっけ……?」
桃玉は感覚を研ぎ澄まさせ、当時食べた桃の味わいを思い出す。
(でも、これまで食べてきた桃とは特に変わった点は無かったような……そりゃあ両親が栽培した桃が一番美味しいのはそうだけど)
桃玉は更に本を読み進める。
「仙桃……それは仙女にしか栽培できない幻の桃……」
仙女にしか栽培できない。という文言に桃玉はぴたりと目を留めた。
(仙女……お母さんが仙女? あ、もしかして……)
桃玉の脳裏に浮かんだのは、幼い頃にけがで出血した桃玉の手を握り、傷を癒す母親の姿だった。
(もしかして、私の母親は……? いや、まさかな……そういう手品かもしれないし)
「桃玉様!」
「はい!」
「佳淑妃様がお越しになりました……!」
「えっ?!」
佳淑妃の突然の訪問に、桃玉は慌てながら読んでいた本をぱっと閉じて棚へと戻した。それと同時に佳淑妃が女官達を伴って現れる。
「桃玉。いきなりたずねてきてすまないな」
「あっいえ! こちらこそ歓迎のご準備できてなくてもっ申し訳ないです……!」
「まあいい、座れ。焦りは何も生みださない」
「は、はい……ではお言葉に甘えて」
女官達がささっとお茶とお菓子を用意し、佳淑妃と桃玉へ手渡してくれた。お茶の入った茶器は陶磁器で美しい花柄の文様が描かれている。佳淑妃は赤い瞳をきらきらと輝かせながら興味深そうに茶器を覗き込んだ。
「ふむ、美しい茶器だな……素晴らしい」
佳淑妃からの言葉に、桃玉付きの女官が礼を返した。
「ふふ、結構。話に入ろう。桃玉はこの後宮の暮らしには慣れてきたか?」
「はい。おかげさまで……」
「そうか。それなら良い。夜伽はどうだったか?」
(どうだったか……でも作戦会議の事を伝える訳にもいかないし)
「何もありませんでした」
桃玉の言葉に、佳淑妃は目を閉じ咀嚼するようにして首を振った。
「やはり、か……」
「?」
「皇帝陛下はな、これまで一度も夜伽で妃を抱いた事が無いのだ。だからお世継ぎどころか子供もいない」
「……え?」
佳淑妃からの話に桃玉は目を丸くさせた。
「まあ、皇帝陛下は即位したばかりでいらっしゃる。まだ好みの妃がいないだけだろう。いずれこの問題も解消されると私は信じているよ」
「……佳淑妃様は夜伽には……」
「何度かあるが、何もなかった。他愛のない話を交わし、手を握ったくらいだったかな」
佳淑妃は茶器を机の上に置き、自身の右手を愛おしそうに眺める。
「私は皇帝陛下にこの身を捧げ忠義を尽くすだけだ……だが、皇太后陛下は一刻も早く世継ぎを、と望んでおいでだからな……」
(龍環様と皇太后陛下には……深い溝がありそうだな)
「ああ、そうだ。妹と話をせねばならない。すまないが私はこれにて」
話を終えた佳淑妃は、困ったらいつでも私を頼るが良い。と言い残し、自身の住まいへと去っていった。
桃玉は感覚を研ぎ澄まさせ、当時食べた桃の味わいを思い出す。
(でも、これまで食べてきた桃とは特に変わった点は無かったような……そりゃあ両親が栽培した桃が一番美味しいのはそうだけど)
桃玉は更に本を読み進める。
「仙桃……それは仙女にしか栽培できない幻の桃……」
仙女にしか栽培できない。という文言に桃玉はぴたりと目を留めた。
(仙女……お母さんが仙女? あ、もしかして……)
桃玉の脳裏に浮かんだのは、幼い頃にけがで出血した桃玉の手を握り、傷を癒す母親の姿だった。
(もしかして、私の母親は……? いや、まさかな……そういう手品かもしれないし)
「桃玉様!」
「はい!」
「佳淑妃様がお越しになりました……!」
「えっ?!」
佳淑妃の突然の訪問に、桃玉は慌てながら読んでいた本をぱっと閉じて棚へと戻した。それと同時に佳淑妃が女官達を伴って現れる。
「桃玉。いきなりたずねてきてすまないな」
「あっいえ! こちらこそ歓迎のご準備できてなくてもっ申し訳ないです……!」
「まあいい、座れ。焦りは何も生みださない」
「は、はい……ではお言葉に甘えて」
女官達がささっとお茶とお菓子を用意し、佳淑妃と桃玉へ手渡してくれた。お茶の入った茶器は陶磁器で美しい花柄の文様が描かれている。佳淑妃は赤い瞳をきらきらと輝かせながら興味深そうに茶器を覗き込んだ。
「ふむ、美しい茶器だな……素晴らしい」
佳淑妃からの言葉に、桃玉付きの女官が礼を返した。
「ふふ、結構。話に入ろう。桃玉はこの後宮の暮らしには慣れてきたか?」
「はい。おかげさまで……」
「そうか。それなら良い。夜伽はどうだったか?」
(どうだったか……でも作戦会議の事を伝える訳にもいかないし)
「何もありませんでした」
桃玉の言葉に、佳淑妃は目を閉じ咀嚼するようにして首を振った。
「やはり、か……」
「?」
「皇帝陛下はな、これまで一度も夜伽で妃を抱いた事が無いのだ。だからお世継ぎどころか子供もいない」
「……え?」
佳淑妃からの話に桃玉は目を丸くさせた。
「まあ、皇帝陛下は即位したばかりでいらっしゃる。まだ好みの妃がいないだけだろう。いずれこの問題も解消されると私は信じているよ」
「……佳淑妃様は夜伽には……」
「何度かあるが、何もなかった。他愛のない話を交わし、手を握ったくらいだったかな」
佳淑妃は茶器を机の上に置き、自身の右手を愛おしそうに眺める。
「私は皇帝陛下にこの身を捧げ忠義を尽くすだけだ……だが、皇太后陛下は一刻も早く世継ぎを、と望んでおいでだからな……」
(龍環様と皇太后陛下には……深い溝がありそうだな)
「ああ、そうだ。妹と話をせねばならない。すまないが私はこれにて」
話を終えた佳淑妃は、困ったらいつでも私を頼るが良い。と言い残し、自身の住まいへと去っていった。
2
あなたにおすすめの小説
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~
水無月礼人
恋愛
私は冒険者ギルド職員ロックウィーナ。25歳の女で担当は回収役。冒険者の落し物、遺品、時には冒険者自体をも背負います!
素敵な恋愛に憧れているのに培われるのは筋肉だけ。
しかし無駄に顔が良い先輩と出動した先で、行き倒れた美形剣士を背負ってから私の人生は一変。初のモテ期が到来です!!
……とか思ってウハウハしていたら何やら不穏な空気。ええ!?
私の選択次第で世界がループして崩壊の危機!? そんな結末は認めない!!!!
※【エブリスタ】でも公開しています。
【エブリスタ小説大賞2023 講談社 女性コミック9誌合同マンガ原作賞】で優秀作品に選ばれました。
紅玉楽師は後宮の音を聞く 〜生き残りたい私の脱走計画〜
高里まつり
キャラ文芸
【耳のいい隠れ長公主】✕【したたかな美貌の文官】コンビが挑む後宮の陰謀!
片目が紅い娘・曄琳(イェリン)は訳あって後宮から逃走した妃の娘ーー先帝の血を引く、隠れ長公主。
貧民街で隠れて生活していたのに、ひょんなことから宮廷に舞い戻ってしまった曄琳は、生まれを秘匿し、楽師としてあらゆる音を聞き分けるという特技を活かしながら、宮廷からの脱走を目論んでいた。
しかしある日、後宮で起きた幽鬼騒動の解決に駆り出された先で、運命を狂わされてしまう。
利用できるものは利用します精神の美形の文官・暁明(シャオメイ)と、出生の秘密をなんとか隠して外に出たい曄琳。
二人が後宮での事件を追う中で、母や貴妃の死、過去の出来事が少しずつ絡んで、宮廷の陰謀に巻き込まれていく。契約じみた曄琳と暁明の関係も少しずつ、少しずつ、形を変えていきーー?
曄琳の運命やいかに!
白苑後宮の薬膳女官
絹乃
キャラ文芸
白苑(はくえん)後宮には、先代の薬膳女官が侍女に毒を盛ったという疑惑が今も残っていた。先代は瑞雪(ルイシュエ)の叔母である。叔母の濡れ衣を晴らすため、瑞雪は偽名を使い新たな薬膳女官として働いていた。
ある日、幼帝は瑞雪に勅命を下した。「病弱な皇后候補の少女を薬膳で救え」と。瑞雪の相棒となるのは、幼帝の護衛である寡黙な武官、星宇(シンユィ)。だが、元気を取り戻しはじめた少女が毒に倒れる。再び薬膳女官への疑いが向けられる中、瑞雪は星宇の揺るぎない信頼を支えに、後宮に渦巻く陰謀へ踏み込んでいく。
薬膳と毒が導く真相、叔母にかけられた冤罪の影。
静かに心を近づける薬膳女官と武官が紡ぐ、後宮ミステリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる