8 / 161
第7話 水鏡
という、昨夜の反省は杞憂に終わった。鳥の鳴き声で目が覚めて、リビングに立ち寄ると丁度リークが朝食を準備している場面に出くわしたのだが、彼はいつも通りにおはよう。と声をかけてくれた。
「おはよう、リーク」
「もう朝食食べるか?」
「ええ、そうね。……何か手伝える事はある?」
「いや、もうあらかた終わった所だ」
机に置かれた白いお皿の上には、食パンにベーコンと目玉焼きがのっていた。目玉焼きはつやつやと良い色をしている。
「あら、美味しそう」
「早く食べよう」
「じゃあ、頂きます」
と言った所で、手元にフォークとナイフが無い事を知る。そんな私を置いてリークはむしゃむしゃとパンにかぶりついている。
「あ、どうやって食べれば……」
「パンを手で掴んでかぶりつけばよい」
「え?!」
仕方ないので、リークの言う通りにパンを両手で持って勢いよくかぶりついた。
「っ……美味しい」
ベーコンの塩気と、半熟気味の目玉焼きの濃厚な甘味が混ざり合って、丁度良い。外はさくさくで中は柔らかいパンにも合ってとても美味しい代物だ。
「美味しいか」
「ええ、とても美味しいわ」
「そうか。どんどん食べろ」
リークは耳を動かしながら柔らかな微笑みを浮かべて、私の方を見ると、またパンをむしゃむしゃとかぶりついていくのだった。改めて見直しても彼の食べ方は結構豪快であるように見える。
準備と支度が終わると、いよいよ出発の時間となる。荷物を持って、リークの後をついていくようにして家を出た。
「ここからしばらく真っすぐ歩くと、水鏡がある。まずはそこまで移動しよう」
「分かったわ」
獣道を歩く。時々草木を手で払いのけながら、日があまり差し込まないうっそうとした森の中を行くと、いきなり目の前に井戸のようなものが現れた。
「これが水鏡だ」
「これが?」
「さあいくぞ」
リークはわたしの手をぐいっと掴むと、水鏡の手前にある階段を駆け上がって、ドボンと一気に落ちた。
「!!」
溺れているのかよく分からないうちに、私の足は地上を掴んでいた。
「ついたぞ」
「え……え?!」
眼下に広がっていたのは、自分がちっぽけになるくらいの広大な繁華街である。
「おはよう、リーク」
「もう朝食食べるか?」
「ええ、そうね。……何か手伝える事はある?」
「いや、もうあらかた終わった所だ」
机に置かれた白いお皿の上には、食パンにベーコンと目玉焼きがのっていた。目玉焼きはつやつやと良い色をしている。
「あら、美味しそう」
「早く食べよう」
「じゃあ、頂きます」
と言った所で、手元にフォークとナイフが無い事を知る。そんな私を置いてリークはむしゃむしゃとパンにかぶりついている。
「あ、どうやって食べれば……」
「パンを手で掴んでかぶりつけばよい」
「え?!」
仕方ないので、リークの言う通りにパンを両手で持って勢いよくかぶりついた。
「っ……美味しい」
ベーコンの塩気と、半熟気味の目玉焼きの濃厚な甘味が混ざり合って、丁度良い。外はさくさくで中は柔らかいパンにも合ってとても美味しい代物だ。
「美味しいか」
「ええ、とても美味しいわ」
「そうか。どんどん食べろ」
リークは耳を動かしながら柔らかな微笑みを浮かべて、私の方を見ると、またパンをむしゃむしゃとかぶりついていくのだった。改めて見直しても彼の食べ方は結構豪快であるように見える。
準備と支度が終わると、いよいよ出発の時間となる。荷物を持って、リークの後をついていくようにして家を出た。
「ここからしばらく真っすぐ歩くと、水鏡がある。まずはそこまで移動しよう」
「分かったわ」
獣道を歩く。時々草木を手で払いのけながら、日があまり差し込まないうっそうとした森の中を行くと、いきなり目の前に井戸のようなものが現れた。
「これが水鏡だ」
「これが?」
「さあいくぞ」
リークはわたしの手をぐいっと掴むと、水鏡の手前にある階段を駆け上がって、ドボンと一気に落ちた。
「!!」
溺れているのかよく分からないうちに、私の足は地上を掴んでいた。
「ついたぞ」
「え……え?!」
眼下に広がっていたのは、自分がちっぽけになるくらいの広大な繁華街である。
あなたにおすすめの小説
異世界に逃げたシングルマザー経理は、定時退勤だけは譲れない
木風
恋愛
DV夫から一歳の娘を抱えて逃げた鈴木優子は、光に飲まれて異世界の王宮へ転移してしまう。
生きるために差し出した武器は簿記と経理経験――崩壊寸前の王宮会計を『複式簿記』で立て直すことに。
ただし譲れない条件はひとつ、「午後五時の定時退勤」。娘の迎えが最優先だからだ。
その姿勢に、なぜか若き国王ヴィクトルが毎日経理室へ通い始めて――仕事と子育ての先に、家族の形が芽吹いていく。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ】悪妃は余暇を楽しむ
ごろごろみかん。
恋愛
「こちら、離縁届です。私と、離縁してくださいませ、陛下」
ある日、悪妃と名高いクレメンティーナが夫に渡したのは、離縁届だった。彼女はにっこりと笑って言う。
「先日、あなた方の真実の愛を拝見させていただきまして……有難いことに目が覚めましたわ。ですので、王妃、やめさせていただこうかと」
何せ、あれだけ見せつけてくれたのである。ショックついでに前世の記憶を取り戻して、千年の恋も瞬間冷凍された。
都合のいい女は本日で卒業。
今後は、余暇を楽しむとしましょう。
吹っ切れた悪妃は身辺整理を終えると早々に城を出て行ってしまった。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
姉の方を所望していたと言った婚約者に、突然連れ帰られて気づいたら溺愛されています
もちもちほっぺ
恋愛
侯爵家の地下室に住み、姉の食べかけで飢えをしのぎ、婚約者には初対面で「老婆のようだ、姉の方がよかった」と言われた令嬢リリアーナ。
ある日その婚約者に問答無用で公爵邸に連れ帰られた。
庭の恵みを口にするたびに肌が輝き、髪が艶めき、体に力が満ちていく。首に巻いたお守りの秘密、十数年続く国の不作の真実、虐げられ続けた令嬢の出生の謎。
全てが明かされる時、地下室令嬢の逆転劇が始まる。
なお婚約者は今日も庭でグルメリポートを最後まで聞いている。
秘密の多い令嬢は幸せになりたい
完菜
恋愛
前髪で瞳を隠して暮らす少女は、子爵家の長女でキャスティナ・クラーク・エジャートンと言う。少女の実の母は、7歳の時に亡くなり、父親が再婚すると生活が一変する。義母に存在を否定され貴族令嬢としての生活をさせてもらえない。そんなある日、ある夜会で素敵な出逢いを果たす。そこで出会った侯爵家の子息に、新しい生活を与えられる。新しい生活で出会った人々に導かれながら、努力と前向きな性格で、自分の居場所を作り上げて行く。そして、少女には秘密がある。幻の魔法と呼ばれる、癒し系魔法が使えるのだ。その魔法を使ってしまう事で、国を揺るがす事件に巻き込まれて行く。
完結が確定しています。全105話。
ギルドの受付嬢はうごかない ~定時に帰りたいので、一歩も動かず事件を解きます~
ぱすた屋さん
ファンタジー
ギルドの受付嬢アイラは、冒険者たちから「鉄の女」と呼ばれ、畏怖されている。
絶世の美貌を持ちながら、常に無表情。そして何より、彼女は窓口から一歩も動かない。
彼女の前世は、某大手企業のコールセンター勤務。
営業成績トップを走り抜け、最後には「地獄のクレーム処理専門部署」で数多の暴言を鎮めてきた、対話術の怪物。
「次の方、どうぞ。……ご相談ですか?(クローズド・クエスチョン)」
転生した彼女に備わったのは、声の「真偽」が色で見える地味な能力。
だが、彼女の真の武器は能力ではなく、前世で培った「声のトーン操作」と「心理誘導」だった。
ある日、窓口に現れたのは「相棒が死んだ」と弔慰金をせしめようとする嘘つきな冒険者。
周囲が同情し、ギルドマスターさえ騙されかける中、アイラは座ったまま、静かにペンを走らせる。
「……五秒だけ、沈黙を差し上げます。その間に、嘘を塗り直すおつもりですか?」
戦略的沈黙、オウム返し、そして逃げ場を塞ぐイエス・セット。
現代のコールセンター術を叩きつけられた犯人は、自らその罪を吐き散らし、崩れ落ちる。
「あー、疲れた。一五分も残業しちゃった。……マスター、残業代三倍でお願いしますね」
これは、一歩も動きたくない受付嬢が、口先だけで悪を断罪し、定時退勤を目指す物語。