あやかしとシャチとお嬢様の美味しいご飯日和

二位関りをん

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第53話 野菜とブリのすき焼き①

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 12月。月館島に冬が訪れた。紅葉は終わり、海風は凍てつく程に冷たくなった。そんな海風が当たる別荘は、常にひんやりとしている。
 蛇口から出てくる水は、痛い程に冷たい。

「羽織出さないと……」

 朝食を食べ終えて2階の自室へ戻っていた私は、自室の箪笥から冬用の紫色の羽織(どてら)を取り出して羽織る。
 この羽織は分厚くて柔らかいので気に入っている品だ。

「こないだ洗濯しといて良かった……」

 今日はいつも以上に冷えがきつい。秋から冬への移行で起こる温度差には、身体がついていくのがやっとだ。
 そのせいか、最近体調がいまいち良くない気がする。とは言っても完全に体調が悪いという訳でもなく、かといって好調でもないといった具合か。

「寒いなあ……」

 2階のこの部屋にも火鉢を用意すべきか、迷う。だが何かあっても怖い所だ。

(火事になっても怖いしなあ)

 部屋の窓から見える海は相変わらず綺麗だ。海もそこまで荒れてはいない。

「1階に降りようか」

 食卓の居間の隣の部屋では、母親が何か繕いものをしていた。服に空いた穴でも塞いでいるのだろう。
 だが、途中で針から糸が抜け、針の穴に糸を通すのに四苦八苦し始める

「お母さん、やろうか?」
「お願いできる? もう、老眼かしら……」

 私は針の穴に糸を通し、母親にそれらを返したのだった。

「ありがと。助かったわ」
「いえいえ」

 沼霧さんは……外出中だろうか。すると、玄関から沼霧さんが戻ってきた。しかもブリを1匹抱えている。

「沼霧さんどこ行ってたの?」
「光さんから貰ってきました。今日のお昼と夕食に使いますね」

 光さんがブリを取ってきて、沼霧さんにあの桟橋で渡したそうだ。
 それにしても光さんは魚を取るのが上手だ。少し歯型がついてはいるが、それ以外は綺麗だ。

「お昼はブリと野菜ですき焼きにしましょうかね。夕食は煮付けにしましょう」
「いいね、温かいものが食べたかったんだよねえ」

 こんな寒い日には鍋物が良い。身体の芯まで温かくなるからだ。それに野菜といった具材がするする胃の中に入る。
 母親にも今日の献立を報告すると、了承の返事が返って来た。

「では、準備していきますね」

 沼霧さんは台所の戸棚から、すき焼き用の黒い鍋を取り出す。
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