とある伯爵と不遇な男爵夫人の計画~虐げられるだけの結婚生活は捨てます~

二位関りをん

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第3話 マーチャド・リューゼスト伯爵

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「そちらになります……」

 あれから時間が経ち。今、私はこじんまりとした面談室でリューゼスト伯爵に例の書類を渡している。
 リューゼスト伯爵は金髪を束ね、白とグレーを基調とした衣服に身を包んでいた。私が言うのもなんだけど、どこか神秘的というか、ミステリアスな雰囲気だ。

 彼とは何度か話した事はあるけど、とりわけそこまで仲が良いって訳でもない。

「ありがとうございます。おや、ユーティアさん顔色が浮かばないようですが?」

 リューゼスト伯爵の指摘になんて返せば良いのか躊躇っていると、彼はくすりと苦笑いを浮かべる。

「ご家族の事、でしょうね」
「な……」

 なんで知っているの!? それにまずい、外で誰か聞いているかもしれないのに……!

「な、何でご存知なのですか……」

 蚊の羽音のような小さい声で返すと、リューゼスト伯爵は腕組みをする。

「取引相手の事を調べるのは当たり前の事ですから」

 ぐ、ぐうの音も出ない……。

「あなたはこのままで良いと思っていますか?」
「このまま……でも」

 そりゃあ当然こんな環境からは逃げ出したいと思っているけど……。

「あなたはこの環境からは抜け出せない。そうお考えで?」

 困った。リューゼスト伯爵は何もかもお見通しのようだ。彼には隠し事は出来そうにない。

「はい……」
「では、力をお貸ししましょう。あなたに「良いお仕事」を紹介します」

 リューゼスト伯爵が笑顔を浮かべながら高級なソファから立ち上がり、私に両手を差し出す。多分握手って事ね。
 お仕事……何かしら。私の胸の中がなんだか弾んでいるような感覚を覚えている。
 
「……とりあえず話が聞きたいです。決めるのはそれからにします。よろしくお願いします」

 まずは話を聞いてからにしよう。彼の冷たい手をぎゅっと外側から包み込むようにして握った。
 ああ、藁にもすがりたいって気持ちはこういう事を言うのね。
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