82 / 88
第73話 花嫁は奪った※
しおりを挟む
会場が次第にざわつき始める。花嫁が来ない事に焦りや不安、不穏と言った負の感情が教会内に充満していく。
「エミリア嬢が現れない?」
「何かあったのか?」
「なんだなんだ?」
すると、閉じられていた教会の扉がばんっと勢いよく開かれた。振り向くとそこにはアダン様と見知らぬ男性に純白でふんわりしたシルエットのウエディングドレスを着用したエミリアの3人が立っていた。
「お、王太子殿下!」
「エミリア嬢もいるぞ! それにあの方はクルワット子爵ではないか?」
「王太子殿下とクルワット子爵?」
アダン様の右隣にいる茶髪のやや華奢な体格をした中性的な美青年がクルワット子爵。もしかして、エミリアと婚約をしていたが破棄された相手だろうか?
エミリアは震えながらも、両脇を男性陣が守るように立ってくれているので、目線はしっかりこの教会内に向けられている。
「皆さん。この王太子の話を聞いてくれるかな?」
そうアダン様が大きな声で叫ぶと、招待客のほとんどがはいと答えた。勿論私達もはい。と返事をする。
「では話そう。この結婚は無効である! 婚姻届のサインとこの紙を見てくれ。明らかに筆跡が違う! エミリア嬢曰くこれは父親が勝手に書いたものらしい!」
そう高らかに語るアダン様の話を受け、教会内は更にざわめきが高まる。そのざわめきをジョージは慌てながら見ていた。エミリアの両親は唇を苦々しく噛んでいる。
「偽造って事か?」
「そうよね……?」
「それなら罪に当たるんじゃ」
「それにエミリア嬢はこのクルワット子爵と当初婚約していたが、破棄された! そしてヨージス家へと嫁がされる事となったのだ! 諸君、この事に対してどう思うかい?」
「王太子殿下! これは不当な結婚です!」
私が無意識に立ち上がってそう叫ぶ。すると、その叫びが他の招待客にも次々に伝染し、同じように次々と口走っていく。
「これは不当な結婚式ですわ!」
「エミリア嬢とクルワット子爵がかわいそうです!」
「この結婚は認められません!」
「ふむふむ、そう言ってくれると思ったよ。俺は父上である国王陛下の名代としてこの場へとやってきた。そしてこれが国王陛下より賜った、この結婚は不当である事を示すものだ」
アダン様が掲げる紙は国王陛下の命令書。勿論国王陛下の直筆のサインがばっちりと記されている。招待客の視線が一斉にその命令書にくぎ付けになった。
「なっ……」
エミリアの両親はうつむきもはや何も言えないでいた。アダン様の後ろから駆けつけてきた憲兵によって取り押さえられていずこかへと連行されていった。おそらく今から宮廷で尋問を受けるのだろう。
ジョージと両親も気が付けばその場から消え去っていた。もしや逃げたのか。
「という訳でみんな。帰っていいよ」
アダン様のこのお言葉で、招待客は続々と席から立ち上がり帰宅の途に就き始める。これ以上教会にいても何にもならない。結婚式はこれでお開きと言った顔で帰っていく。
「私達も帰りましょう」
そうハイダが告げた時。いきなり爆発音が聞こえ、更に視界が白く不明瞭になった。これは煙幕か。
「!」
誰かに私の口元を口を押さえられた所で、私の記憶はそこで途絶えてしまう。次に目を覚ました時、私の視界には黄色い見知らぬ天井が飛び込んでくる。
「ここは……」
「気がついたか?」
「なっ、ジョージ!」
「薬師なら様をつけて呼ぶんだな。ジャスミン」
ジョージの生意気な声が、部屋中に派手にこだまする。私はベッドから起き上がると、私の右横にジョージがいやらしい笑みを浮かべながら立っていた。それに私の両手は赤いシルクの布で頑丈に縛られている。
「なんであなたがここに……」
「君をさらった。エミリアとの結婚が白紙になるなら、もう君と結婚する。そう決めたんだ」
「お断りします」
「もう何度君がそう言おうが、それは無理だ。ああ、やはり最初からジャスミンと結婚すればこんな事にはならなあかったんだ。ああ、ジュナと結婚したのは失敗だった……」
なぜこの男は私にここまで固執しているのだろうか。優柔不断なのかそれとも単にバカなのか。どちらもあり得そうだが。
「なんで私なの? 他にも令嬢は山ほどいるじゃない」
「やっぱりジャスミンじゃないと、ダメなんだよ……」
そう陰気に笑うジョージがゆっくりと近づき、私を押し倒した。ここで私を強引に犯そうとしているのは明白である。だが、両手を縛られている事と妊娠しているというのもあってどう抵抗すべきか思いつかない。
(私、どうしたら!)
その間にもジョージは私の身体に覆いかぶさり、乱暴に乳房を揉みながら服から露出させ、更に乳首を吸い上げるようにして舐めていく。
「っ……!」
上半身への愛撫をしつつ、彼は私の下着を脱がし、更にそこへ指を入れようとしてきた時だった。バタバタと靴音が響き渡り、部屋の扉がばっと開かれた。そこには兵と剣を携えたアダン様がいる。
「あ、アダン様!」
「ヨージス家の令息が女性を無理やり抱くなんて見苦しいね」
そうジョージに言い放つアダン様の目は鋭くジョージへと向けられている。更に誰が見ても分かるくらいの殺気がほとばしっている。
「エミリア嬢が現れない?」
「何かあったのか?」
「なんだなんだ?」
すると、閉じられていた教会の扉がばんっと勢いよく開かれた。振り向くとそこにはアダン様と見知らぬ男性に純白でふんわりしたシルエットのウエディングドレスを着用したエミリアの3人が立っていた。
「お、王太子殿下!」
「エミリア嬢もいるぞ! それにあの方はクルワット子爵ではないか?」
「王太子殿下とクルワット子爵?」
アダン様の右隣にいる茶髪のやや華奢な体格をした中性的な美青年がクルワット子爵。もしかして、エミリアと婚約をしていたが破棄された相手だろうか?
エミリアは震えながらも、両脇を男性陣が守るように立ってくれているので、目線はしっかりこの教会内に向けられている。
「皆さん。この王太子の話を聞いてくれるかな?」
そうアダン様が大きな声で叫ぶと、招待客のほとんどがはいと答えた。勿論私達もはい。と返事をする。
「では話そう。この結婚は無効である! 婚姻届のサインとこの紙を見てくれ。明らかに筆跡が違う! エミリア嬢曰くこれは父親が勝手に書いたものらしい!」
そう高らかに語るアダン様の話を受け、教会内は更にざわめきが高まる。そのざわめきをジョージは慌てながら見ていた。エミリアの両親は唇を苦々しく噛んでいる。
「偽造って事か?」
「そうよね……?」
「それなら罪に当たるんじゃ」
「それにエミリア嬢はこのクルワット子爵と当初婚約していたが、破棄された! そしてヨージス家へと嫁がされる事となったのだ! 諸君、この事に対してどう思うかい?」
「王太子殿下! これは不当な結婚です!」
私が無意識に立ち上がってそう叫ぶ。すると、その叫びが他の招待客にも次々に伝染し、同じように次々と口走っていく。
「これは不当な結婚式ですわ!」
「エミリア嬢とクルワット子爵がかわいそうです!」
「この結婚は認められません!」
「ふむふむ、そう言ってくれると思ったよ。俺は父上である国王陛下の名代としてこの場へとやってきた。そしてこれが国王陛下より賜った、この結婚は不当である事を示すものだ」
アダン様が掲げる紙は国王陛下の命令書。勿論国王陛下の直筆のサインがばっちりと記されている。招待客の視線が一斉にその命令書にくぎ付けになった。
「なっ……」
エミリアの両親はうつむきもはや何も言えないでいた。アダン様の後ろから駆けつけてきた憲兵によって取り押さえられていずこかへと連行されていった。おそらく今から宮廷で尋問を受けるのだろう。
ジョージと両親も気が付けばその場から消え去っていた。もしや逃げたのか。
「という訳でみんな。帰っていいよ」
アダン様のこのお言葉で、招待客は続々と席から立ち上がり帰宅の途に就き始める。これ以上教会にいても何にもならない。結婚式はこれでお開きと言った顔で帰っていく。
「私達も帰りましょう」
そうハイダが告げた時。いきなり爆発音が聞こえ、更に視界が白く不明瞭になった。これは煙幕か。
「!」
誰かに私の口元を口を押さえられた所で、私の記憶はそこで途絶えてしまう。次に目を覚ました時、私の視界には黄色い見知らぬ天井が飛び込んでくる。
「ここは……」
「気がついたか?」
「なっ、ジョージ!」
「薬師なら様をつけて呼ぶんだな。ジャスミン」
ジョージの生意気な声が、部屋中に派手にこだまする。私はベッドから起き上がると、私の右横にジョージがいやらしい笑みを浮かべながら立っていた。それに私の両手は赤いシルクの布で頑丈に縛られている。
「なんであなたがここに……」
「君をさらった。エミリアとの結婚が白紙になるなら、もう君と結婚する。そう決めたんだ」
「お断りします」
「もう何度君がそう言おうが、それは無理だ。ああ、やはり最初からジャスミンと結婚すればこんな事にはならなあかったんだ。ああ、ジュナと結婚したのは失敗だった……」
なぜこの男は私にここまで固執しているのだろうか。優柔不断なのかそれとも単にバカなのか。どちらもあり得そうだが。
「なんで私なの? 他にも令嬢は山ほどいるじゃない」
「やっぱりジャスミンじゃないと、ダメなんだよ……」
そう陰気に笑うジョージがゆっくりと近づき、私を押し倒した。ここで私を強引に犯そうとしているのは明白である。だが、両手を縛られている事と妊娠しているというのもあってどう抵抗すべきか思いつかない。
(私、どうしたら!)
その間にもジョージは私の身体に覆いかぶさり、乱暴に乳房を揉みながら服から露出させ、更に乳首を吸い上げるようにして舐めていく。
「っ……!」
上半身への愛撫をしつつ、彼は私の下着を脱がし、更にそこへ指を入れようとしてきた時だった。バタバタと靴音が響き渡り、部屋の扉がばっと開かれた。そこには兵と剣を携えたアダン様がいる。
「あ、アダン様!」
「ヨージス家の令息が女性を無理やり抱くなんて見苦しいね」
そうジョージに言い放つアダン様の目は鋭くジョージへと向けられている。更に誰が見ても分かるくらいの殺気がほとばしっている。
22
あなたにおすすめの小説
余命一ヶ月の公爵令嬢ですが、独占欲が強すぎる天才魔術師が離してくれません!?
姫 沙羅(き さら)
恋愛
旧題:呪いをかけられて婚約解消された令嬢は、運命の相手から重い愛を注がれる
ある日、婚約者である王太子名義で贈られてきた首飾りをつけた公爵令嬢のアリーチェは、突然意識を失ってしまう。
実はその首飾りにつけられていた宝石は古代魔道具で、謎の呪いにかかってしまったアリーチェは、それを理由に王太子から婚約解消されてしまう。
王太子はアリーチェに贈り物などしていないと主張しているものの、アリーチェは偶然、王太子に他に恋人がいることを知る。
古代魔道具の呪いは、王家お抱えの高位魔術師でも解くことができない。
そこでアリーチェは、古代魔道具研究の第一人者で“天才”と名高いクロムに会いに行くことにするが……?(他サイト様にも掲載中です。)
だったら私が貰います! 婚約破棄からはじまる溺愛婚(希望)
春瀬湖子
恋愛
【2025.2.13書籍刊行になりました!ありがとうございます】
「婚約破棄の宣言がされるのなんて待ってられないわ!」
シエラ・ビスターは第一王子であり王太子であるアレクシス・ルーカンの婚約者候補筆頭なのだが、アレクシス殿下は男爵令嬢にコロッと落とされているようでエスコートすらされない日々。
しかもその男爵令嬢にも婚約者がいて⋯
我慢の限界だったシエラは父である公爵の許可が出たのをキッカケに、夜会で高らかに宣言した。
「婚約破棄してください!!」
いらないのなら私が貰うわ、と勢いのまま男爵令嬢の婚約者だったバルフにプロポーズしたシエラと、訳がわからないまま拐われるように結婚したバルフは⋯?
婚約破棄されたばかりの子爵令息×欲しいものは手に入れるタイプの公爵令嬢のラブコメです。
《2022.9.6追記》
二人の初夜の後を番外編として更新致しました!
念願の初夜を迎えた二人はー⋯?
《2022.9.24追記》
バルフ視点を更新しました!
前半でその時バルフは何を考えて⋯?のお話を。
また、後半は続編のその後のお話を更新しております。
《2023.1.1》
2人のその後の連載を始めるべくキャラ紹介を追加しました(キャサリン主人公のスピンオフが別タイトルである為)
こちらもどうぞよろしくお願いいたします。
勘違い妻は騎士隊長に愛される。
更紗
恋愛
政略結婚後、退屈な毎日を送っていたレオノーラの前に現れた、旦那様の元カノ。
ああ なるほど、身分違いの恋で引き裂かれたから別れてくれと。よっしゃそんなら離婚して人生軌道修正いたしましょう!とばかりに勢い込んで旦那様に離縁を勧めてみたところ――
あれ?何か怒ってる?
私が一体何をした…っ!?なお話。
有り難い事に書籍化の運びとなりました。これもひとえに読んで下さった方々のお蔭です。本当に有難うございます。
※本編完結後、脇役キャラの外伝を連載しています。本編自体は終わっているので、その都度完結表示になっております。ご了承下さい。
肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです
沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!
泡風呂を楽しんでいただけなのに、空中から落ちてきた異世界騎士が「離れられないし目も瞑りたくない」とガン見してきた時の私の対応。
待鳥園子
恋愛
半年に一度仕事を頑張ったご褒美に一人で高級ラグジョアリーホテルの泡風呂を楽しんでたら、いきなり異世界騎士が落ちてきてあれこれ言い訳しつつ泡に隠れた体をジロジロ見てくる話。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
燻らせた想いは口付けで蕩かして~睦言は蜜毒のように甘く~
二階堂まや♡電書「騎士団長との~」発売中
恋愛
北西の国オルデランタの王妃アリーズは、国王ローデンヴェイクに愛されたいがために、本心を隠して日々を過ごしていた。 しかしある晩、情事の最中「猫かぶりはいい加減にしろ」と彼に言われてしまう。
夫に嫌われたくないが、自分に自信が持てないため涙するアリーズ。だがローデンヴェイクもまた、言いたいことを上手く伝えられないもどかしさを密かに抱えていた。
気持ちを伝え合った二人は、本音しか口にしない、隠し立てをしないという約束を交わし、身体を重ねるが……?
「こんな本性どこに隠してたんだか」
「構って欲しい人だったなんて、思いませんでしたわ」
さてさて、互いの本性を知った夫婦の行く末やいかに。
+ムーンライトノベルズにも掲載しております。
離宮に隠されるお妃様
agapē【アガペー】
恋愛
私の妃にならないか?
侯爵令嬢であるローゼリアには、婚約者がいた。第一王子のライモンド。ある日、呼び出しを受け向かった先には、女性を膝に乗せ、仲睦まじい様子のライモンドがいた。
「何故呼ばれたか・・・わかるな?」
「何故・・・理由は存じませんが」
「毎日勉強ばかりしているのに頭が悪いのだな」
ローゼリアはライモンドから婚約破棄を言い渡される。
『私の妃にならないか?妻としての役割は求めない。少しばかり政務を手伝ってくれると助かるが、後は離宮でゆっくり過ごしてくれればいい』
愛し愛される関係。そんな幸せは夢物語と諦め、ローゼリアは離宮に隠されるお妃様となった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる