婚約者を妹に奪われ、家出して薬師になった令嬢は王太子から溺愛される。

二位関りをん

文字の大きさ
86 / 88

第77話 回復とその後

 峠を越えたアダン様はそこから予想以上の早さで回復を遂げた。薬だけに頼らず、しっかり食事を取った事も功を奏したようだった。
 薬の量も減り、ついには傷も塞がって包帯も必要無くなった。とても喜ばしい事だ。

「おはようございます。アダン様」
「おはようジャスミン」

 私は当初はつわりの関係で仕事を休む予定だったが、その予定は無しにした。確かにつわりでしんどい時もあるが薬師及び医薬師長としてのプライドのような何かと、アダン様への愛が勝りずっと仕事に打ち込んでいる。
 というか、アダン様が決闘で深手を追ってから何日間はつわりがどこかに消えていた。もしかしたら私が気づいていなかっただけかもしれないが。

(それだけ集中していたって事かもしれない)

 回復したアダン様は、公務にも復帰し人々からますます慕われる存在を確立していっている。国王陛下も体調には波があるが、アダン様の存在には全幅の信頼を置いている。
 そんな国王陛下だが、アダン様に包帯が必要無くなったのを見計らい、彼を摂政に任命した。 

「アダン。そなたを摂政と致す」
「父上。承知いたしました」
「私はもう長くはない。間違った判断が今後増えない、出さない為にもアダンの力が必要だ」

 エミリアの両親が訪れた時の対応を悔いているのか、その時の声は申し訳なさが入っていたとアダン様は語る。

「父上のあんな声、初めて聞いたよ」
「そうなんですか?」
「ああ、かなり反省しているのが分かった」

 ジョージの遺体はヨージス家の屋敷へと移送された後、私の両親によってひっそりと葬式が執り行われた。なお、決闘に負けた愚か者として庶民からは屋敷へと石を投げつけられたりする被害を受けたようだ。

「ジャスミン。ヨージス家へと戻って来て欲しい」
「ヨージス家を継いで欲しい」

 そう記された手紙が私の元に届いた後、私の両親はエミリアとの婚約で婚姻届など婚約に関する書類を偽造した罪でエミリアの両親共々捕縛され、更に爵位を剥奪されて庶民となった。捕縛され庶民となった両親は、南西部の田舎町に流刑となった。彼らに田舎暮らしが出来るかどうかは知らないが私に彼等を手助けする気は一切ない。何か頼まれても断るつもりだ。

(絶対助けてやんない)

 両親が流刑された次の日。ヨージス家の存続について、私はアダン様と国王陛下と共に話をした。元は侯爵家という事もあり由緒正しい家柄には、なる。なのでこのまま家ごとまるまる取り潰しになるのもどうかとの事らしい。
 それに両親が庶民になった事で、私も庶民扱いになる。そうなれば立場が危うくなるという話だった。
 
(個人的には庶民扱いになっても、良いのだけど)

感想 4

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

「離縁状の印が乾く前に、王太子殿下から花束が届きました」〜五年間「置物」と呼ばれた侯爵夫人、夫が青ざめるのは王家との縁が切れてからでした〜

まさき
恋愛
侯爵夫人として過ごした五年間、夫に名前を呼ばれたことが一度もなかった。 愛人を夜会に連れてきた翌朝、私は離縁状を置いて屋敷を出た。 夫は「すぐ戻る」と思っていたらしい。 でも届いたのは、王太子殿下からの白薔薇だった。 「五年、待ちすぎました。今度こそ私の隣に」 幼馴染の殿下は、いつも私を「アメリア」と呼んでくれた。 ただそれだけで、五年分の何かが、ほどけていった。 夫が全てを失うのはこれからの話。 私が本当の笑顔を取り戻すのも、これからの話。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【本編完結】初恋のその先で、私は母になる

妄夢【ピッコマノベルズ連載中】
恋愛
第19回恋愛小説大賞にて、奨励賞を受賞いたしました。読者の皆様のおかげです!本当ありがとうございます。 王宮で12年働き、気づけば28歳。 恋も結婚も遠いものだと思っていたオリビアの人生は、憧れの年下公爵と一夜を共にしたことで大きく動き出す。 優しく守ろうとする彼。 けれどオリビアは、誰かに選ばれるだけの人生を終わらせたいと思っていた。 揺れる想いの中で、彼女が選んだのは―― 自分の足で立ち、自分の未来を選ぶこと。 これは、一人の女性が恋を通して自分を取り戻し、母として、そして一人の人間として強くなっていく物語。 ※表紙画像はAI生成イラストをつかっています。

侯爵令嬢アリスティアの愛する人

わらびもち
恋愛
 夜会で婚約者から婚約破棄を宣言されたアリスティア。  理由は「他に愛する女性がいるから」とのこと。  いえ、別に貴方に愛する女性がいても私には関係ありませんけど……?  

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041