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最終話 あなたと共に
この日の夜、私は早速王太后様から頂いた紅茶を味わっている事にした。紅茶の色はオレンジ色に近い赤。透明感もあって綺麗な色だ。
「どれどれ……」
爽やかな味が口の中に広がって、美味しい。また味も濃すぎずにちょうど良い口当たりだ。
「うん、美味しい」
すると、窓からどんどんと音が響く。勿論音の主は彼だ。窓を開けて彼を招き入れると、私は一緒に紅茶を飲まないかと彼を誘ってみた。
「これ、おばあさまからくれたの?」
「そうなんです。侯爵祝いにですって。アダン様もいかが?」
「じゃあ、1杯貰おうかな」
白いティーカップに紅茶を入れる。アダン様に差し出すと、彼はまず匂いを嗅いだ。紅茶の匂いを嗅ぐと彼は何度も何かを確かめるようにして頷く。
「さすがはおばあさま。良い風味だ」
そして1口、すっと飲んだ。飲み込むと爽やかで美味しいと彼はすっとした笑顔を浮かべながら答えてくれた。
「やはりおばあさまの選ぶ紅茶は美味しいね」
「もしかして王太后様は紅茶にとてもお詳しいのですか?」
「うん。王族で一番詳しいはずだ」
「なるほど……」
その後も2人で紅茶をゆっくりと味わう。窓の向こうにはやや黄色い満月が浮かんでいた。暗闇を照らす満月の光には温かみが少しだけ感じられる。
「綺麗な月ですね」
「そうだね。今日の月はなんか黄色いね」
「確かに。そのせいかちょっと温かく見えます」
「……ジャスミン。せっかくだからこれからどうするのかも聞いていい?」
私はアダン様にそう尋ねられ、しばらく考え込む。ああそうだ。これからどうするのか。自分はどうしたいのか決めないといけない。
(最近それどころじゃなかったから、全然考えられてなかった……!)
だがそれも結局は言い訳になるし、遅かれ早かれどうするかは決めないと行けない。ふと、そこで思い浮かんだのは薬師としての仕事だった。これまでアダン様含めて様々な方々の看病だったり、薬に携わる薬師としての仕事にはやりがいを感じているし充実もしている。貴族の令嬢としての生活より、今の薬師としての生活の方が断然自分には合っている。それに王太子妃という肩書には興味を抱けないでいる。
「私はこのまま、薬師として働きたいです。この仕事にやりがいを持っています。なので、これからも薬師として働くつもりです」
「……王太子妃になる気持ちは無いんだね?」
「はい。薬師としてアダン様をお支えしたいです」
「そっか。わかった。じゃあ、俺は王太子妃を迎えない。側室も迎えない。今までもこれからもジャスミンだけを愛する」
「っ! アダン様……ありがとうございます」
「それと、これは俺からのわがままなんだけど……結婚式はしてもいいかな? ユングミル城で、出来たら規模は小さくひっそりとしたい。勿論ジャスミンが嫌ならやるつもりはない」
「わかりました。それなら、しましょう」
「ありがとう。……君は強いね。あの時から変わってないや」
アダン様は私の頬にそっと口づけを落とす。私もまた、彼の左手の甲へと口づけをそっと落としたのだった。
その後、結婚式はユングミル城にてささやかに執り行われた。出席したのはハイダとメラニーとウィリアと王太后様。王太后様はユングミル城へ行くのがこれが久しぶりという事で、少し新鮮な表情を浮かべていた。
ウエディングドレスは、メラニーから借りた。ふんわりとしたシルエットで、レースは少なめだが、これくらいで丁度よい。
ユングミル城の部屋の中。婚姻届け含む婚約の書類にサインをし、最後神父から愛を誓うかの言葉を投げかけられる。
「はい、誓います」
「王太子殿下は?」
「勿論誓います」
「では、誓いのキスを」
アダン様の温かな唇が、私の唇にそっと優しく重なった。
(今後とも、よろしくお願いします)
それから私は臨月までは薬師として働き、そこから休みを貰って宮廷からすぐ近くの修道院へと移動し、そこで出産に臨んだ。お腹周りが目立たないような服を着ていたからか医師や薬師からは指摘を受ける事は無かった。
出産にはハイダとメラニーが付き添ってくれた。生まれた子は元気な男の子。名前はアダムス。私とアダン様で考えて、命名した。アダムスの誕生は国の内外へ大々的に発表されたが、そこにアダムスの母親である私の名と存在は無い。庶民や貴族は母親は一体誰なのかと訝しんでいるがそれでいいのだ。
しばらく休みを得たのち仕事に復帰した私はいつも通り医薬師長として、アダン様や乳母と暮らすアダムスに接する日々を送る事となった。アダムスは元気で毎日すくすくと育ってくれている。
(このまま、健康に育ってほしい)
数年後。国王陛下が崩御し、アダン様が国王陛下に、アダムスが王太子殿下にそれぞれ即位した。王妃もといアダムスの母親が表舞台に全く出ないのは、人々の語り草になっているが、気にしない。
即位した際。アダン様はアダムスと共に、宮廷のバルコニーにて庶民や貴族からありったけの祝福を受けた。その様子をバルコニーの外の廊下から見つめていた私は、2人を晴れ晴れしく感じながら、健康を願ったのだった。
「これからも元気に過ごせられますように」
あの幼いアダン様を手当てした時のハンカチーフを、右手でぎゅっと握りながら。
「どれどれ……」
爽やかな味が口の中に広がって、美味しい。また味も濃すぎずにちょうど良い口当たりだ。
「うん、美味しい」
すると、窓からどんどんと音が響く。勿論音の主は彼だ。窓を開けて彼を招き入れると、私は一緒に紅茶を飲まないかと彼を誘ってみた。
「これ、おばあさまからくれたの?」
「そうなんです。侯爵祝いにですって。アダン様もいかが?」
「じゃあ、1杯貰おうかな」
白いティーカップに紅茶を入れる。アダン様に差し出すと、彼はまず匂いを嗅いだ。紅茶の匂いを嗅ぐと彼は何度も何かを確かめるようにして頷く。
「さすがはおばあさま。良い風味だ」
そして1口、すっと飲んだ。飲み込むと爽やかで美味しいと彼はすっとした笑顔を浮かべながら答えてくれた。
「やはりおばあさまの選ぶ紅茶は美味しいね」
「もしかして王太后様は紅茶にとてもお詳しいのですか?」
「うん。王族で一番詳しいはずだ」
「なるほど……」
その後も2人で紅茶をゆっくりと味わう。窓の向こうにはやや黄色い満月が浮かんでいた。暗闇を照らす満月の光には温かみが少しだけ感じられる。
「綺麗な月ですね」
「そうだね。今日の月はなんか黄色いね」
「確かに。そのせいかちょっと温かく見えます」
「……ジャスミン。せっかくだからこれからどうするのかも聞いていい?」
私はアダン様にそう尋ねられ、しばらく考え込む。ああそうだ。これからどうするのか。自分はどうしたいのか決めないといけない。
(最近それどころじゃなかったから、全然考えられてなかった……!)
だがそれも結局は言い訳になるし、遅かれ早かれどうするかは決めないと行けない。ふと、そこで思い浮かんだのは薬師としての仕事だった。これまでアダン様含めて様々な方々の看病だったり、薬に携わる薬師としての仕事にはやりがいを感じているし充実もしている。貴族の令嬢としての生活より、今の薬師としての生活の方が断然自分には合っている。それに王太子妃という肩書には興味を抱けないでいる。
「私はこのまま、薬師として働きたいです。この仕事にやりがいを持っています。なので、これからも薬師として働くつもりです」
「……王太子妃になる気持ちは無いんだね?」
「はい。薬師としてアダン様をお支えしたいです」
「そっか。わかった。じゃあ、俺は王太子妃を迎えない。側室も迎えない。今までもこれからもジャスミンだけを愛する」
「っ! アダン様……ありがとうございます」
「それと、これは俺からのわがままなんだけど……結婚式はしてもいいかな? ユングミル城で、出来たら規模は小さくひっそりとしたい。勿論ジャスミンが嫌ならやるつもりはない」
「わかりました。それなら、しましょう」
「ありがとう。……君は強いね。あの時から変わってないや」
アダン様は私の頬にそっと口づけを落とす。私もまた、彼の左手の甲へと口づけをそっと落としたのだった。
その後、結婚式はユングミル城にてささやかに執り行われた。出席したのはハイダとメラニーとウィリアと王太后様。王太后様はユングミル城へ行くのがこれが久しぶりという事で、少し新鮮な表情を浮かべていた。
ウエディングドレスは、メラニーから借りた。ふんわりとしたシルエットで、レースは少なめだが、これくらいで丁度よい。
ユングミル城の部屋の中。婚姻届け含む婚約の書類にサインをし、最後神父から愛を誓うかの言葉を投げかけられる。
「はい、誓います」
「王太子殿下は?」
「勿論誓います」
「では、誓いのキスを」
アダン様の温かな唇が、私の唇にそっと優しく重なった。
(今後とも、よろしくお願いします)
それから私は臨月までは薬師として働き、そこから休みを貰って宮廷からすぐ近くの修道院へと移動し、そこで出産に臨んだ。お腹周りが目立たないような服を着ていたからか医師や薬師からは指摘を受ける事は無かった。
出産にはハイダとメラニーが付き添ってくれた。生まれた子は元気な男の子。名前はアダムス。私とアダン様で考えて、命名した。アダムスの誕生は国の内外へ大々的に発表されたが、そこにアダムスの母親である私の名と存在は無い。庶民や貴族は母親は一体誰なのかと訝しんでいるがそれでいいのだ。
しばらく休みを得たのち仕事に復帰した私はいつも通り医薬師長として、アダン様や乳母と暮らすアダムスに接する日々を送る事となった。アダムスは元気で毎日すくすくと育ってくれている。
(このまま、健康に育ってほしい)
数年後。国王陛下が崩御し、アダン様が国王陛下に、アダムスが王太子殿下にそれぞれ即位した。王妃もといアダムスの母親が表舞台に全く出ないのは、人々の語り草になっているが、気にしない。
即位した際。アダン様はアダムスと共に、宮廷のバルコニーにて庶民や貴族からありったけの祝福を受けた。その様子をバルコニーの外の廊下から見つめていた私は、2人を晴れ晴れしく感じながら、健康を願ったのだった。
「これからも元気に過ごせられますように」
あの幼いアダン様を手当てした時のハンカチーフを、右手でぎゅっと握りながら。
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