39 / 239
第三章 ついに巡り合う二人
39.襲来
しおりを挟む第015日―6
ギルドの建物の中は騒然となっていた。
第二の勇者ナイアの突然の登場に、モンスター数千の襲撃予告。
冒険者達や宿直の職員達が慌ただしく、他の冒険者達との連絡を試みる。
夜半にも関らず、ギルドの緊急招集に、十数名の腕利きの冒険者達が直ちに応じて駆け付けた。
後、数十名は動員出来るだろうとの言葉を背に、ナイアは冒険者達を引き連れ、アレル達の待つ地点に急いだ。
道々、彼女は冒険者達に声を掛けた。
「あたし以外にもう一人勇者がいる。勇者ダイスが戻るまで持ちこたえれば、三人の勇者が揃う。あたしらの勝利は間違いない!」
アレル達と合流すると、月明かりの下、既に索敵能力に長けた冒険者なら感知出来る範囲にまで、モンスターの大群は押し寄せてきていた。
冒険者達の間に動揺が走った。
「びびってんじゃないよ! 魔術師は後方で大魔法の準備! 弓はその援護! 戦士はあたしらに続いて!」
ナイアはタリスマンを握りしめ、使い魔達を呼び出し周囲に配置した。
そして喊声を上げながら、モンスターの群れに向かって突き進んだ。
アレルとエリスもそれに続き、イリアとウムサが詠唱を開始する。
アレルの持つ聖剣の効果で、爆発的に魔力を増大させたイリアの放った大魔法が、モンスター達の群れの中心で炸裂した。
数十体のモンスター達が吹き飛ばされる。
ウムサも魔力を放ち、モンスター達の進軍速度が遅らされる。
そこにアレル、エリス、そしてナイアが斬り込んだ。
モンスター達の前衛が崩れ、陣形が乱れた。
彼等の勇戦は、冒険者達、そして続々と駆け付ける街の衛兵達を大いに勇気付けた。
「勇者が二人もいるんだ。我等に敗れる道理は無い。彼等に続け!」
指揮官の号令一下、冒険者や衛兵達もモンスター達と交戦を開始した。
…………
……
「まずいな……」
乱戦の中、ナイアが独り言ちた。
戦闘が開始されて既に数時間。
東の空は白みかけていた。
味方は勇戦しているものの、既に疲労困憊。
死傷者も多数出してしまっている。
ナイア自身の使い魔達も、数を半減させていた。
一体一体の能力の高さに加え、敵の数が多過ぎるのだ。
まだ街への侵入を許してはいないけれど、このままでは数で押し切られてしまうかもしれない。
ナイアは、近くで自らも槍を振るう衛兵隊の指揮官に声をかけた。
「街の住民の避難は?」
「南の門から脱出するよう手配した。大体終了しているはずだ」
「このままじゃ全滅だ。住民の避難が完了したら、あんたらはここを離脱して」
指揮官が目を剥いた。
「街を見捨てろと言うのか!?」
「あんたらがここで全滅したら、避難民を誰が守るのさ?」
「っ!」
「大丈夫、あたしらが殿を務めるから。こう見えても勇者だよ? ただじゃ死なないさ」
ナイアが不敵に笑った。
その時!
凄まじい光の矢の雨がモンスターの群れに降り注いだ。
同時に、大魔法にも匹敵する威力の猛烈な火炎が、連続してモンスターの群れを焼き払って行く。
ナイアがその攻撃の源を目で追うと、そこには上空を悠然と舞う巨大な銀色に輝くドラゴンと、その背に乗る赤毛の長髪を靡かせた一人の青年の姿があった。
「勇者ダイスだ! ダイスが戻って来たぞ!!」
戦場の衛兵や冒険者達が口々に叫び、彼等の目に闘志が再び戻っていく。
「あれが勇者ダイス……」
ナイアが感慨深げに呟いた。
彼の魔王討伐譚は、幼い彼女のお気に入りの一冊だった。
いつかは自分も彼のような偉業を成し遂げたい。
そう願っていた彼女は、まさか自分が生きている内に魔王が誕生し、自身が勇者としてそれに立ち向かう日が来る等とは思いもしなかった。
勇者ダイスの参戦は形勢を大きく動かした。
元々、モンスター側も数時間に及ぶ戦闘で損耗著しかった。
そこへ強力な新手の登場である。
夜が明けきるころ、戦意を喪失したモンスター達が次々と潰走を始め、勝敗が決する事となった。
戦場の余燼が燻る中、三人の勇者は対面した。
周囲では衛兵や街の住民達が、戦場の後片付けを行っていた。
アレル達は既にナイアから推論――ここが400年前の世界である事――を聞かされてはいたものの、実際にダイスと対面して、驚きを隠せない。
一方のダイスも驚きの表情を浮かべていた。
「まさかオレ以外にも勇者が誕生しているなんてなぁ」
ナイアとアレルをしげしげと眺めた後、彼は自分の右手の甲を二人に見せた。
そこには赤く不気味に輝く勇者の紋章が浮かび上がっていた。
「昨日の昼に突然右手の甲に焼け付く痛みが走ってな。見たらこれだ。そっから先、頭の中の焦燥感が半端ねえ。で、取り敢えずこっちへ戻って来たら、この騒ぎだったってわけさ」
アレルとナイアも自身の右手の甲をダイスに見せながら説明した。
「あたしらの右手も丁度同じ頃合いにこうなったんだよ」
「ところでお前ら、いつ勇者になったんだ?」
「その事なんだけどね……」
ナイアがダイスの反応を確認しながら言葉を継いだ。
「どうやらあたしら、この世界の住人じゃないらしい」
「はっ?」
「あんた、勇者ダイスだろ? その名前は、あたしらにとっては、400年前の物語の主人公のものさ」
そしてナイアは、自分達が北の塔と呼ぶ場所で、敵と交戦中に巻き起こった不測の事態により、ここにやって来た可能性を説明した。
ダイスの表情が驚きで固まった。
『ううむ……時の壁を超えるなど、もしや霊力がらみか……?』
ふいに、何者かの声がアレルとナイアの頭の中に響いた。
アレルとナイアが顔を見合わせた。
二人の様子に気付いたらしいダイスが、面白そうに笑った。
「ドラゴンのじいさんが話しかけているんだよ」
『人間の勇者よ、我はそこの銀色のドラゴンじゃ。念話でおぬしらに呼び掛けておる』
銀色のドラゴンは、ただじっと勇者達を見下ろしている。
『我はこの数千年間に渡って、おぬしら人間の勇者と魔族の魔王との数多の戦いを見届けてきた。今まではどちらにも肩入れしてこなかったが、今回は違う。魔王ラバスが禁忌を犯さんとしているが故、ダイスと契約を結び、彼と行動を共にしておる』
「禁忌? もしかして『彼方の地』とやらに存在する何かと関係が?」
ナイアは、魔王エンリルが勇者との戦いに勝利すべく、『彼方の地』に存在する何らかの力を欲していると睨んでいた。
彼女が探索の結果得た結論では、各地の祭壇と呼ばれる謎の施設の封印を解く事が、『彼方の地』への扉を開く事に繋がるはず。
だからこそ、敵は北の塔最上階の祭壇でも、あれだけ頑強に封印解除の儀式を完遂しようとしていたのだろう。
ナイア達にとって先代の魔王であるラバスもまた、同じように動いていたのでは無いだろうか?
銀色のドラゴンから、感心したような念話が届けられた。
『ほう……人間達の間では失われてしまった知識と思うておったが。『彼方の地』より現れ出づる守護者を知っておるのか? だが、我の言う禁忌はそれとは別じゃ』
「守護者? 『彼方の地』には守護者っていうのがいるのかい?」
ナイアは初めて聞く情報に目を見開いた。
『『彼方の地』は知っておるのに、守護者を知らぬのか? おぬしら複数の勇者に審判を与え、只一人の勇者を選び出す存在じゃ』
「審判を与える? じゃあ、選ばれなかった勇者はどうなる?」
『存在そのものを消去される』
「「!!」」
『昨日、太陽が中天にある時、ダイスの紋章が審判の警告を発した。我の見るところ、猶予は約1日のはず。今日、太陽が中天に上る時、審判が開始されるであろう』
銀色のドラゴンの言葉に、アレル、ダイス、ナイア、三者がそれぞれ顔を見合わせた。
0
あなたにおすすめの小説
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
盾の間違った使い方
KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。
まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。
マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。
しかし、当たった次の瞬間。
気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。
周囲は白骨死体だらけ。
慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。
仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。
ここは――
多分、ボス部屋。
しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。
与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる
【異世界ショッピング】。
一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。
魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、
水一滴すら買えない。
ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。
そんな中、盾だけが違った。
傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。
両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。
盾で殴り
盾で守り
腹が減れば・・・盾で焼く。
フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。
ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。
――そんなある日。
聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。
盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。
【AIの使用について】
本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。
主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。
ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる