【改稿版】僕は最強者である事に無自覚のまま、異世界をうろうろする

風の吹くまま気の向くまま

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第六章 神に行き会いし少年は世界を変える

140. 神都

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4日目―――4


懐に収めた神聖銀貨20枚ですっかり気分が大きくなっていた僕は、宿屋の集まっている区画に到着すると、早速、今夜の宿探しを開始した。

ところが……

「悪いけど、ウチは獣人お断りなんだ」
「獣人はシラミだらけだからね。他のお客さんが嫌がるんだよ」
「ウチには馬小屋は無いよ。街の入り口に行きな!」

どの宿でも、セリエの姿を目にしただけで相手にしてもらえなくなった。

前言撤回。
この街の住人は、優しい人が少ない。
せっかく今までの感謝の気持ちも込めて、セリエを柔らかい布団に寝かせてあげようと思ったのに、これでは逆に彼女を傷つけてしまったかも。

僕はセリエに対して、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

「……ごめんね、セリエ」
「どうしてカケルが謝るの?」

しかしセリエはこうした扱いに慣れてしまっているのか、あまり気にしている様子は見られない。

結局、僕達の今夜の寝床は、街の入り口の馬小屋の一角となった。



5日目―――1


翌日、僕はセリエを連れて、朝から武器屋や道具屋を回り、必要そうな物を買い揃えて回った。
この世界に来て早5日。
セリエですら、護身用の小さなナイフを腰に差しているのに、僕がいつまでも丸腰と言うのも、正直居心地が悪い。
予算をやりくりして、午前中には、自分的になんとか納得のいく装備品を購入する事が出来た。
新しい武器や防具を身に着けた僕を目にして、セリエが目を細めた。

「カッコ良くなったね、カケル」
「ありがとう、セリエ。でもセリエは、そんな物だけで本当に良いの?」

僕はセリエにも、お店で好きな物を選ぶように話したのだが、彼女が手にしたのは、道具屋の隅でホコリを被っていた、安物の腕輪一つ。
その腕輪にはイミテーションと思われる、大きな紫のガラス玉がはめ込まれていた。

「うん。買ってくれて有り難う」

しかしセリエは、その安物の腕輪を握りしめてニコニコしている。
どうやら僕が右腕に装着している腕輪を見て、自分も似たのが欲しくなったらしい。
まあ、セリエが喜んでいるなら、良しとするか。

「僕もこれで少しはモンスターとちゃんと戦えそうだ。魔結晶いっぱい手に入ったら、セリエにも、もっと色々買ってあげられるよ」

銀貨もあと3枚程度しか残ってないしね。
今日は神都の周辺で、弱そうなモンスターがいたら、戦ってみようかな?

そんな僕の気持ちが、顔に現れてしまったのだろうか?
セリエの顔が少し不安げになった

「私、欲しい物無いよ? 今持っている物だけで十分だし。だからあんまり危ない事しないでね」


街を出ると、行く手に昨日以上に綺麗に、“神様が住んでいる塔”がそびえ立っているのが見えた。
進むにつれて、その姿は大きくはっきりとしてきた。
やがて午後の早い時間、僕達はついに、神都へ続く橋の入り口へと到着した。

神都は、完全な円形都市であった。
東西南北四方向から、神都が築かれている島に続く、美しく長大な橋が掛けられていた。
僕達が到着したのは、北に架けられた橋の入り口。
特に検問が行われているわけでも無く、僕達はそのまま北の橋を歩いて渡り、神都に入った。

見える範囲内では、白を基調とした、美しい建物が整然と建ち並んでいた。
そして街の中心方向には、“神様が住んでいる塔”が、他を圧する威容を見せてそびえ立っていた。
これほどの大きさの都市であるにもかかわらず、喧騒とは全く無縁な、むしろ不自然さを感じる位の静けさが辺りを支配していた。
橋を渡ってすぐの区域は、事前に聞いていた外周区に当たるらしく、道を歩くのは、ほとんどがすっと長く伸びた耳と美しい容姿が特徴的なエルフ達。
頭の角が特徴的な魔族もちらほら見かけたけれど、普通の人間ヒューマンや獣人等は全く見かけない。
それはともかく少し気になったのは、誰何すいかされる事は無いものの、道行く人々が僕達に向けて来る視線だ。
皆一様に、何か汚い物を目にしたかのように顔をしかめたり、露骨に目をそむけたりする。
雰囲気としては、随分排他的だ。

僕はセリエにささやいた。

「なんだか、大きさの割に静かな街だね」
「前来た時もこんなだったよ?」

セリエがあっけらかんと答えてきた。
そのまま少し歩き回るうちに、僕は奇妙な事実に気が付いた。

「お店みたいなのって無いのかな?」

そう。
露店どころか、店舗やレストランみたいなのすら、一切見当たらない。
もしかすると、単に今僕達が歩いている地区が、そうした商業施設とは無縁ないわゆる住宅街なだけ、なのかもしれないけれど。

セリエが何かを思い出しながら、言葉を返してきた。

「う~ん、お店は分からないけど……酒場みたいなのはあったよ?」

彼女の話によれば、神都に物資を届けたりする人々が利用する、酒場兼宿泊施設が近くにあるらしい。

「3年前にお父さん達と来た時、そこに泊まったよ」
「じゃあ、そこへ行ってみよう」

そこならこの神都って場所について、もっと色々情報が聞けるかも。

住人達からの蔑むような視線にやや辟易へきえきしていた僕は、セリエの案内で、その酒場兼宿泊施設に向かう事にした。


神都の酒場兼宿泊施設は、正確には、街外れの湖畔に面した場所に建てられていた。
建物の前には、荷馬車が何台か繋がれ、物資を輸送してきたのであろう、人間ヒューマンやドワーフ、獣人達が何人かたむろしていた。
僕とセリエがその建物の扉を開けると、中は雑然とテーブルが並べられた、大きな空間が広がっていた。
数人の客が着席し、思い思いに談笑している。
僕達も、空いているテーブルに着席した。

「あれ? ここって、メニュー表とか無いの?」
「そんな物無いよ。好きな物を自分で席に持ってきて、食べたり飲んだりするんだよ」

そう言って、セリエが、店内の一角を指さした。
そこには質素ながら、ビュッフェ形式に何種類かの飲食物が置いてあった。
店員が時々厨房から出てきては、品切れが無いかどうか確認して回っている。
僕達はそこから思い思いにいくつかの料理や飲み物をピックアップして、席に戻ってきた。

「お金は後払あとばらいかな?」
「お金? いらないよ」
「全部タダって事?」
「そうだよ。さすが、神様が住んでらっしゃる街だよね」

セリエの話によれば、ここでの飲食そして宿泊まで、全部無料なのだという。

それなら外部から、大量の貧乏人が、ここへ押し寄せて来ても良さそうなのに……

僕の疑問に、セリエが当惑したような表情をした。

「神様のいらっしゃる街だよ? 用事のある人しか来ないよ」
「でも僕達は、何かの届け物の用事で神都へ来たわけじゃないけど、ここを無料で利用しようとしているよ?」
「私達はカケルの用事で来たんでしょ? だから、ここ使っても神様に怒られないよ?」

セリエは、何を分かり切った事を聞くのだ、という表情をしていた。
僕はこの世界に来て何度目かの違和感を抱いた。

何だろう?
この世界の“神様”の権威が、それだけ凄まじい、という事なのだろうか?

首をひねっていると、突然声を掛けられた。

「こんにちは、お二人さん。ご一緒させて頂いても良いかしら?」

声の方に視線を向けると、黒っぽいフードを目深まぶかにかぶった人物が、何かの飲み物のコップを片手に、傍に立っていた。
声からすると、若い女性のようだけど、顔が半分隠れていて、詳細は分からない。
それよりも、彼女はどうして僕達に声を掛けてきたのだろうか?

自然、顔が強張っていたのだろう。
フードの人物の口元に、苦笑が浮かぶのが見えた。

「あら、ごめんなさい。ちょっと驚かせてしまったかしら?」

そしてその人物は、自身の顔にかかるフードの裾を少し上げて僕に見せてきた。
見た目は20代後半であろうか? 
整った顔に白っぽい髪、そしてその頭部に一対の角がチラリと見えた。

「初めまして。私の名前はキガル。見ての通りの魔族よ」

そう自己紹介すると、キガルと名乗ったその魔族の女性は、勝手に僕達と同じテーブルに着席した。


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