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番外編「First Grade」
第二話「いわくのタロットカード」⑴
霧島が美術部にかようようになって、一週間ほど経った。
成宮、大城、音来は放課後になると、ひと足先に美術室に来た。
「ちわーっす」
ドアを開けると、棚から女子生徒の足が出ていた。
「うわっ!」
「ぎゃーっ! お化けぇー!」
「俺の安寧の地を乱すとは……出てこい!」
音来が女子生徒の足を引っ張る。すると、
「きゃッ!」
と、生身の女子生徒がホコリだらけになって出てきた。名札と上靴のラインの色を見るに、二年生だろう。
女子生徒は輪ゴムでくくられた古びたカードの束を持っていた。一緒に転がり出てきた箱には、かすれた字で「いわく」とあった。
「誰だ?」
「まさか、画材どろぼう?」
「おっつー」
「何してんの?」
遅れて大城兄、比嘉、村上も来た。
三人は女子生徒が持っているカードの束を目にした途端、ハッと青ざめた。
「それに触れちゃいけない!」
「呪われるぞ!」
「いいから元の場所に戻せ!」
「これ、そんなにヤバいもんなんすか?」
先輩達は力強く頷いた。
「いわくのタロットカードだからね。君達は入学したばかりだから知らないと思うけど、学校の怪談のひとつにも数えられている、呪いのアイテムだよ」
「あらゆる質問に正確に答えてくれるんだが、ルールを破るととんでもない天罰がくだるらしい」
「天罰って、どんな?」
「具体的には知らん。俺達も先輩から聞いただけなんだ。『この部屋にあるものはなんでも使っていい。だが、いわくのタロットカードだけは遊ぶな』ってな」
大城兄は女子生徒を起こすと、諭すように言った。
「姉小路さん、何が知りたいか知らないけど、いわくのタロットカードだけは使っちゃダメだ。君だって、生徒会の役員なんだから知っているはずじゃないか」
しかし女子生徒は納得していない様子で、大城兄に訴えた。
「分かってます! でも私、どうしても知りたいんです! このままじゃ、漫研が終わっちゃう!」
「終わる? 部員も設備も完璧なのに?」
女子生徒はいら立ちをあらわに答えた。
「……腐女子のせいです。BLの同人誌は持ち込み禁止にしているはずなのに、なぜか部室で見つかるんです。誰が持ち込んでいるのか、ハッキリさせないと……霧島君が戻って来られない!」
◯●◯●◯
漫研の副部長である姉小路は霧島の退部をキッカケに、漫研を変えようとしていた。
漫研は以前から「とにかくうるさい」「ゴリラか猿でも飼っているのか?」とクレームが絶えなかった。原因は部員が大量に持ち込んでいるBLの同人誌で、読んだり感想を語るたびに、クレームが舞い込んだ。
そこで姉小路は部長の蝶園にも相談し、「BL禁止令」を発令した。
発令されている間はBLを話題にするのも禁止、BLの同人誌を持ち込むのも禁止。部員達の不満は大きかったが、BLに興味のない姉小路には関係なかった。
それに部室が静かになれば、霧島が戻ってくるかもしれない。
霧島はBLにも同人誌にも興味がない、姉小路にとっての理想の部員だった。画力もプロ並みで、漫研の次期エースとして有望視していた。彼が戻ってきてくれるのなら、部員が何人辞めようと構わなかった。
入口前の荷物検査や監視員の配備など、徹底した監視体制を強いた。
最初は静かだった。周囲からのクレームも収まった。
ところが、発令して数日が経った頃。忘れ物を取りに部室に戻ると、床にBLの同人誌が落ちていた。さらに部室をくまなく捜索すると、大量の同人誌が出てきた。
「誰よ! 部室に同人誌を持ち込んだのは!」
翌日、部員を問い詰めたが、誰も口を割ろうとしなかった。
蝶園も犯人を探す気がなく、「そのへんにしておいたらー?」と、やんわり姉小路を止めた。
成宮、大城、音来は放課後になると、ひと足先に美術室に来た。
「ちわーっす」
ドアを開けると、棚から女子生徒の足が出ていた。
「うわっ!」
「ぎゃーっ! お化けぇー!」
「俺の安寧の地を乱すとは……出てこい!」
音来が女子生徒の足を引っ張る。すると、
「きゃッ!」
と、生身の女子生徒がホコリだらけになって出てきた。名札と上靴のラインの色を見るに、二年生だろう。
女子生徒は輪ゴムでくくられた古びたカードの束を持っていた。一緒に転がり出てきた箱には、かすれた字で「いわく」とあった。
「誰だ?」
「まさか、画材どろぼう?」
「おっつー」
「何してんの?」
遅れて大城兄、比嘉、村上も来た。
三人は女子生徒が持っているカードの束を目にした途端、ハッと青ざめた。
「それに触れちゃいけない!」
「呪われるぞ!」
「いいから元の場所に戻せ!」
「これ、そんなにヤバいもんなんすか?」
先輩達は力強く頷いた。
「いわくのタロットカードだからね。君達は入学したばかりだから知らないと思うけど、学校の怪談のひとつにも数えられている、呪いのアイテムだよ」
「あらゆる質問に正確に答えてくれるんだが、ルールを破るととんでもない天罰がくだるらしい」
「天罰って、どんな?」
「具体的には知らん。俺達も先輩から聞いただけなんだ。『この部屋にあるものはなんでも使っていい。だが、いわくのタロットカードだけは遊ぶな』ってな」
大城兄は女子生徒を起こすと、諭すように言った。
「姉小路さん、何が知りたいか知らないけど、いわくのタロットカードだけは使っちゃダメだ。君だって、生徒会の役員なんだから知っているはずじゃないか」
しかし女子生徒は納得していない様子で、大城兄に訴えた。
「分かってます! でも私、どうしても知りたいんです! このままじゃ、漫研が終わっちゃう!」
「終わる? 部員も設備も完璧なのに?」
女子生徒はいら立ちをあらわに答えた。
「……腐女子のせいです。BLの同人誌は持ち込み禁止にしているはずなのに、なぜか部室で見つかるんです。誰が持ち込んでいるのか、ハッキリさせないと……霧島君が戻って来られない!」
◯●◯●◯
漫研の副部長である姉小路は霧島の退部をキッカケに、漫研を変えようとしていた。
漫研は以前から「とにかくうるさい」「ゴリラか猿でも飼っているのか?」とクレームが絶えなかった。原因は部員が大量に持ち込んでいるBLの同人誌で、読んだり感想を語るたびに、クレームが舞い込んだ。
そこで姉小路は部長の蝶園にも相談し、「BL禁止令」を発令した。
発令されている間はBLを話題にするのも禁止、BLの同人誌を持ち込むのも禁止。部員達の不満は大きかったが、BLに興味のない姉小路には関係なかった。
それに部室が静かになれば、霧島が戻ってくるかもしれない。
霧島はBLにも同人誌にも興味がない、姉小路にとっての理想の部員だった。画力もプロ並みで、漫研の次期エースとして有望視していた。彼が戻ってきてくれるのなら、部員が何人辞めようと構わなかった。
入口前の荷物検査や監視員の配備など、徹底した監視体制を強いた。
最初は静かだった。周囲からのクレームも収まった。
ところが、発令して数日が経った頃。忘れ物を取りに部室に戻ると、床にBLの同人誌が落ちていた。さらに部室をくまなく捜索すると、大量の同人誌が出てきた。
「誰よ! 部室に同人誌を持ち込んだのは!」
翌日、部員を問い詰めたが、誰も口を割ろうとしなかった。
蝶園も犯人を探す気がなく、「そのへんにしておいたらー?」と、やんわり姉小路を止めた。
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