美術部俺達

緋色刹那

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番外編「First Grade」

第二話「いわくのタロットカード」⑹

 改めてタロットカードを並べ、部長が山落イミナという前提で解読し直した。
 最初の質問「漫研のBLの同人誌を持ち込んでいるのは誰か?」。辺境のカードが「遠くに行く人」ではなく、山と谷の絵から「山落イミナ」そのものを指しているのだとしたら、
「犯人は部長。山落イミナというペンネームで、一人で同人誌を出している」
 という意味に変わる。
 そうなると、次の「その理由は?」という質問の答えもおのずと変わる。
 めくって出てきたのは、民衆、画家、お金のカード。大城は「お金=価値」と考え、
「部員と、部員の画力向上のため」
 と読み解いたが、蝶園が同人誌を出しているのだとしたら、本当は
「同人誌即売会が近いから」
 だったのかもしれない。
 つまり、蝶園がBLの同人誌を持ち込んでいたのは部のためだけでなく、自分のためでもあったのだ。
「こうなってくると、最後の質問の意味も間違っているような気がしてくるな」
「な。姉小路は都合良く解釈してたけど、あれで合ってたのか? 太志」
 最後に、姉小路は「漫研の発展のためには、今後どうすればいいのか?」といわくのタロットカードに質問した。
 すると、同人誌、美術部、ファミレスの絵のカードが出た。解読した大城は答えるのを拒否した。
「無理無理無理! こんなの絶対無理だよ!」
「いいから答えなさい! 答えないなら、私が解読する!」
 姉小路は大城から解読書を奪い、カードを読み解いた。
「"同人誌は許可。代わりに美術部をファミレスへ追いやり、美術室を奪え"……なるほど、これは名案だわ。部室が増えれば、喋る部員と喋らない部員で分けられるものね」
 姉小路はニヤリと笑い、挑戦的な眼差しで成宮達を見回した。
 大城は思い出すだけで蛇に睨まれたような気分になり、青ざめた。
「ソテカン先輩の言うとおりだよ。あれ、本当は違う意味だったんだ」
「どういう意味だったんだ?」
「絶対無理って言ってたけど」
「……"美術部と同人誌を出す。ファミレスで会議"だって。ね? 無理でしょ?」
 確かに、と一同は納得した。

     ◯●◯●◯

「おや、懐かしいものを広げているね」
 顧問の柄本が準備室から様子を見に来た。
 皆は慌てていわくのタロットカードを隠そうとした。
「ち、違うんです! これはいわくのタロットカードじゃなくてですね……」
「うん。"いわくらさん"のタロットカードでしょ? 作ってるとこ見てたからね、知っているよ」
 皆は顔を見合わせた。
「いわくら……?」
「って、誰?」
「君達の先輩だよ。岩倉いわくら朋美ともみさん。美術部で、よくオリジナルのカードゲームを作ってたんだ。部室に残っている創作カードゲームのほとんどは彼女が作ったものだよ」
 つまり、いわくのタロットカードは呪いのアイテムでもなんでもないことになる。
 しかしそれにしては不可解なことが多過ぎた。
「でも、箱には"いわく"って書いてありましたよ?」
「それは"いわくら"の"ら"が消えただけさ。ほら、よく見るとうっすら残ってるだろう?」
 箱を凝視すると、確かに「く」の横にうっすらと「ら」が書いてあった。
「いわくのタロットカードじゃないってことは、占いで出た結果は間違ってるんすか?」
「うん、おおむねこじつけだね。その人がそう思いたい結果に解読するから、当たってるように思うだけさ。現に、結果は同じでも、大城君の解読と姉小路さんの解読じゃ、まるっきり意味が違っていたし」
「タライ! タライはなんなんすか! あれも勘違いってことすか?!」
「そうだね」
 柄本は紙に書かれたゲームの手順を指差した。
「最初にドアや窓を閉め切って、部屋を密室にしただろう? これは部屋に酸素が行き届かないようにするためなんだ。その上、美術室に置いてある絵や画材の臭いが充満し、軽い中毒状態になる。さらに"何かが起きるかもしれない"という極度の緊張状態も加わる。この最悪の状態で、ゲームのルールを破ったり感情が高まったりすると……どうなると思う?」
「ぶっ倒れますね」
「そう。心理的ショックが痛みになり、脳を襲う。それを『タライが落ちて来たから痛いんだ』と勘違いするんだ。周りが見ていたタライは幻覚ってこと。実際、タライは部屋に残っていないよね?」
 全員、言われてから気づいた。
 計四個はあるはずのタライが、そこにも見当たらなかった。
「じゃあ、換気しながらゲームをやれば、安全にできるってことっすか?!」
「そうだね。僕も部活中に中毒で病院送りなんて困るし」
「よっしゃ! 俺、まだ聞けなかった質問いっぱいあるんだよねー!」
「俺もやろうかな」
 太樹も加わり、席につく。
 机にタロットカードを置き、お辞儀をした直後、全員の頭にタライが降ってきた。「ぐわっしゃーん!」と豪快に音が鳴った。
「あれれ?」



(第三話へ続く)
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