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巡礼と唸る拳
番外編 反省ノートンはボロ雑巾3
しおりを挟む結局またしても屋台でも大した情報は得られませんでした。
凄くフリードのクソ野郎元殿下を殴りたい気持ちで一杯です。
もう…今日は無理。
まだ夜になるには早い時間にも関わらず、私は肉体がなによりも精神が壊れかけ。多分、白髪が何本も増えたと思います。
立ち上がるのも辛いけど自分の愛剣を杖代わりに教会へと向かう。
隣を腰を折ったご老人が抜いていく。
ほっほっ、お若いですなぁ。
生まれたての子馬のようにガクガクと膝を揺らしながら到着すると、丁度治療を終えた様子のアリス様が私に気付き慌てたようにやってきた。
「ノートンどうしたの?凄い傷じゃん!」
アリス様は私の身体中いたるところにある切り傷や刺し傷に殴り蹴り傷に驚いていました。
自分が情けないです。
おそらくアリス様は私が準備運動程度でこんなにも怪我を負うと思わなかったのでしょう。不甲斐ない、潤む瞳を必死に唇を噛むことで抑える。
「大丈夫?無茶したら駄目だよ。すぐに治すからちょっと待ってね。」
「あ、ありがとうございます…。」
違うんです。
準備運動に加えて特訓した訳ではありません。無茶どころか準備運動すらまともにこなせなかったのです。
聖女様の御力で眩く輝く最中で私は人知れず静かに頬へと情けない一筋を垂らした。
はい完了と微笑む優しき少女。
声が震えてしまう今の私は黙って一礼し教会を後にした。
頑張ろう。
ノートンが辛そうな顔をしながら帰っていった。
調査であんなボロボロになるなんてどんな場所まで行ったんだろう。
危険なところでないと良い情報が入らないのかもしれないけど無茶はすんなよ。
いや、それとも背中に背負わせた岩が重荷になってたかな。
それだったら申し訳ない。足腰を鍛えるには良いかと思って持たせたけど調査の邪魔だったかも。
「あ、お姉様!こんにちわ~!」
「お、ミーナちゃん。もうこんばんわじゃない?」
「ふへへ、お姉様お姉様お姉様。」
相変わらず元気一杯なミーナちゃん。
勢い良く俺に思いっきり飛び込んで来た。
でも、なんで毎回顔を埋めるんだい?
治療とか掃除してたし汗臭いでしょうに。
「ぐへぐへ、お姉様の香りは世界一です。一生いえ来世でも来来世でも嗅いでいたいです!」
「お、おう…。」
ちょっと引き剥がす。
そ、そういえば聞き込みしていたノートンの様子を聞いてみよう。
もし調査中に余裕があれば軽くノートンに攻撃してみてとお願いしてたから丁度いい。
いかなる状況でも警戒もしくは咄嗟に反応出来るようにと思って信者達に依頼しといた。
まああの傷だらけの様子だと余裕は無かったみたいだから攻撃出来なかったかな。
「ミーナちゃん、ノートンはどうだった?あんだけ怪我する場所に居たみたいだからミーナちゃん達の出番は無かっただろうけど。」
「そうですね、大変頑張っていらっしゃいましたよ。お姉様の言う通り私はお仕事の邪魔になると思い、見てるだけでしたが…。」
「そっかそっか。でも、あんだけ怪我するぐらい大変な調査なら岩を背負わすとかしない方が良かったかなぁ。」
「いえ、本人がそう望んだのです。お姉様も頑張る人の意志を曲げたくはないでしょう?」
「うん。けど、攻撃は止めてあげよう。ただでさえ調査で怪我してるしね。もし会ったら優しくしてあげて。」
「はい、もちろんです。そもそも今日はお忙しいようで攻撃出来ませんでしたから。」
うんうん、仕事を疎かにしてはいけないもんね。
ただミーナちゃんの真っ直ぐに向けてくれた笑顔で鳥肌が立っちゃった。
もう夜だし冷えたかな。
その後は、少しの談笑と抱擁を受けミーナちゃんは去っていった。
「お姉様、これは攻撃ではなくお仕置きですわ。巡礼中情けなかった駄犬への躾です。」
それは誰に聞かれることなく真っ暗になっていく夜空へと舞っていく。
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