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教国の危機、足音は破滅か存立か
最悪な一歩と災厄な一歩
しおりを挟む会議も終わり俺の護衛騎士が無理矢理決まったりしてしばらく、もう一月は経つんじゃなかろうか。
その間、俺は王国の騎士達との合同練習やスゥ様達行き過ぎた護衛達による夜這いもとい危機回避訓練のお陰で着実にさらなる強化が進んでいる。
我ながらそう実感している。
でも、不安な事もある。
一つは未だサラちゃんの行方が掴めていない、かっちゃん率いる悪の組織がここ最近目立った行動をしていないのも余計に行方を眩ませている。
そしてもう一つ、これ重要!
なんかね、治癒の速さとかねその時出るキラキラ光る光のつぶつぶがね、前よりも速くなってたり幻想的な輝きになってたりってやばいの。
あとねあとね、騎士との試合だったりこっそり行なっている冒険者活動での魔物を殴ったりとかでね、殴ったり蹴ったりするとたまにねキラキラ光るようになっちゃったんだよね。
なんか妙に威力が上がるし…。
ふと前に女神様が夢の中で言ってたのを思い出す。
信者達の信仰心の強さで現人神としての力が高まっていく、これってつまりいや全く信じたくないけど神としての力が強まっている事なのだろうか。
嫌だ、まだ俺は神様じゃない。
殴る威力が上がっているのは日頃の特訓の成果でキラキラ光っちゃうのはなんかこう日差しが強いからに違いない。
現実を逃避しているんじゃない、指二本で目を潰して見えなくなってしまっただけだ。
………前向きに考えよう。
自分の!!特訓の!!成果で強くなっているんだ、良い事じゃないか。
そうだ、うんそうだ、そうに違いない。………そうさせて。
そう自分に言い聞かせて少々、この鬱蒼とした気分を振り払ってくれるような報告がお城へ流れ込んで来た。
勇者がトチ狂って教国に牙を向けた。
この情報は教国でのんびり密かに紛れ込んでいた王国の間者から豪速球で舞い込んで来た情報。
新鮮ピチビチなだけあって信憑性はかなり高い。
王様は事の深刻さにどうするかってところらしい。
どうしてそんな情報を城に住んでいない普通の聖女な女の子が知っているかって?
もちろんアリス教の者からの情報だからだよ。
教えてくれた彼女はアリス教情報収集部隊『アリス様の下着の中を知り隊』の一員、ひとまずその組織を壊滅させに行きたい。
ともかくその彼女達の情報のお陰で教国が大変だと言う事が分かった。
誰かが困ってて戦えるかもしれないなんて聞いたらもう行くしかあるまい。
「と言う訳で、聖女として教国に行きたいです。」
ここは王城の談話室。
目の前には王様と宰相。
俺のお供は紹介しなくても察してほしい、もちろん優秀変態な護衛達だよ。
「何がという訳だ。」
「ですから、一聖女として危機に陥っている教国を救いたいのです。ほら見てくださいこの拳、助けたくてとても疼いてます。」
「普通の一聖女は拳を疼かせないぞ。」
王様が渋る。
他国の聖女が他所の国に行くのは外交的になんたらかんたら。俺に難しいことは分からない。
だから、逆に分かって欲しい。
疼く拳を目の前のテーブルにそっとドコンと置く。
部屋中に木片が飛散する。
あとでちゃんと掃除します。
「お願いします!一聖女として教国に行かせてください!困っている人達を救いたいのです!!」
俺は必死にお願いする。
見せつけるように握り潰して粉状になった木片をパラパラ落とすのも忘れない。
護衛も援護射撃とばかりに大槌を素振りしたりあらゆる関節をゴキゴキ鳴らしてくれている。
「う、うむ行ってよし!な、宰相?」
「は、はい!頑張ってください!!」
良かった…真摯なお願いが通じたよ。
俺、教国に行ってきます。
待ってろよ、勇者!
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