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出発前の
しおりを挟む長い夜を終えた次の日、昨晩は少々説教をやり過ぎた気がしてアイリス達に会うのが若干気まずい。
でも、あれは本物への冒涜だから皆にはそこらへんちゃんとして欲しかった。
それに本物を持つクロコをボロボロの雑巾にした反省もしてもらわないといけない、今はリリーの魔法で立派なモフモフに復活したものの心はまだ…。
昨日の説教で懲りてくれるといいな。
自室から階段を降りて恐る恐る配下達の様子を窺う。
「お、おはよう…。」
俺の挨拶にその場に居た配下達はケンゾウとクックを除いてビクッと身体を震わせる。
普通に傷付く。
もう怒っていないよ。
「お、おはようございますご主人様。昨晩は申し訳ございませんでした。」
「「「も、申し訳ございませんでした!!」」」
瞬時に俺の前へ参加者全員が集合して全力の土下座を見せてくれる。
やめて、昨日の正座でも心苦しかったのに女の子の土下座は更に心を締め付けちゃう。
「も、もういいから怒っていないよ。俺の態度も悪かったしね、でももう寝込みとケモ耳は襲っちゃ駄目だからね。」
「「「はい!!」」」
これで一応一件落着かな。
ちゃんと言えば配下達は分かってくれる俺はそう信じている…………まぁでもしばらくは運営の悪ふざけシリーズのトラップを設置しておこう。
ところでクックはどうして一緒になって襲いに来なかったのだろう?
参加しそうで怖かったのに。
「あらん馬鹿みたいに肉食女子で行ったら男は引いちゃうわ。出来る女(男)は一歩下がってお淑やかに待つの。そしたら、自然にアタシの元に来てくれるのよん。」
そうですか。
朝食の為に大広間へ。
エーロ、クロちゃん、カナデ3人のメイドが忙しく解放した配下全員分の朝食を大テーブルに運んでいる。
本来、主従関係を考えると俺が食べている間は皆近くで控えるのが通例。
けれど、それは却下してある。
学生時代に仲の良い友達が風邪で休んだ日、今更構築された輪の中に入れるはずもなく昼食を一人寂しく教室の隅で食べた思い出があるからね。
誰の思い出かまでは言わないよ。
哀しい思い出に涙を滲ませている間に朝食の準備完了。
クロコを除いた配下全員各々の席の前に立っている。
俺が促さない限り座るつもりはないみたい。
「じゃあ、皆座って食べよう。いただきます。」
俺の言葉を合図に食事の開始。
本日のメニューはご飯みそ汁卵焼きに見た目サンマなのに中身は鮭の塩焼きで和風の献立。
魚以外は地球産で構成されている為一人分あたりの単価はかなり高い、おそらく高スペックのノーパソが買える。
美味しい料理で忘れそうになるけど皆に王都へ出発予定日と連れて行くメンバーを伝えとかねば。
「皆、食事しながら聞いてね。王都観光の出発は明日から早速行こうと思います。それにあたって連れて行くメンバーを伝えるね。」
………ザワザワ。
あれ?
なんか空気が変わった?
さっきまでザ・日常って感じだったのにそこへ重苦しさが加わった。
「ご主人様、全員で行かないのですか?」
筆頭であるアイリスが代表して質問して来た。
「ん?この家の守りは一応必要でしょ。今回の旅行は俺を含めないで6人連れて行こうって思ってるけど…。」
空気が凍ったように静かに。
おかしな事を言っただろうか。
6人居たら戦力としても十分だろうし俺の寝込みを襲って来る可能性も減る。
どこにもおかしな所は無いと思う。
「ご、ご主人様、もう連れて行くメンバーはお決めになられたのですか?」
「ううん、これから皆で決めようって思ってたから決めていないよ。」
「なるほど…………でしたら、明日までに私達で決めても宜しいでしょうか?」
よく分からない提案。
俺の悩む必要が無くなるから良いか。
「いいよ。でも、クロコとココちゃんは絶対連れて行きます。」
旅のお供にケモ耳は必要。
移動中の疲れに癒やしを。
「やったのじゃあぁぁ!!!」
「「「…………………チッ。」」」
ガッツポーズしながら全力で喜ぶココちゃん。
そのお陰でユウにその他の女性陣の嫉妬の舌打ちが聞こえる事は無かった。
今後の話が終わればあとは明日の出発を待つだけ。
明日からの旅行が楽しみだ。
その夜、どういう訳か配下達による大乱闘が起きました。
それが原因か定かではありませんが、メンバーはクロコにココちゃん、アイリス、メシア、ヤオイ、リリーとなりました。
目覚めに顔アザだらけの血の涙を流すシルヴィアにとても恐怖しました。
怖かったです。
応援ありがとうございます!
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