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親子は見た

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「………父上。」

「………なんだ息子よ。」

「あれ見ました。」

「うん見た。」

のこのことやって来た竜殺しが選りすぐりの冒険者達によって殺される。
そう思い描いて窓から覗いていた王様と王子をやっている親子。

でも、現実は違った。
なにやらワチャワチャ揉めた後に目の前で起きたのは一瞬のうちの殲滅。
ギルドに結構な額の賞金を掛けたのに結果はこれ。

事前に冒険者達について教えてもらっていた。Aランク以上が殆どでわざわざSランクの方達も呼んだ。
確実に勝算はこちらにある。

そう確信してた………してたのに。

彼らが弱かったのかあの包帯を巻いた少女が強すぎたのか。

「父上マジでどうします?あれに勝てる可能性ってあります?」

「………。」

「父上?父上!聞いてます?」

「………はっ、ごめんちょっとお花畑で蝶々さんとお話しておったわ。」

「父上…。」

どうしよう。
馬鹿な親子の頭の中はこれ一色。


「あの少女なかなかやるみたいだねぇ。おそらくあの少女がリーダー格だろうねぇ。」

「「あ、貴方は!?」」

突如として馬鹿親子の背後から囁かれた言葉。
その声の主はあの殲滅を見ていたにも関わらず落ち着きをはらっている。

片目に切り傷ととてつもなく強者なオーラを放って強そう。
そんな彼はユウと同じく竜殺しの名誉を持っている。
仲間数名と挑んで倒した正真正銘のかませ…じゃなくて最強の人物、通り名は一眼の白狼ザング。
彼の言葉に親子は耳を傾ける。

「あれがリーダー?しかし、竜殺しはあそこの少年ではないのか?」

「いやいやぁ、あれはダミーだろうねぇ。ここいらでリーダーの実力を見せ付けたかったんだろうよ。」

観察力が鋭く見えて更に強者感溢れているも全くの的外れ。
彼がもし後々生き残ってこの時を思い出したら羞恥でそこの窓から飛び降りていただろう。

「確かにあれほどの威力を持つ者が誰かに従っている訳が無いか。しかし、あれに勝てるのか?」

フッと呆れたように笑う。
ちょっと王様イラッとするけど今ここで機嫌を損ねる訳にはいかない。

「勝てるかだって?愚問だよそれはねぇ。あの氷漬けさせた魔法はおそらくそう何度も使える魔法じゃないだろうよ。見せ付けてそれで俺達が怯えるとでも思ったんじゃないかねぇ。」

「ってことはもうあれは使えない?」

「そうだろうよ。切り札を見世物にするなんてありゃまだまだ青いね。切り札を失った今なら勝てるだろうねぇ。」

「「おぉ…。」」

度重なる的外れのお門違い。
でも、そんな事知る由もない馬鹿にとってはなんとも頼もしい。
あれだけビビっていた心も今ではすっかり復帰してしまった。

「ザング殿、どうかあの悪しき者共を倒して頂けないだろうか?」

親子仲良く頭を下げてお願いする。

「頼まなくてもやるつもりだよ。俺は強い奴と戦いたいからねぇ。」

目には圧倒的な自負心を宿らせていた。
どこにも負ける要素が無い、目がそう言っている。

「まぁ、あんたらは玉座でゆっくり座ってなよ。あの少女は俺の獲物だよ。」

ニヤリと笑うその笑みはどこまでも獰猛で真のかませにはもってこいの笑顔であった。

「じゃあ、行ってこようかねぇ。」

「「お願いしやっす!!」」

王族直々のいってらっしゃい。
なんて貴重の光景だろう。

死に行く彼にとって大変良い体験になったでしょう。

さようなら。

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