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年貢の収め時前

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普通の冒険者はまずなかなか入ることの無い部屋、セフィーレ王国での本部となる冒険者ギルドの総帥の仕事部屋。

そんなお部屋に呼ばれたのは今回の旅人冤罪事件の一端どころか3分の1以上を占めていた悪人ことサイモン。
普段なら偉そうに未来の優雅な自分を想像してニヤける彼も今は緊張と奥底から湧き出る怯えで顔を引きつらせていた。

「サイモン、ここに呼ばれた理由が分かるのぅ?」

ユウ達という未知なる強者の前ではただ立ち尽くし呆然とするしかなかったお爺ちゃんもこの場においては厳格にして荘厳を漂わす。

「…………はい。」

「それに私の馬鹿な身内のお願いあっさり受け入れてましたしね。」

「………はい。」

この場には更にもう一人居た。
ティアラ姫には姉が二人居る、その内の一人であるベアトリス。
妹の従者にこの惨状を聞いた時、母親と一緒になって頭を抱えたものだ。

「も、申し訳ございません。」

「サイモンよ、今更謝っても色々手遅れじゃ。上位を誇る冒険者達がお主の過ちで多くを亡くした。己の保身を欲しさに将来有望な者達を失ったのじゃぞ。」

「そうね、それに要らぬ戦闘で街並みの一部も瓦礫と化している場所もあるそうよ。どうしてくれるのかしら?」

「……申し訳ございません。責任を取りましてギルドマスターを退任致します。」

サイモンはこんな時でも考える。
これが最善。
辞めるだけで済む、ちゃんとこれまでに貯めておいた貯蓄もある。頂きへの道は外れてしまったが死ぬよりは良い。

愚かな者は思考が短絡に傾く。
だが、お爺ちゃん達は許さない。

「それだけでは足りないわ。私の従者からの話ではあの方達がこちらに来ているみたいよ。果たして貴方を退任させた程度で済ませてくれるのかしら。」

あの方達……あいつらだ、ことごとく俺の計画を潰した憎き怨敵。
けれど、俺が吠えてどうにか出来る相手ではない。

そんな奴らがここに迫って来ている。

「わ、私はどうなりますか?」

「分からんのう。お主の私財を全部渡して儂らからも謝罪金なりSランク冒険者として認定するなりで落ち着いてくれれば良いが…。」

「お、俺の私財ですか?」

「当然じゃ、儂にもお前の愚かな考えに気付けれんかった責任がある。しかし、お主もそれ相応の代償を払わんと相手方も納得せんじゃろう。」

「くっ…。」

自分のしでかした事でこうなったのに悔しがれる哀れな愚者。

「くっ…じゃないわよ。こっちだってかなりの謝罪金を払う羽目になったのよ。そちらもしっかり払いなさい。」

「は、はい…。」

ベアトリス姫の言葉に何も言い返せない。
大人しく私財を渡そう。
どうせ隠し金がある、それでしばらくは暮らしていけばいい。

そして、機を伺って侯爵様とまた画策していくんだ。今を耐えれば良い。

ここまでで彼は一切の反省の色が見られない。
終了の鐘はもうまもなく。

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