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『――番線に電車が参ります。黄色い線の…』
何度目のアナウンスだ。心の中でつぶやく。男は、無言で電車に乗り込む。
ガタンゴトンと、電車は揺れる。いつもの電車。いつのも路線。いつもの景色。
もう飽きたよ。心の中で悪態をつく。この男の名は、如月将生。どこにでもいる、特徴のないサラリーマン。どこにでもあるような会社に勤め、何でもない一人暮らしを行う。男はそんな生活に飽き飽きしている。
『ご乗車ありがとうございます。次は…』
何度目だよ!将生は心の中で怒鳴る。誰にも聞こえない、いくら言っても詮無い、悲しいつぶやき。
ふと、駅名を聞き逃していたことに気が付く。次は本当に俺の降りる駅か?終電の、スカスカな車両の中で、不安に駆られる。
【きさらぎ駅】。そんな単語がふとよぎった。きさらぎ駅とは、インターネット上で語られる、都市伝説の一つだ。最近は将生のような、くたびれたサラリーマンが遭遇する怪異になりつつある。将生的には、そんなものは存在せず、ただの疲労による勘違いだ、と結論が出ているが、今回は違う。彼は信じている。彼はこの生活に飽きているのだ。
異世界に行きたい。退屈な生活とおさらばしたいと、強く願う。それ故の、きさらぎ駅への期待。電車の減速を感じながら、ワクワクする将生。
将生は、オカルト掲示板に入り浸っている。最近はもっぱら異世界系。転生なんてものじゃなく、ただ迷い込むもの。この男が、どれだけこの世界にい飽きているか、スマホやpcの履歴を見れば、よくわかるだろう。
キー、と車輪が鳴り、電車はゆっくりとホームへ侵入する。将生は目を瞑っている。聞きなれた駅名が聞こえたような気がしたが、知ったことではない。目を開ければ異世界。呪文のように唱える男。プシューと音を立て扉があき、風が車両に吹く。
風を感じた将生は、一歩前へ進む。
パッと、目を開き、辺りを見渡す。
…いつもの駅だ。電車は、将生を置いて、発車する。
「あほくさ。」
大き目の声でつぶやき。家へ向かう。今日も残業で、日付はとっくに明日だ。
家路につきながら、スマホを取り出し、いじる。
通知が来ていた。同僚の八雲尺之助からのメッセージだ。
『お疲れ。もう家か?』
電車に乗っていた時に来たメッセージのようだ。
『今家向かってる』
すぐに既読がつき、返信が来る。
『お疲れお疲れ。俺家で飯食ってる』
『ああそう』
『疲れてんなー。それともなんかあった?』
彼女かよ。的確な推理に、思わず心の中でつぶやく。この男はつぶやきが多い。
『きさらぎ駅行きかけた』
すぐ話を盛る。実際はただ勝手に思い込んだだけだ。
『まじ?お前ホント好きだよな名前如月だし』
うるせえよ。メッセージとしては打ち込まない。心の中に留める。
『あーあ、異世界行きてえな』
『そんなお前に朗報。行こうぜ異世界』
URLが送られてくる。開くとそれは、旅館のホームページだった。
『どこが異世界だよ』
『このコンクリートジャングルに比べれば、十分異世界だろうよ。』
なかなか的を射ているじゃないか、心でつぶやきながら、返信する。
『いつ行く?』
『とりえず将生に合わせるけど。』
『じゃあ今週行くかあ』
『はっや』
『有給とるわ。取れなかったらやめてやるあんな会社』
『死んで異世界転生すればいいのに』
『勇気がないです』
他愛もない会話を繰り広げていたら、将生は家に着く。スマホをいじりながら夕食の準備。今日は冷凍パスタ。食べながらスマホ。
『旅館これどこ?』
『あー見てないなら見ないで。サプライズにする』
『お前のサプライズガバガバだな』
『よせやい』
『いやほめてねーよ』
時々、くすっと笑いながら、メッセージのやり取りを続ける。この他愛もないやり取りが、将生の退屈な生活を支えている。本人にその自覚はない。自覚がない故になおさら、退屈に感じるのだろう。
パスタを食い終わり、風呂に入ると告げる。
風呂から上がると、尺之助からの返信はなかった。寝たのだろう。将生もまた、眠気を感じベッドに入る。旅行楽しみだなとワクワクする男は、眠りにつく。URLを再び開くことは、決してなかった。
何度目のアナウンスだ。心の中でつぶやく。男は、無言で電車に乗り込む。
ガタンゴトンと、電車は揺れる。いつもの電車。いつのも路線。いつもの景色。
もう飽きたよ。心の中で悪態をつく。この男の名は、如月将生。どこにでもいる、特徴のないサラリーマン。どこにでもあるような会社に勤め、何でもない一人暮らしを行う。男はそんな生活に飽き飽きしている。
『ご乗車ありがとうございます。次は…』
何度目だよ!将生は心の中で怒鳴る。誰にも聞こえない、いくら言っても詮無い、悲しいつぶやき。
ふと、駅名を聞き逃していたことに気が付く。次は本当に俺の降りる駅か?終電の、スカスカな車両の中で、不安に駆られる。
【きさらぎ駅】。そんな単語がふとよぎった。きさらぎ駅とは、インターネット上で語られる、都市伝説の一つだ。最近は将生のような、くたびれたサラリーマンが遭遇する怪異になりつつある。将生的には、そんなものは存在せず、ただの疲労による勘違いだ、と結論が出ているが、今回は違う。彼は信じている。彼はこの生活に飽きているのだ。
異世界に行きたい。退屈な生活とおさらばしたいと、強く願う。それ故の、きさらぎ駅への期待。電車の減速を感じながら、ワクワクする将生。
将生は、オカルト掲示板に入り浸っている。最近はもっぱら異世界系。転生なんてものじゃなく、ただ迷い込むもの。この男が、どれだけこの世界にい飽きているか、スマホやpcの履歴を見れば、よくわかるだろう。
キー、と車輪が鳴り、電車はゆっくりとホームへ侵入する。将生は目を瞑っている。聞きなれた駅名が聞こえたような気がしたが、知ったことではない。目を開ければ異世界。呪文のように唱える男。プシューと音を立て扉があき、風が車両に吹く。
風を感じた将生は、一歩前へ進む。
パッと、目を開き、辺りを見渡す。
…いつもの駅だ。電車は、将生を置いて、発車する。
「あほくさ。」
大き目の声でつぶやき。家へ向かう。今日も残業で、日付はとっくに明日だ。
家路につきながら、スマホを取り出し、いじる。
通知が来ていた。同僚の八雲尺之助からのメッセージだ。
『お疲れ。もう家か?』
電車に乗っていた時に来たメッセージのようだ。
『今家向かってる』
すぐに既読がつき、返信が来る。
『お疲れお疲れ。俺家で飯食ってる』
『ああそう』
『疲れてんなー。それともなんかあった?』
彼女かよ。的確な推理に、思わず心の中でつぶやく。この男はつぶやきが多い。
『きさらぎ駅行きかけた』
すぐ話を盛る。実際はただ勝手に思い込んだだけだ。
『まじ?お前ホント好きだよな名前如月だし』
うるせえよ。メッセージとしては打ち込まない。心の中に留める。
『あーあ、異世界行きてえな』
『そんなお前に朗報。行こうぜ異世界』
URLが送られてくる。開くとそれは、旅館のホームページだった。
『どこが異世界だよ』
『このコンクリートジャングルに比べれば、十分異世界だろうよ。』
なかなか的を射ているじゃないか、心でつぶやきながら、返信する。
『いつ行く?』
『とりえず将生に合わせるけど。』
『じゃあ今週行くかあ』
『はっや』
『有給とるわ。取れなかったらやめてやるあんな会社』
『死んで異世界転生すればいいのに』
『勇気がないです』
他愛もない会話を繰り広げていたら、将生は家に着く。スマホをいじりながら夕食の準備。今日は冷凍パスタ。食べながらスマホ。
『旅館これどこ?』
『あー見てないなら見ないで。サプライズにする』
『お前のサプライズガバガバだな』
『よせやい』
『いやほめてねーよ』
時々、くすっと笑いながら、メッセージのやり取りを続ける。この他愛もないやり取りが、将生の退屈な生活を支えている。本人にその自覚はない。自覚がない故になおさら、退屈に感じるのだろう。
パスタを食い終わり、風呂に入ると告げる。
風呂から上がると、尺之助からの返信はなかった。寝たのだろう。将生もまた、眠気を感じベッドに入る。旅行楽しみだなとワクワクする男は、眠りにつく。URLを再び開くことは、決してなかった。
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