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有休がとれた。
将生と尺之助は、とある温泉地の旅館に来ている。温泉地には、各所に、赤い提灯がぶら下がっており、和風の異世界を彷彿とさせる景色だ。暗がりに赤い光、光が照らす湯気などは、異世界らしさを掻き立てている。
「ここがそうなの?」
「うん。ここがそう。」
二人が確認した旅館は、とても新しい感じがする。外観がとてもきれいで、いかにも新築というような感じだ。
「やけに新しいけど、なんなの?火事でもあって焼けて新築したの?」
「いや、ただ新しいだけ。先月オープン。」
「あー、この土地はもともとお墓でしたーみたいな。」
「いや、知らんけどそんなことないと思うよ。だって遠野リゾートだし。」
この旅館は先月オープンした、有名リゾートチェーン、「遠野リゾート」の施設である。
「はあ。」
「オカ板見過ぎだって。中入ろうぜ。」
この施設のテーマは「異世界」。確かに内装は、どこか浮世離れしている和風の空間だった。温泉地の景色とマッチしていてとても良い。
赤と黒を基調にしたロビーは、一階から四階まで吹き抜けになっており、ところどころを、黄色いライトがぼんやりてらしている。温泉の湯気だろうか、スモークだろうか。少し煙たい印象を受けるが、それもまた、異世界らしさを醸し出している。
和服に獣の耳、尻尾を生やしたコスプレイヤーが撮影をしている。撮影をせず、ただ歩いているだけであれば、雰囲気がぐっとアップするであろうが、しっかりとした機材を持つカメラマンが、一緒にいるとなると、アップどころかマイナスである。
「異世界みたいだな。」
にこやかに告げる尺之助に対し、コスプレイヤーとカメラマンを見た後の将生は、
「どこがだよ。」
と、冷たく言い放つ。これには流石の尺之助も、たまらずしょんぼりする。
二人は無言で部屋に向かう。長い廊下は、本当に異世界のようである。幾何学模様の格子のある壁は、ライトアップされ、きれいに輝き、足の下には、スモークがたかれ、どこからか甘いにおいや、スパイシーなにおいが漂ってくる。廊下の先には扉があり、それが自動で開くと、その向こうはエレベーターであった。
「おお。扉が開くまで異世界だったな。」
「すげーな。」
つい将生も、驚く程のクオリティである。
エレベーターに乗り込み、ボタンを押すと、扉が閉まり、上昇し始める。エレベーターは、扉の向かい側がガラス張りになっており、上昇とともに旅館内の景色が見えてくる。
「おお。」
感動し、それが声に出る将生。
「さすが遠野。ひねくれものの心を溶かすとは。」
将生を茶化す尺之助。
「よせやい。」
「何がだよ。」
ピンポン、と音が鳴り、エレベーターの扉が開く。
スタッフが待っており、部屋へ案内をする。案内された部屋はなかなか豪華であった。
スタッフが去ると、尺之助が言う。
「流石の部屋ですね。」
「高かったもんなー。」
一般的なサラリーマンにとっては、少々お高めの料金であったが、たまには良いよなと、口をそろえて笑う。
風呂へ行くことにした二人。旅館といえば何といっても風呂がメインである。
浴場に到着すると、そこはとても開放的な空間であった。立ち上る湯気は、相変わらず、ライトに照らされ、おぼろげに辺りを照らし続けている。
硫黄の香りと、香辛料の様なにおいが立ち込める。このにおいもまた、この施設を異世界らしくする重要な要素なのだろうと、将生は推測する。
湯船に浸かりながら、談笑する。これもまた、旅行の醍醐味である。
一通り、談笑と、景色と、温泉を堪能して湯から上がる。
いい湯だったと、何度も繰り返しながら、部屋に戻る。部屋では、浴場での会話の続きをしようと歩きながら言う二人。しかし、仲のいい二人は、部屋への帰路でも、会話が白熱する。
「だから、行けないんだよきさらぎ駅。何度やっても。この前は行けると思っちゃったけどさ。そもそも存在しないんだって。」
「いやいや、存在はするって。」
「毎日、電車に乗ってる俺が行ったことないんだぜ?いい感じにくたびれててさ。」
「電車で寝た?」
「寝たら着くのは、きさらぎ駅じゃなくて、終点。」
「あははは。そんなんだからいけないんだよ。」
そんな会話をしながら、二人は部屋につく。ついたのだが、白熱した会話に区切りがつかず、話し込んでしまう。
ふと、湯冷めによる寒気を感じた尺之助は、部屋の扉に手をかける。それがきっかけで会話に区切りがつく。
尺之助が扉を開ける。すると、部屋の中から、風が吹いてきた。まるで、室内から屋外に出たような、そんな風がふく。
「ん?」
尺之助は、疑問に思う。廊下と部屋との気圧の差で、空気が動くのはよくあることであるが、今回は様子が違う。風が何度も吹くのである。
電気をつけていない部屋は、扉の向こうで、黒く口を開けている。風が吹くたびに、ゴーと音が鳴るさまは、広大な空間が広がっているようようである。
とりあえず電気をつけようと壁に手を伸ばす。するとそこには、壁がない。
「おっと。」
スイッチを押そうと体重をかけた尺之助は、そこに壁がなかったために、倒れこんでしまいそうになりながら、扉の向こうに吸い込まれる。
「おい。大丈夫かよ。」
倒れこむように入っていった尺之助を心配して、声をかける将生は、部屋の外から声をかけるが、部屋の向こうにいるはずの尺之助の返事はない。将生は、壁がなかったことを知らないため、何が起こったのか理解できていない。
「おいおい。大丈夫か。」
返事がないのを心配して、急いで将生も部屋に入る。
そこには、おかしな空間が広がっていた。
「は?なんだよここ。」
部屋にしては広大すぎる、謎の空間を歩きながら、尺之助を探す。
「おーい、将生」
遠くから、尺之助が呼んでいる。そこまでこの部屋は広くないはずなのに、尺之助はいったいどこから呼んでいるのだろう。ここはいったいどこなのだろう。
理解が追い付かない将生は、混乱しながら声のする方へ歩く。目はまだ、暗がりに慣れていない。
将生と尺之助は、とある温泉地の旅館に来ている。温泉地には、各所に、赤い提灯がぶら下がっており、和風の異世界を彷彿とさせる景色だ。暗がりに赤い光、光が照らす湯気などは、異世界らしさを掻き立てている。
「ここがそうなの?」
「うん。ここがそう。」
二人が確認した旅館は、とても新しい感じがする。外観がとてもきれいで、いかにも新築というような感じだ。
「やけに新しいけど、なんなの?火事でもあって焼けて新築したの?」
「いや、ただ新しいだけ。先月オープン。」
「あー、この土地はもともとお墓でしたーみたいな。」
「いや、知らんけどそんなことないと思うよ。だって遠野リゾートだし。」
この旅館は先月オープンした、有名リゾートチェーン、「遠野リゾート」の施設である。
「はあ。」
「オカ板見過ぎだって。中入ろうぜ。」
この施設のテーマは「異世界」。確かに内装は、どこか浮世離れしている和風の空間だった。温泉地の景色とマッチしていてとても良い。
赤と黒を基調にしたロビーは、一階から四階まで吹き抜けになっており、ところどころを、黄色いライトがぼんやりてらしている。温泉の湯気だろうか、スモークだろうか。少し煙たい印象を受けるが、それもまた、異世界らしさを醸し出している。
和服に獣の耳、尻尾を生やしたコスプレイヤーが撮影をしている。撮影をせず、ただ歩いているだけであれば、雰囲気がぐっとアップするであろうが、しっかりとした機材を持つカメラマンが、一緒にいるとなると、アップどころかマイナスである。
「異世界みたいだな。」
にこやかに告げる尺之助に対し、コスプレイヤーとカメラマンを見た後の将生は、
「どこがだよ。」
と、冷たく言い放つ。これには流石の尺之助も、たまらずしょんぼりする。
二人は無言で部屋に向かう。長い廊下は、本当に異世界のようである。幾何学模様の格子のある壁は、ライトアップされ、きれいに輝き、足の下には、スモークがたかれ、どこからか甘いにおいや、スパイシーなにおいが漂ってくる。廊下の先には扉があり、それが自動で開くと、その向こうはエレベーターであった。
「おお。扉が開くまで異世界だったな。」
「すげーな。」
つい将生も、驚く程のクオリティである。
エレベーターに乗り込み、ボタンを押すと、扉が閉まり、上昇し始める。エレベーターは、扉の向かい側がガラス張りになっており、上昇とともに旅館内の景色が見えてくる。
「おお。」
感動し、それが声に出る将生。
「さすが遠野。ひねくれものの心を溶かすとは。」
将生を茶化す尺之助。
「よせやい。」
「何がだよ。」
ピンポン、と音が鳴り、エレベーターの扉が開く。
スタッフが待っており、部屋へ案内をする。案内された部屋はなかなか豪華であった。
スタッフが去ると、尺之助が言う。
「流石の部屋ですね。」
「高かったもんなー。」
一般的なサラリーマンにとっては、少々お高めの料金であったが、たまには良いよなと、口をそろえて笑う。
風呂へ行くことにした二人。旅館といえば何といっても風呂がメインである。
浴場に到着すると、そこはとても開放的な空間であった。立ち上る湯気は、相変わらず、ライトに照らされ、おぼろげに辺りを照らし続けている。
硫黄の香りと、香辛料の様なにおいが立ち込める。このにおいもまた、この施設を異世界らしくする重要な要素なのだろうと、将生は推測する。
湯船に浸かりながら、談笑する。これもまた、旅行の醍醐味である。
一通り、談笑と、景色と、温泉を堪能して湯から上がる。
いい湯だったと、何度も繰り返しながら、部屋に戻る。部屋では、浴場での会話の続きをしようと歩きながら言う二人。しかし、仲のいい二人は、部屋への帰路でも、会話が白熱する。
「だから、行けないんだよきさらぎ駅。何度やっても。この前は行けると思っちゃったけどさ。そもそも存在しないんだって。」
「いやいや、存在はするって。」
「毎日、電車に乗ってる俺が行ったことないんだぜ?いい感じにくたびれててさ。」
「電車で寝た?」
「寝たら着くのは、きさらぎ駅じゃなくて、終点。」
「あははは。そんなんだからいけないんだよ。」
そんな会話をしながら、二人は部屋につく。ついたのだが、白熱した会話に区切りがつかず、話し込んでしまう。
ふと、湯冷めによる寒気を感じた尺之助は、部屋の扉に手をかける。それがきっかけで会話に区切りがつく。
尺之助が扉を開ける。すると、部屋の中から、風が吹いてきた。まるで、室内から屋外に出たような、そんな風がふく。
「ん?」
尺之助は、疑問に思う。廊下と部屋との気圧の差で、空気が動くのはよくあることであるが、今回は様子が違う。風が何度も吹くのである。
電気をつけていない部屋は、扉の向こうで、黒く口を開けている。風が吹くたびに、ゴーと音が鳴るさまは、広大な空間が広がっているようようである。
とりあえず電気をつけようと壁に手を伸ばす。するとそこには、壁がない。
「おっと。」
スイッチを押そうと体重をかけた尺之助は、そこに壁がなかったために、倒れこんでしまいそうになりながら、扉の向こうに吸い込まれる。
「おい。大丈夫かよ。」
倒れこむように入っていった尺之助を心配して、声をかける将生は、部屋の外から声をかけるが、部屋の向こうにいるはずの尺之助の返事はない。将生は、壁がなかったことを知らないため、何が起こったのか理解できていない。
「おいおい。大丈夫か。」
返事がないのを心配して、急いで将生も部屋に入る。
そこには、おかしな空間が広がっていた。
「は?なんだよここ。」
部屋にしては広大すぎる、謎の空間を歩きながら、尺之助を探す。
「おーい、将生」
遠くから、尺之助が呼んでいる。そこまでこの部屋は広くないはずなのに、尺之助はいったいどこから呼んでいるのだろう。ここはいったいどこなのだろう。
理解が追い付かない将生は、混乱しながら声のする方へ歩く。目はまだ、暗がりに慣れていない。
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