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僕が十二歳の時にお母さんが癌で、十三歳の時に鳶職だったお父さんは転落事故、お姉ちゃんの旦那さんは一年前交通事故で帰らぬ人となった。
そして今朝、お姉ちゃんも交通事故に遭って息を引き取った。
「ママ、ママ、起きてよ。……ねぇ、ママもパパみたいにいなくなっちゃうの?」
「……っ」
パパを亡くした経験がある旭は死というものに対して理解が早かった。でも僕は何て言葉をかけたらいいのかわからない。
家族の縁が薄かったのかな。こんなに僕らに不幸を与える神様は、本当に意地悪なんだなって思う。
生気のない顔に、長いウェーブの金髪。
葬儀社に乗って自宅に帰ってきた樹林朱音。僕のお姉ちゃん。
そして冷たくなったお姉ちゃんを起こそうとしているのは、お姉ちゃんの忘れ形見になった旭、五歳男児。
旭は懸命にお姉ちゃんを起こそうとしていて、その姿に胸が苦しくなり、涙がじわりと出てきた。
「姉ちゃん……僕、どうしたらいいの……?」
旭と僕――近藤瑠偉だけがこの世界に残されてしまった。
親戚はいざこざがあってお姉ちゃんところも旦那さんも絶縁しており頼れない。
姉ちゃんさ、旦那さん天国に行って寂しかったのかな。でも旭はまだ五歳だよ。これからもまだ母親が必要なんだよ。
「お姉ちゃん……戻ってきてよ」
僕は旭が大好きだし大切だけれど、子ども一人を育てる自信がない。誰を頼っていいかもわからず、僕は祈るように両手をぎゅっと組んで、心の底からお姉ちゃんに助けを求める。
すると、ほわっと周りの空気が温かくなった気がした。
「……?」
『瑠偉そんな泣き言言わないの!わかってるって。姉ちゃんが何とかしてあげるから』
僕の名前を聴き慣れた声が呼んだ。
「姉ちゃん?!」
「ママの声だ!」
俺は声が聞こえた上方に顔を向けた。けれどそこには何も見えない。でも旭も同じように上を見て、ママと言っているから空耳じゃないことを確信した。
『神様にお願いしたのよ。私を生き返らせてって。でもそれは出来ないってキッパリ言われちゃってさ~。だから私はそれは納得できない!って神様に食い下がったの』
陽気に言う姉の声に、祈るように組んでいた手を緩ませた。
生気溌溂な姉が、神々しい神様に言っているのが簡単に想像できて、泣き笑いのような変な顔になってしまう。
「それで……神様はなんて言ったの?」
『それがさぁ~。地球はね、少子化に伴って転生待ちがめちゃくちゃ多くて、私が転生するのは五十年後とか言われたのよ。でも五十年後とかあり得ないでしょ?だって旭、おじいちゃんになっちゃうじゃん!おじいちゃんの姿も見たいけどさ、これからめちゃくちゃ可愛くなるのにそれが見れないとか嫌でしょ!だから認めない、無理なら他の方法はないかって聞いたの。そしたらね、』
お姉ちゃんの無理難題を神様が困った顔で聞いているのが何となくイメージつく。続きが気になって「そしたら?」って催促した。
『異世界だったらすぐ転生出来るよって言われたの。記憶つきでね』
「異……世界?」
姉の発言に頭を捻らせている間に、見上げていた僕らは気づかなかったけれど、俺と旭はゆっくり足元から光の粒になって姿が消えていた。
『しかも瑠偉も旭も連れて行っていいって!それならこの話に乗らないわけに行かないじゃん?ぶっちゃけ日本に思い入れがあるわけじゃないし、家族と一緒ならどこでもいいでしょ?私は死んで肉体がないから、また赤ちゃんから始まるんだけど、二人はそのまま転移していいって。ってかさ、私が赤ちゃんからってことは一番年下ってことなんだよ?ぷははっ、めっちゃウケる!旭のママで、瑠偉のお姉ちゃんなのに一番下って、若返りすぎでしょ!』
「きゃはは!ママ笑ってる!」
能天気な姉の笑い声が上から降ってくる。
旭は多分わかっていないけど、姉の笑い声に反応してすごく楽しそうだ。僕もハハ……って乾いた笑いが思わず出る。
「じゃあ、俺たちはこの身体で異世界に行くの?でもどうやって?」
『さぁ?バババーって神様の力で何とかするんじゃない?』
お姉ちゃん、適当だなぁ。
『あ、そろそろあっちの世界と繋がるって神様言ってるわ』
「えっ!もう?!」
『瑠偉、旭と離れないようにギュッて抱きしめて!』
僕は慌てて旭を包み込むように抱き締める。
「こ、こう?」
『うんうん、バッチリ!』
旭を見ると身体の下半分が消えかけていた。驚いて自分の身体を見ると、僕の身体も同じように消えている。
いつの間に。
すごい。よくわかんないけどすごいよ神様。
『眩しくなるらしいよ!瑠偉、旭の目を覆ってあげて!』
「う、うん!」
しっかりと抱き締めたまま、腕をクロスして旭の目を隠し、自分もギュッと目を瞑ると、強い閃光に包まれたのがわかった。
そして今朝、お姉ちゃんも交通事故に遭って息を引き取った。
「ママ、ママ、起きてよ。……ねぇ、ママもパパみたいにいなくなっちゃうの?」
「……っ」
パパを亡くした経験がある旭は死というものに対して理解が早かった。でも僕は何て言葉をかけたらいいのかわからない。
家族の縁が薄かったのかな。こんなに僕らに不幸を与える神様は、本当に意地悪なんだなって思う。
生気のない顔に、長いウェーブの金髪。
葬儀社に乗って自宅に帰ってきた樹林朱音。僕のお姉ちゃん。
そして冷たくなったお姉ちゃんを起こそうとしているのは、お姉ちゃんの忘れ形見になった旭、五歳男児。
旭は懸命にお姉ちゃんを起こそうとしていて、その姿に胸が苦しくなり、涙がじわりと出てきた。
「姉ちゃん……僕、どうしたらいいの……?」
旭と僕――近藤瑠偉だけがこの世界に残されてしまった。
親戚はいざこざがあってお姉ちゃんところも旦那さんも絶縁しており頼れない。
姉ちゃんさ、旦那さん天国に行って寂しかったのかな。でも旭はまだ五歳だよ。これからもまだ母親が必要なんだよ。
「お姉ちゃん……戻ってきてよ」
僕は旭が大好きだし大切だけれど、子ども一人を育てる自信がない。誰を頼っていいかもわからず、僕は祈るように両手をぎゅっと組んで、心の底からお姉ちゃんに助けを求める。
すると、ほわっと周りの空気が温かくなった気がした。
「……?」
『瑠偉そんな泣き言言わないの!わかってるって。姉ちゃんが何とかしてあげるから』
僕の名前を聴き慣れた声が呼んだ。
「姉ちゃん?!」
「ママの声だ!」
俺は声が聞こえた上方に顔を向けた。けれどそこには何も見えない。でも旭も同じように上を見て、ママと言っているから空耳じゃないことを確信した。
『神様にお願いしたのよ。私を生き返らせてって。でもそれは出来ないってキッパリ言われちゃってさ~。だから私はそれは納得できない!って神様に食い下がったの』
陽気に言う姉の声に、祈るように組んでいた手を緩ませた。
生気溌溂な姉が、神々しい神様に言っているのが簡単に想像できて、泣き笑いのような変な顔になってしまう。
「それで……神様はなんて言ったの?」
『それがさぁ~。地球はね、少子化に伴って転生待ちがめちゃくちゃ多くて、私が転生するのは五十年後とか言われたのよ。でも五十年後とかあり得ないでしょ?だって旭、おじいちゃんになっちゃうじゃん!おじいちゃんの姿も見たいけどさ、これからめちゃくちゃ可愛くなるのにそれが見れないとか嫌でしょ!だから認めない、無理なら他の方法はないかって聞いたの。そしたらね、』
お姉ちゃんの無理難題を神様が困った顔で聞いているのが何となくイメージつく。続きが気になって「そしたら?」って催促した。
『異世界だったらすぐ転生出来るよって言われたの。記憶つきでね』
「異……世界?」
姉の発言に頭を捻らせている間に、見上げていた僕らは気づかなかったけれど、俺と旭はゆっくり足元から光の粒になって姿が消えていた。
『しかも瑠偉も旭も連れて行っていいって!それならこの話に乗らないわけに行かないじゃん?ぶっちゃけ日本に思い入れがあるわけじゃないし、家族と一緒ならどこでもいいでしょ?私は死んで肉体がないから、また赤ちゃんから始まるんだけど、二人はそのまま転移していいって。ってかさ、私が赤ちゃんからってことは一番年下ってことなんだよ?ぷははっ、めっちゃウケる!旭のママで、瑠偉のお姉ちゃんなのに一番下って、若返りすぎでしょ!』
「きゃはは!ママ笑ってる!」
能天気な姉の笑い声が上から降ってくる。
旭は多分わかっていないけど、姉の笑い声に反応してすごく楽しそうだ。僕もハハ……って乾いた笑いが思わず出る。
「じゃあ、俺たちはこの身体で異世界に行くの?でもどうやって?」
『さぁ?バババーって神様の力で何とかするんじゃない?』
お姉ちゃん、適当だなぁ。
『あ、そろそろあっちの世界と繋がるって神様言ってるわ』
「えっ!もう?!」
『瑠偉、旭と離れないようにギュッて抱きしめて!』
僕は慌てて旭を包み込むように抱き締める。
「こ、こう?」
『うんうん、バッチリ!』
旭を見ると身体の下半分が消えかけていた。驚いて自分の身体を見ると、僕の身体も同じように消えている。
いつの間に。
すごい。よくわかんないけどすごいよ神様。
『眩しくなるらしいよ!瑠偉、旭の目を覆ってあげて!』
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