転生先は乙女ゲーム？

異世界転生ってやつかしら？

　私は、物心ついた頃からよくわからない記憶があった。それが、いつのことなのか、どれぐらい前のものなのかはよくわからない。

　ある時、家族でピクニックに出かけたときに、白い大きな野鳥を見かけて、首が長かったものだから「ツルみたいでキレイね。」と言ったら、両親やアル、使用人達がみんな首を傾げていたから、なんでみんなわからないんだろう？と不思議でしょうがなかった。
　そんなとき、お父様が両肩を掴まれ、すっごく笑顔なのに目をギラギラさせながら「シィ、それは、誰に、教えて、もらったんだい？」と聞いてきたことがあった。その時に感じた。これはあんまり人に言っちゃいけないんだと。

　そして、家庭教師から隣国や異国のことを学んだときに気づいてしまった。


“この記憶はこの世界のものじゃない”


　どの国も鉄の塊は走らないし、空も飛ばない。走るのは馬やロバだし、今のところ空を飛ぶ予定もなさそうだ。

　この世界のものじゃないなら、あまり喋ることじゃないわよね、お父様に感謝だわ。
　今の記憶と前の記憶は曖昧だけど、少しずつ減らしていった。

　前世のものかもしれないと考えて、自分のことを思い出そうとしたのだけど、うっすらとしか思い出せなくて、早々に諦めたわ。たしか、前世の世界でこういった転生ものの小説や漫画がたくさんあったから、もしかしたら、なにかの世界に転生したのかも！？
　なんて考えたけど、シエンナ・オッズレンという名前に全く聞き覚えがない。
　
　ん～でもな～、転生ものの小説はいくつか読んでいたけど、元になるような恋愛小説はあまり読んでいないし、乙女ゲームはやったことがないし…私が知らないだけかもしれない可能性があるのよね。

　乙女ゲームの世界だったらどうしよう！？ヒロイン？・・・は、ないか。大体ヒロインのスタートの地位はあまり高くないものが多いから違うわ。
　悪役令嬢？う～ん、ありえるわ。公爵令嬢だし、見目も悪くないと思うし。

はっ！ってことはアルは攻略対象者ってこと！？

　・・・ありえるわ。悪役令嬢の兄弟って攻略対象者になりがちよね。アルの容姿はとてもかわいいし、成長すればとても綺麗な顔立ちになると思うわ。もしかして、私いじめなければならなかったのかしら？？

　ん～でも、モブは？公爵家はうちだけじゃないし、他の公爵家にも、たしか令嬢がいたわ。第一王子の婚約者候補なんて公爵家の娘だったら必然的にさせられてしまうし。モブの可能性も捨てられないわ。

　そうだとしたら、いじめる必要もない訳だし。とりあえず、第一王子の婚約者にならないようにすれば大丈夫よね！候補には上がってしまうでしょうけど、婚約者になりたい令嬢なんてたくさんいらっしゃるし、楽勝ね♪

　そもそも、この世界が恋愛小説や乙女ゲームの世界と決まったわけじゃないわ。イケメンに気をつければ大丈夫！！さっ考えるのはもうやめて寝ましょ♪