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6話 11月28日(3)
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砂時計が見える条件は1つ。
その人物が1ヶ月以内に何らかの原因で死ぬということ。
つまり、深雪の寿命はあと1ヶ月。1ヶ月後、深雪は死ぬ。
深雪は病気を抱えているわけではなさそうだった。ということは、事故か、自殺か、あるいは魂を気に入った別の死神が深雪の魂を狙っていて、殺しに来るか。
この数日深雪と一緒にいたが、深雪はいつも笑顔で、自殺をするようにはレティには見えなかった。深雪の心の声までは分からないが、自殺の可能性は一旦排除だ。
(なら、事故で死ぬか、私以外の死神が来るか)
レティは考えた。深雪がずぶ濡れのレティを心配している。
「レティ?」
深雪が声をかけても反応は返ってこなかった。深雪は仕方なしに、温かい飲み物を用意することにした。研究室には電気ケトルが1つ、置いてある。もうプラグは抜いてしまったが、深雪はそれを再び差し込み2人分の水を入れた。お湯が沸くまでにティーバッグを準備する。深雪は部屋の奥の小さな戸棚からティーバックとカップを2つずつ取り出して、ケトルの横に置く。
(カップ、2つあってよかった)
お湯が沸いて、ケトルからパチン、という音がした。それをそっと持ち上げ、カップに注いでいく。いい香りがしてきて、深雪はティーバックをカップから取り出しゴミ箱に捨てた。
ちらりとレティを見やる。
(まだ何か考えてる)
レティはドアの前に立ち尽くしたまま、少しも動いていないようだった。遠目から表情を覗き込むと、何か真剣に考えを巡らせているようだ。
深雪はカップを2つ持ち、それをローテーブルに置いた。
「レティ。……レティ?」
レティが顔を上げた。そこで初めて深雪が自分から離れていたことに気付いた様子だった。
「先生……」
「レティ、寒いでしょう。ほら、あったかい紅茶入れたから、一緒に飲もう?」
「あ……ええ」
レティは深雪の前の席に腰を下ろした。だが何を思ったのか、すぐに立ち上がった。
「レティ?」
「服、濡れてるから」
「大丈夫だよ。ほら、座って。レティが座らないなら、私も立ったまま飲むことにするよ」
「……意地悪ね」
「レティが頑固なの。私が話しかけても全く反応しないし、今日は授業出てくれなかったし?」
「考えたいことがあったのよ」
「分かってる」
不毛な会話。でも今のレティにはとてつもなく落ち着く時間だった。
目の前に深雪がいる。言葉を投げかければ、返ってくる。それがどれだけ幸せなことか。
(これかもずっとこうしていたい)
「レティ、明日は来てくれる?」
「ええ。もちろん」
「よかった。私はもうレティの姿が見えない授業なんて、やりたくないよ」
「先生がそんなこと言っていいの?」
「ここだけの内緒」
ふふ、と2人は笑った。深雪は入れたての紅茶に口をつける。
(やっと笑った。ドアの前に立っていた時は、一瞬お化けか何かかと思ったけど。今は少しいつものレティに戻ってきたかな)
彼女が何を抱えているのかは相変わらず分からないが、深雪は少しでも彼女の苦悩を和らげたいと思った。少しでも、それを忘れられるようにと。
砂時計は、サラサラと留まることなく落ち続けている───。
その人物が1ヶ月以内に何らかの原因で死ぬということ。
つまり、深雪の寿命はあと1ヶ月。1ヶ月後、深雪は死ぬ。
深雪は病気を抱えているわけではなさそうだった。ということは、事故か、自殺か、あるいは魂を気に入った別の死神が深雪の魂を狙っていて、殺しに来るか。
この数日深雪と一緒にいたが、深雪はいつも笑顔で、自殺をするようにはレティには見えなかった。深雪の心の声までは分からないが、自殺の可能性は一旦排除だ。
(なら、事故で死ぬか、私以外の死神が来るか)
レティは考えた。深雪がずぶ濡れのレティを心配している。
「レティ?」
深雪が声をかけても反応は返ってこなかった。深雪は仕方なしに、温かい飲み物を用意することにした。研究室には電気ケトルが1つ、置いてある。もうプラグは抜いてしまったが、深雪はそれを再び差し込み2人分の水を入れた。お湯が沸くまでにティーバッグを準備する。深雪は部屋の奥の小さな戸棚からティーバックとカップを2つずつ取り出して、ケトルの横に置く。
(カップ、2つあってよかった)
お湯が沸いて、ケトルからパチン、という音がした。それをそっと持ち上げ、カップに注いでいく。いい香りがしてきて、深雪はティーバックをカップから取り出しゴミ箱に捨てた。
ちらりとレティを見やる。
(まだ何か考えてる)
レティはドアの前に立ち尽くしたまま、少しも動いていないようだった。遠目から表情を覗き込むと、何か真剣に考えを巡らせているようだ。
深雪はカップを2つ持ち、それをローテーブルに置いた。
「レティ。……レティ?」
レティが顔を上げた。そこで初めて深雪が自分から離れていたことに気付いた様子だった。
「先生……」
「レティ、寒いでしょう。ほら、あったかい紅茶入れたから、一緒に飲もう?」
「あ……ええ」
レティは深雪の前の席に腰を下ろした。だが何を思ったのか、すぐに立ち上がった。
「レティ?」
「服、濡れてるから」
「大丈夫だよ。ほら、座って。レティが座らないなら、私も立ったまま飲むことにするよ」
「……意地悪ね」
「レティが頑固なの。私が話しかけても全く反応しないし、今日は授業出てくれなかったし?」
「考えたいことがあったのよ」
「分かってる」
不毛な会話。でも今のレティにはとてつもなく落ち着く時間だった。
目の前に深雪がいる。言葉を投げかければ、返ってくる。それがどれだけ幸せなことか。
(これかもずっとこうしていたい)
「レティ、明日は来てくれる?」
「ええ。もちろん」
「よかった。私はもうレティの姿が見えない授業なんて、やりたくないよ」
「先生がそんなこと言っていいの?」
「ここだけの内緒」
ふふ、と2人は笑った。深雪は入れたての紅茶に口をつける。
(やっと笑った。ドアの前に立っていた時は、一瞬お化けか何かかと思ったけど。今は少しいつものレティに戻ってきたかな)
彼女が何を抱えているのかは相変わらず分からないが、深雪は少しでも彼女の苦悩を和らげたいと思った。少しでも、それを忘れられるようにと。
砂時計は、サラサラと留まることなく落ち続けている───。
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