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8話 12月5日
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レティが深雪を見守るようになって数日、これといって深雪の周りに異変は起こっていない。
「あと半月ちょっと。もし、砂時計の砂が落ちきっても先生が生きていたら、あの砂時計は消えてくれるのかしら」
死神にとって砂時計の砂が落ちる時が狩りの始まり、人間にとっては生の終わりだ。
砂時計が寿命の絶対的数値だとすると、それを超えてもなお人間が生き続けることはできるのだろうか。当たり前だが、前例は無い。
レティは通勤時の深雪をマンションの10階から見下ろす。いつものようにデスロードを手に持ち、羽を広げ飛び立った時、嫌な気配を感じた。深雪が車を出す。走り出した方向を見つめるも、レティは空中に浮かび動かなかった。
「行かねぇのか?」
太くて長い弦を弾いたような、くぐもった声がレティに訊ねた。レティは深雪を見つめたまま、背後から聞こえた声に応えた。
「あなたがいなくなったらね」
レティの数メートル後ろで、空間が割れるように開いた。そこから出てきたのは、銀のマントに身を包み、銀の仮面で目もとを隠した者。これもまた、死神だった。
「どうして居るの?ヘラ」
ヘラと呼ばれた死神は、人間の女の体をしていた。ヘラは嗤うように鼻を鳴らし、仮面の奥の銀色の双眸を光らせた。
「お前が何か怪しい動きをしていると本部から通達が来た。俺のところにだ。それで一度様子を見てこいと言われたから渋々来てやったんだ。俺が来たくて来たわけじゃねぇ」
ヘラは低く唸るような声で言ったが、レティは彼女を一瞥しただけで、深雪が行ってしまった方向をただ見つめている。
その態度にヘラは軽く舌打ちした。
「お前、何か企んでるんじゃないだろうな」
「別に、何も」
「その言葉信じていいんだな?」
2人の間に冷たい風がふきぬける。
「レティお前、視られているぞ」
レティは何も言わなかった。ヘラは再び舌を打ち、頭をかいた。
レティとヘラは同じ時期に初めて人間の魂を、喰らった為、何かと一緒にされることが多かった。仲が良かったわけではなかったが、お互いに存在を認め合うくらいには心を許していた。その彼女が言っている。
全死神を統率する団体本部に、監視されていると。危険因子と見なされている、そう告げてきた。
「分かっているわ。この前から気配がしてたもの」
「チッ。知ってたのかよ」
ヘラはレティの視線を追って、件の深雪の車を一瞥した。
「何考えてんのか知らねえが、俺に面倒かけんな。じゃあな。警告はしたぞ」
ヘラは最後にそう告げて、その長い爪で宙を切り、その中に消えていった。
「ごめんね、ヘラ」
レティはフードを被り直し、再び羽を広げる。ここ数日で把握した深雪の通勤ルート。レティはもう見えなくなった深雪を追って飛び出した。
「あと半月ちょっと。もし、砂時計の砂が落ちきっても先生が生きていたら、あの砂時計は消えてくれるのかしら」
死神にとって砂時計の砂が落ちる時が狩りの始まり、人間にとっては生の終わりだ。
砂時計が寿命の絶対的数値だとすると、それを超えてもなお人間が生き続けることはできるのだろうか。当たり前だが、前例は無い。
レティは通勤時の深雪をマンションの10階から見下ろす。いつものようにデスロードを手に持ち、羽を広げ飛び立った時、嫌な気配を感じた。深雪が車を出す。走り出した方向を見つめるも、レティは空中に浮かび動かなかった。
「行かねぇのか?」
太くて長い弦を弾いたような、くぐもった声がレティに訊ねた。レティは深雪を見つめたまま、背後から聞こえた声に応えた。
「あなたがいなくなったらね」
レティの数メートル後ろで、空間が割れるように開いた。そこから出てきたのは、銀のマントに身を包み、銀の仮面で目もとを隠した者。これもまた、死神だった。
「どうして居るの?ヘラ」
ヘラと呼ばれた死神は、人間の女の体をしていた。ヘラは嗤うように鼻を鳴らし、仮面の奥の銀色の双眸を光らせた。
「お前が何か怪しい動きをしていると本部から通達が来た。俺のところにだ。それで一度様子を見てこいと言われたから渋々来てやったんだ。俺が来たくて来たわけじゃねぇ」
ヘラは低く唸るような声で言ったが、レティは彼女を一瞥しただけで、深雪が行ってしまった方向をただ見つめている。
その態度にヘラは軽く舌打ちした。
「お前、何か企んでるんじゃないだろうな」
「別に、何も」
「その言葉信じていいんだな?」
2人の間に冷たい風がふきぬける。
「レティお前、視られているぞ」
レティは何も言わなかった。ヘラは再び舌を打ち、頭をかいた。
レティとヘラは同じ時期に初めて人間の魂を、喰らった為、何かと一緒にされることが多かった。仲が良かったわけではなかったが、お互いに存在を認め合うくらいには心を許していた。その彼女が言っている。
全死神を統率する団体本部に、監視されていると。危険因子と見なされている、そう告げてきた。
「分かっているわ。この前から気配がしてたもの」
「チッ。知ってたのかよ」
ヘラはレティの視線を追って、件の深雪の車を一瞥した。
「何考えてんのか知らねえが、俺に面倒かけんな。じゃあな。警告はしたぞ」
ヘラは最後にそう告げて、その長い爪で宙を切り、その中に消えていった。
「ごめんね、ヘラ」
レティはフードを被り直し、再び羽を広げる。ここ数日で把握した深雪の通勤ルート。レティはもう見えなくなった深雪を追って飛び出した。
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