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9話 12月5日(2)
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深雪は急いでいた。
もう授業が始まるというのに、授業で使う教科書が研究室に見当たらなかったのだ。家に置いてきたことも一瞬頭をよぎったが、昨日は持ち帰っていないはずだから、あるとしたらこの研究室以外は無い。深雪は乱雑に本や書類が置かれた机の上をもう一度確認するが、やはり無かった。
「仕方ない。図書館で借りるか」
深雪は授業に必要なものを鞄に突っ込み、速足で研究室を出る。図書館は学生証か教員証がないとゲートを通れないから、と図書館に向かう途中でそれを準備する。受付の挨拶もそこそこに、深雪はゲートに教員証をかざしてくぐり抜け、階段で2階へ上がる。長い足を駆使して1段飛ばしで上がった先、右手の方角に、教科書は並んでいる。教科書は教員ごとに並べられていて、深雪は自分の名前が書かれた場所を探し、その1冊を手に取った。薄黄色の表紙に黒い文字で書かれた本。
(これね。でもこれ、貸出OKなのかしら)
バーコードラベルを見ると青いシールが貼られている。貸出が出来ないものは赤いシールが貼られているはずだから、これは借りられるものということだ。
「良かった」
深雪は腕時計を見た。もう授業が始まる時刻だ。
(急がなきゃ)
カウンターに本を持ってい行くと、顔なじみの司書に不思議な顔をされた。
「深雪先生?ご自分の本を借りられるのですか?」
「そうなの、探したんだけど見当たらなくて」
「少しは整理したらどうです?研究室」
「私はまだ綺麗な方よ。向かいの笹田先生の方がもっと酷いもの」
「あれと比べて安心しないでくださいよ。あそこは本と書類のジャングルですよ」
「はは、言えてる。あ、ごめんちょっと急いでて。次授業なの」
「あらごめんなさい。すぐに済ませるから」
深雪は申し訳なさそうに頷いて、貸出手続きの様子を見ながら、また腕時計を確認する。と、その時授業開始のチャイムが鳴った。
(始まっちゃった)
今まで遅刻という遅刻をしてこなかった深雪は、焦り気味に鞄の紐をぎゅうっと握った。
「はい、貸出期間は1週間です」
「明日には返すわ。ありがとう」
差し出された本を受け取り、深雪はタンタンと靴音を鳴らしながら階段を下りる。途中すれ違った男子生徒とぶつかりそうになり、深雪は慌てて踵を返した。その時。
「あ……」
自分の思っていたところに足場がないことに気付く。深雪の体はバランスを崩し、一気に階段下へと倒れていった。視界の端で、先程の男子生徒が手を伸ばしているのが見えた。深雪も咄嗟に手を前に出したが、お互いに宙を掴んで意味をなさなかった。
頭から落ちていくことを覚悟して固く目を閉じた時、ふわりとした浮遊感が深雪の体を包んだ。
「白石先生」
全身を包む感じたことのない感覚と、落ちていく恐怖で固まっていた深雪は、振ってきた声にハッと目を開けた。
「れ、レティ!」
名前を呼ぶと、レティはその綺麗な顔をほころばせた。
「先生、授業に来ないからどうしたのかと思って。良かった、間に合って」
「ご、ごめん、ありがとう」
横抱きの状態にに羞恥を覚えた深雪は、慌ててレティから離れる。
「いいえ。怪我はない?」
「大丈夫よ」
「じゃ、授業行きましょ。みんな待っているわ」
うん、と頷く深雪。レティに手を引かれながら、助けようとしてくれた男子生徒にお礼を言ってレティと一緒にゲートをくぐる。出るときは教員証はいらなかったから、この時は気付けなかった。
レティはどうやって図書館に入ったのだろうか。
もう授業が始まるというのに、授業で使う教科書が研究室に見当たらなかったのだ。家に置いてきたことも一瞬頭をよぎったが、昨日は持ち帰っていないはずだから、あるとしたらこの研究室以外は無い。深雪は乱雑に本や書類が置かれた机の上をもう一度確認するが、やはり無かった。
「仕方ない。図書館で借りるか」
深雪は授業に必要なものを鞄に突っ込み、速足で研究室を出る。図書館は学生証か教員証がないとゲートを通れないから、と図書館に向かう途中でそれを準備する。受付の挨拶もそこそこに、深雪はゲートに教員証をかざしてくぐり抜け、階段で2階へ上がる。長い足を駆使して1段飛ばしで上がった先、右手の方角に、教科書は並んでいる。教科書は教員ごとに並べられていて、深雪は自分の名前が書かれた場所を探し、その1冊を手に取った。薄黄色の表紙に黒い文字で書かれた本。
(これね。でもこれ、貸出OKなのかしら)
バーコードラベルを見ると青いシールが貼られている。貸出が出来ないものは赤いシールが貼られているはずだから、これは借りられるものということだ。
「良かった」
深雪は腕時計を見た。もう授業が始まる時刻だ。
(急がなきゃ)
カウンターに本を持ってい行くと、顔なじみの司書に不思議な顔をされた。
「深雪先生?ご自分の本を借りられるのですか?」
「そうなの、探したんだけど見当たらなくて」
「少しは整理したらどうです?研究室」
「私はまだ綺麗な方よ。向かいの笹田先生の方がもっと酷いもの」
「あれと比べて安心しないでくださいよ。あそこは本と書類のジャングルですよ」
「はは、言えてる。あ、ごめんちょっと急いでて。次授業なの」
「あらごめんなさい。すぐに済ませるから」
深雪は申し訳なさそうに頷いて、貸出手続きの様子を見ながら、また腕時計を確認する。と、その時授業開始のチャイムが鳴った。
(始まっちゃった)
今まで遅刻という遅刻をしてこなかった深雪は、焦り気味に鞄の紐をぎゅうっと握った。
「はい、貸出期間は1週間です」
「明日には返すわ。ありがとう」
差し出された本を受け取り、深雪はタンタンと靴音を鳴らしながら階段を下りる。途中すれ違った男子生徒とぶつかりそうになり、深雪は慌てて踵を返した。その時。
「あ……」
自分の思っていたところに足場がないことに気付く。深雪の体はバランスを崩し、一気に階段下へと倒れていった。視界の端で、先程の男子生徒が手を伸ばしているのが見えた。深雪も咄嗟に手を前に出したが、お互いに宙を掴んで意味をなさなかった。
頭から落ちていくことを覚悟して固く目を閉じた時、ふわりとした浮遊感が深雪の体を包んだ。
「白石先生」
全身を包む感じたことのない感覚と、落ちていく恐怖で固まっていた深雪は、振ってきた声にハッと目を開けた。
「れ、レティ!」
名前を呼ぶと、レティはその綺麗な顔をほころばせた。
「先生、授業に来ないからどうしたのかと思って。良かった、間に合って」
「ご、ごめん、ありがとう」
横抱きの状態にに羞恥を覚えた深雪は、慌ててレティから離れる。
「いいえ。怪我はない?」
「大丈夫よ」
「じゃ、授業行きましょ。みんな待っているわ」
うん、と頷く深雪。レティに手を引かれながら、助けようとしてくれた男子生徒にお礼を言ってレティと一緒にゲートをくぐる。出るときは教員証はいらなかったから、この時は気付けなかった。
レティはどうやって図書館に入ったのだろうか。
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