11 / 25
11話 12月5日(4)
しおりを挟む
(どうしたらいいか分からないって)
「チッ」
「それ止めて。先生が不快な思いしたら許さないから」
ヘラはとても嫌そうな顔をして、教室を出て行った。
授業終わり、深雪との昼食の時間。研究室にいたレティは、今日も深雪の顔を見つめながら、心は先程のヘラとの会話を思い出していた。
「レティ。今日、誰と話していたの?」
「え?」
「私の授業中、珍しくレティの隣に誰か座っていたでしょう?」
レティはどう答えてよいか逡巡した。正直、余りヘラのことは言いたくない。知り合いとも認めたくない。
今は深雪のことだけに集中していたいのに、とんだ邪魔者が入ってしまった。
「何でもないの。ちょっと話してただけよ」
「そう?手を取り合って、仲がよさそうに見えたけど」
「違うわ。あれは一方的に掴まれてただけよ」
「ふーん?」
「何よ。その解せないって顔は」
「解せないんだもの。私の授業中に話してるから」
「それは、ごめんなさい」
(ヘラのせいで先生が不機嫌だわ。もう)
「あ、そうだ、あの本探しておかなくちゃ」
「何?」
「今日授業で使った教科書」
「失くしたの?」
「そう」
「それって、これじゃない?」
レティはテーブルの下に落ちていた1冊の本を取り、深雪に手渡す。
深雪は目を輝かせた。
「そう!そうこれよ。こんなところにあったのね。良かった」
「機嫌直してくれた?」
「……初めから悪くないよ」
深雪はすねた口調で言う。レティはそれが珍しくて、んふふと笑った。
「ねえ、それ、明日返しに行くんでしょう?」
「そうだね、もう見つかったし必要ないから」
「そしたら、私もついて行っていい?」
「どうして?」
深雪は不思議そうに訊ねる。もうすっかり弁当を食べる手は止まっていた。
「今日危なかったじゃない」
「そんなのたまたまよ」
「でもあのまま落ちてたら、怪我じゃ済まなかったかも」
「それはそうかもしれないけど」
レティにはどうしてもついていく必要があった。深雪のガードをさらに固めなければ、すぐそこまで死が迫っている感覚が確かにある。ヘラにも気付かれた。彼女が深雪に接触したら、魂を狙い始めてしまったら。いや、もう狙っているかもしれない。今もどこかで見ているかもしれない。焦る思考は一度走り出すと止まらなかった。
「お願い。一緒に行きたいの」
何故か緊張気味に伝えてくるレティの双眸は、どこか焦燥の色を示していた。
(レティ、何か隠してる)
「いいわ。でもあの図書館は大学関係者しか入れないようになってるから、外の返却BOXに入れとくことにしましょ。その方が時間も短くて済むし、レティの説明も省けるし……」
深雪はとある違和感に気付いた。
(そういえば今日、レティはどうやって図書館に入ったんだろう)
「ねえ」
「あ、先生、もうこんな時間よ!ご飯、早く食べないと」
「え、ああ、うん。そうね」
深雪はレティに促されるまま、残りの弁当を口に運んだ。
きっとよくある学生証を借りたとか、そんな程度だろうと思い込んで。
「チッ」
「それ止めて。先生が不快な思いしたら許さないから」
ヘラはとても嫌そうな顔をして、教室を出て行った。
授業終わり、深雪との昼食の時間。研究室にいたレティは、今日も深雪の顔を見つめながら、心は先程のヘラとの会話を思い出していた。
「レティ。今日、誰と話していたの?」
「え?」
「私の授業中、珍しくレティの隣に誰か座っていたでしょう?」
レティはどう答えてよいか逡巡した。正直、余りヘラのことは言いたくない。知り合いとも認めたくない。
今は深雪のことだけに集中していたいのに、とんだ邪魔者が入ってしまった。
「何でもないの。ちょっと話してただけよ」
「そう?手を取り合って、仲がよさそうに見えたけど」
「違うわ。あれは一方的に掴まれてただけよ」
「ふーん?」
「何よ。その解せないって顔は」
「解せないんだもの。私の授業中に話してるから」
「それは、ごめんなさい」
(ヘラのせいで先生が不機嫌だわ。もう)
「あ、そうだ、あの本探しておかなくちゃ」
「何?」
「今日授業で使った教科書」
「失くしたの?」
「そう」
「それって、これじゃない?」
レティはテーブルの下に落ちていた1冊の本を取り、深雪に手渡す。
深雪は目を輝かせた。
「そう!そうこれよ。こんなところにあったのね。良かった」
「機嫌直してくれた?」
「……初めから悪くないよ」
深雪はすねた口調で言う。レティはそれが珍しくて、んふふと笑った。
「ねえ、それ、明日返しに行くんでしょう?」
「そうだね、もう見つかったし必要ないから」
「そしたら、私もついて行っていい?」
「どうして?」
深雪は不思議そうに訊ねる。もうすっかり弁当を食べる手は止まっていた。
「今日危なかったじゃない」
「そんなのたまたまよ」
「でもあのまま落ちてたら、怪我じゃ済まなかったかも」
「それはそうかもしれないけど」
レティにはどうしてもついていく必要があった。深雪のガードをさらに固めなければ、すぐそこまで死が迫っている感覚が確かにある。ヘラにも気付かれた。彼女が深雪に接触したら、魂を狙い始めてしまったら。いや、もう狙っているかもしれない。今もどこかで見ているかもしれない。焦る思考は一度走り出すと止まらなかった。
「お願い。一緒に行きたいの」
何故か緊張気味に伝えてくるレティの双眸は、どこか焦燥の色を示していた。
(レティ、何か隠してる)
「いいわ。でもあの図書館は大学関係者しか入れないようになってるから、外の返却BOXに入れとくことにしましょ。その方が時間も短くて済むし、レティの説明も省けるし……」
深雪はとある違和感に気付いた。
(そういえば今日、レティはどうやって図書館に入ったんだろう)
「ねえ」
「あ、先生、もうこんな時間よ!ご飯、早く食べないと」
「え、ああ、うん。そうね」
深雪はレティに促されるまま、残りの弁当を口に運んだ。
きっとよくある学生証を借りたとか、そんな程度だろうと思い込んで。
0
あなたにおすすめの小説
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
後宮祓いの巫女は、鬼将軍に嫁ぐことになりました
由香
キャラ文芸
後宮で怪異を祓う下級巫女・紗月は、ある日突然、「鬼」と噂される将軍・玄耀の妻になれと命じられる。
それは愛のない政略結婚――
人ならざる力を持つ将軍を、巫女の力で制御するための契約だった。
後宮の思惑に翻弄されながらも、二人は「契約」ではなく「選んだ縁」として、共に生きる道を選ぶ――。
雪嶺後宮と、狼王の花嫁
由香
キャラ文芸
後宮に降る雪は、呪いではなく嘆きだった。
巫女として献上された少女セツナは、
封じられた狼王の“花嫁”としての前世を思い出す。
人と妖、政と信仰の狭間で、
彼女が選ぶのは従属ではなく均衡。
雪嶺を舞台に描く、異種婚姻×後宮伝承譚。
花嫁御寮 ―江戸の妻たちの陰影― :【第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞】
naomikoryo
歴史・時代
名家に嫁いだ若き妻が、夫の失踪をきっかけに、江戸の奥向きに潜む権力、謀略、女たちの思惑に巻き込まれてゆく――。
舞台は江戸中期。表には見えぬ女の戦(いくさ)が、美しく、そして静かに燃え広がる。
結城澪は、武家の「御寮人様」として嫁いだ先で、愛と誇りのはざまで揺れることになる。
失踪した夫・宗真が追っていたのは、幕府中枢を揺るがす不正金の記録。
やがて、志を同じくする同心・坂東伊織、かつて宗真の婚約者だった篠原志乃らとの交錯の中で、澪は“妻”から“女”へと目覚めてゆく。
男たちの義、女たちの誇り、名家のしがらみの中で、澪が最後に選んだのは――“名を捨てて生きること”。
これは、名もなき光の中で、真実を守り抜いたひと組の夫婦の物語。
静謐な筆致で描く、江戸奥向きの愛と覚悟の長編時代小説。
全20話、読み終えた先に見えるのは、声高でない確かな「生」の姿。
白苑後宮の薬膳女官
絹乃
キャラ文芸
白苑(はくえん)後宮には、先代の薬膳女官が侍女に毒を盛ったという疑惑が今も残っていた。先代は瑞雪(ルイシュエ)の叔母である。叔母の濡れ衣を晴らすため、瑞雪は偽名を使い新たな薬膳女官として働いていた。
ある日、幼帝は瑞雪に勅命を下した。「病弱な皇后候補の少女を薬膳で救え」と。瑞雪の相棒となるのは、幼帝の護衛である寡黙な武官、星宇(シンユィ)。だが、元気を取り戻しはじめた少女が毒に倒れる。再び薬膳女官への疑いが向けられる中、瑞雪は星宇の揺るぎない信頼を支えに、後宮に渦巻く陰謀へ踏み込んでいく。
薬膳と毒が導く真相、叔母にかけられた冤罪の影。
静かに心を近づける薬膳女官と武官が紡ぐ、後宮ミステリー。
偽夫婦お家騒動始末記
紫紺
歴史・時代
【第10回歴史時代大賞、奨励賞受賞しました!】
故郷を捨て、江戸で寺子屋の先生を生業として暮らす篠宮隼(しのみやはやて)は、ある夜、茶屋から足抜けしてきた陰間と出会う。
紫音(しおん)という若い男との奇妙な共同生活が始まるのだが。
隼には胸に秘めた決意があり、紫音との生活はそれを遂げるための策の一つだ。だが、紫音の方にも実は裏があって……。
江戸を舞台に様々な陰謀が駆け巡る。敢えて裏街道を走る隼に、念願を叶える日はくるのだろうか。
そして、拾った陰間、紫音の正体は。
活劇と謎解き、そして恋心の長編エンタメ時代小説です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる