死神の砂時計

蒼依月

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11話 12月5日(4)

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(どうしたらいいか分からないって)

「チッ」
「それ止めて。先生が不快な思いしたら許さないから」

 ヘラはとても嫌そうな顔をして、教室を出て行った。

 授業終わり、深雪との昼食の時間。研究室にいたレティは、今日も深雪の顔を見つめながら、心は先程のヘラとの会話を思い出していた。

「レティ。今日、誰と話していたの?」
「え?」
「私の授業中、珍しくレティの隣に誰か座っていたでしょう?」

 レティはどう答えてよいか逡巡した。正直、余りヘラのことは言いたくない。知り合いとも認めたくない。
 今は深雪のことだけに集中していたいのに、とんだ邪魔者が入ってしまった。

「何でもないの。ちょっと話してただけよ」
「そう?手を取り合って、仲がよさそうに見えたけど」
「違うわ。あれは一方的に掴まれてただけよ」
「ふーん?」
「何よ。その解せないって顔は」
「解せないんだもの。私の授業中に話してるから」
「それは、ごめんなさい」

(ヘラのせいで先生が不機嫌だわ。もう)

「あ、そうだ、あの本探しておかなくちゃ」
「何?」
「今日授業で使った教科書」
「失くしたの?」
「そう」
「それって、これじゃない?」

 レティはテーブルの下に落ちていた1冊の本を取り、深雪に手渡す。
 深雪は目を輝かせた。

「そう!そうこれよ。こんなところにあったのね。良かった」
「機嫌直してくれた?」
「……初めから悪くないよ」

 深雪はすねた口調で言う。レティはそれが珍しくて、んふふと笑った。

「ねえ、それ、明日返しに行くんでしょう?」
「そうだね、もう見つかったし必要ないから」
「そしたら、私もついて行っていい?」
「どうして?」

 深雪は不思議そうに訊ねる。もうすっかり弁当を食べる手は止まっていた。

「今日危なかったじゃない」
「そんなのたまたまよ」
「でもあのまま落ちてたら、怪我じゃ済まなかったかも」
「それはそうかもしれないけど」

 レティにはどうしてもついていく必要があった。深雪のガードをさらに固めなければ、すぐそこまで死が迫っている感覚が確かにある。ヘラにも気付かれた。彼女が深雪に接触したら、魂を狙い始めてしまったら。いや、もう狙っているかもしれない。今もどこかで見ているかもしれない。焦る思考は一度走り出すと止まらなかった。

「お願い。一緒に行きたいの」

 何故か緊張気味に伝えてくるレティの双眸は、どこか焦燥の色を示していた。

(レティ、何か隠してる)

「いいわ。でもあの図書館は大学関係者しか入れないようになってるから、外の返却BOXに入れとくことにしましょ。その方が時間も短くて済むし、レティの説明も省けるし……」

 深雪はとある違和感に気付いた。

(そういえば今日、レティはどうやって図書館に入ったんだろう)

「ねえ」
「あ、先生、もうこんな時間よ!ご飯、早く食べないと」
「え、ああ、うん。そうね」

 深雪はレティに促されるまま、残りの弁当を口に運んだ。
 きっとよくある学生証を借りたとか、そんな程度だろうと思い込んで。

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