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第1章
1話
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人間と、獣人や人魚などが住む世界。
秩序と混沌のバランスを保つのが難しいこの世界で、大国のリース王国の安寧を保つ鍵は、1人の聖女が握っていた、はずだった。
今までは。
「さて、どうしようかな」
リース王国の元聖女シオンは今日、追放された。罪状は、『聖女の力を違法に手に入れた罪』。本当は聖女の力なんてないのに、それを偽って王子に近づいた為、危険因子とみなされ追放されたのだ。
「私の力は本物なんだけど」
王国の門の前で、手のひらをかざし白い光の玉を出して見せるシオン。それを見た門番はひそひそと眉をひそめている。その顔は不快に満ちていて、顔に「早く行け」と書いてある。
シオンは溜息を1つつき、足を動かした。王国から離れる方向に歩いていく。道は段々と険しくなり、鬱蒼とした森が目の前に見えた。
「ここを通らないと、隣の国に行けないのよね」
だがこの森は魔物が出るという噂で有名な森だった。
森の前で立ち止まるシオン。
彼女の見た目は魔物の格好の獲物だった。彼らは光るものや綺麗なものを好む。シオンは人間の中でも美しいと言われる事が多い部類の人間だった。済んだ冬の青空のような薄い水色の長い髪に、紫の大きな瞳、顔の作りは完璧で、どこかの国の人形のような作りをしていた。腰下まである髪を三つ編みにし、後頭部で結い上げている。
美人、シオンにはその言葉がぴったりだった。つまり魔物に狙われやすい。
「まだ食べられたくはないな……」
だがここを通らないことにはどこにも行けない。シオンはしばらく森の前で考え込んだ後、自分の聖女の力を信じて一歩を踏み出した。
□□□□□□□□
「多い!多すぎる!」
自分の力を過信していたのかもしれない、と歯噛みした。30分もしないうちに、魔物に囲まれた。聖女の力をいくら放ってもきりがない。
聖女の力はそのまま体力に直結する。使えば使うほど、体の動きが鈍くなっていく。
「もう、視界が……」
森に入ってどれくらい進めただろう。まだ昼間だというのに光が全く入ってこない。そのせいか、魔物の方はいつもより活発に攻撃してくる。角で突いてくるもの、大きな鎌を振り回してくるもの、魔法を繰り出してくるもの、それぞれ統率は全く取れていないが、塵も積もれば山となる。シアンの体力はとうに限界を迎えていた。視界が判然としない。ぼやけてどこに向かって攻撃すればいいのかすら、判断が出来なくなる。
「こんな、ところで……野垂死ぬために、私は今まで聖女をやってきたわけじゃない……!」
聖女として王宮に就いてからは、まともに休んでいなかった。人並みの青春なんて手の届かない幻だった。恋も、友情も、知らずに生きてきた。やってきたこと言えば国境に結界を張る、魔物の退治に同行する、王子のご機嫌取り、そんなものばかり。
シオンはそこまで思い返して、自分が泣いていることに気付く。頬に温かな涙が、一線を引いた。
「私、何のために今まで生きてきたの?」
その問いに答えるものなどいない。遠くで強い魔力を感じて、シオンは目を閉じた。自分に攻撃が来る、そう思った。
「まだ、死ぬには早い」
答えは返ってこなかった。でも、人の声がした。直後、魔力を感じた場所から薄黄色の光線が飛んできた。それはシオンの頭上で光の玉となってはじけ、魔物を一掃した。
呆気にとられ声が出ない。視界がぼやけてはっきりしないが、今まで感じていた魔物の気配が全て消えたことだけは分かった。
オーバーワークで息も絶え絶えなシオンは、どうにか光線を放った存在を確認しようと振り向く。そこで見えたのは、2mはあろうかという大きな図体と、小さな子供の影、そしてかろうじて見えた端正な顔立ちの青年だった。
□□□□□□□□
「死んじゃったの?」
「いや、まだ息はある」
「では我らの家に……?」
「とんだ拾い物だな」
「ふふ。わたしと一緒に帰ろ、綺麗なお姉ちゃん」
大きな影がシオンを持ち上げ担いでいく。
「何のために生きてきた、か……」
青年がシオンの言葉を反芻する。それはまだ、青年も見つけられていない問いだった。
秩序と混沌のバランスを保つのが難しいこの世界で、大国のリース王国の安寧を保つ鍵は、1人の聖女が握っていた、はずだった。
今までは。
「さて、どうしようかな」
リース王国の元聖女シオンは今日、追放された。罪状は、『聖女の力を違法に手に入れた罪』。本当は聖女の力なんてないのに、それを偽って王子に近づいた為、危険因子とみなされ追放されたのだ。
「私の力は本物なんだけど」
王国の門の前で、手のひらをかざし白い光の玉を出して見せるシオン。それを見た門番はひそひそと眉をひそめている。その顔は不快に満ちていて、顔に「早く行け」と書いてある。
シオンは溜息を1つつき、足を動かした。王国から離れる方向に歩いていく。道は段々と険しくなり、鬱蒼とした森が目の前に見えた。
「ここを通らないと、隣の国に行けないのよね」
だがこの森は魔物が出るという噂で有名な森だった。
森の前で立ち止まるシオン。
彼女の見た目は魔物の格好の獲物だった。彼らは光るものや綺麗なものを好む。シオンは人間の中でも美しいと言われる事が多い部類の人間だった。済んだ冬の青空のような薄い水色の長い髪に、紫の大きな瞳、顔の作りは完璧で、どこかの国の人形のような作りをしていた。腰下まである髪を三つ編みにし、後頭部で結い上げている。
美人、シオンにはその言葉がぴったりだった。つまり魔物に狙われやすい。
「まだ食べられたくはないな……」
だがここを通らないことにはどこにも行けない。シオンはしばらく森の前で考え込んだ後、自分の聖女の力を信じて一歩を踏み出した。
□□□□□□□□
「多い!多すぎる!」
自分の力を過信していたのかもしれない、と歯噛みした。30分もしないうちに、魔物に囲まれた。聖女の力をいくら放ってもきりがない。
聖女の力はそのまま体力に直結する。使えば使うほど、体の動きが鈍くなっていく。
「もう、視界が……」
森に入ってどれくらい進めただろう。まだ昼間だというのに光が全く入ってこない。そのせいか、魔物の方はいつもより活発に攻撃してくる。角で突いてくるもの、大きな鎌を振り回してくるもの、魔法を繰り出してくるもの、それぞれ統率は全く取れていないが、塵も積もれば山となる。シアンの体力はとうに限界を迎えていた。視界が判然としない。ぼやけてどこに向かって攻撃すればいいのかすら、判断が出来なくなる。
「こんな、ところで……野垂死ぬために、私は今まで聖女をやってきたわけじゃない……!」
聖女として王宮に就いてからは、まともに休んでいなかった。人並みの青春なんて手の届かない幻だった。恋も、友情も、知らずに生きてきた。やってきたこと言えば国境に結界を張る、魔物の退治に同行する、王子のご機嫌取り、そんなものばかり。
シオンはそこまで思い返して、自分が泣いていることに気付く。頬に温かな涙が、一線を引いた。
「私、何のために今まで生きてきたの?」
その問いに答えるものなどいない。遠くで強い魔力を感じて、シオンは目を閉じた。自分に攻撃が来る、そう思った。
「まだ、死ぬには早い」
答えは返ってこなかった。でも、人の声がした。直後、魔力を感じた場所から薄黄色の光線が飛んできた。それはシオンの頭上で光の玉となってはじけ、魔物を一掃した。
呆気にとられ声が出ない。視界がぼやけてはっきりしないが、今まで感じていた魔物の気配が全て消えたことだけは分かった。
オーバーワークで息も絶え絶えなシオンは、どうにか光線を放った存在を確認しようと振り向く。そこで見えたのは、2mはあろうかという大きな図体と、小さな子供の影、そしてかろうじて見えた端正な顔立ちの青年だった。
□□□□□□□□
「死んじゃったの?」
「いや、まだ息はある」
「では我らの家に……?」
「とんだ拾い物だな」
「ふふ。わたしと一緒に帰ろ、綺麗なお姉ちゃん」
大きな影がシオンを持ち上げ担いでいく。
「何のために生きてきた、か……」
青年がシオンの言葉を反芻する。それはまだ、青年も見つけられていない問いだった。
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