聖女ですが追放されたので、怪しい3人衆と旅をすることにしました。

蒼依月

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第1章

2話

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「シオン!お前は今日でクビだ」
「え?」
 シオンは混乱した。
 目の前で正義の味方の如く手を振りかざしているのは、リース王国の第2王子、リュカ。シオンが聖女に就いてから、何年もご機嫌をとってきた相手、シオンの婚約者だ。
 
「理由をお伺いしても宜しいですか?」
「ふんっ!お前は私の学友であるアリスに陰湿ないじめをした!」
 
 覚えがない。シアンは首を傾げるが、リュカはお構いなしに続けた。

「その理由は、お前の聖女の力が偽物だからだ!」
「は?」
「それを隠すために、お前はアリスを執拗に虐めたのだろう?言質は取ってある!お前は真の聖女であるアリスを妬ましく思い、手を出した。それはこの国の聖女として、いや国に仕える者として失格である!よって、お前との婚約をここで破棄し、お前を国外追放に処す!」

 リュカの腕に抱かれている、いかにもか弱そうな少女がシオンにだけ見えるように嗤った。

(ああ、そういう……)

 ため息も出ない。

(ああ、本当に……本当に!!)
 
「馬っ鹿みたい!」
「なんだと?」

 リュカの視線が鋭くシオンに刺さった。だがシオンはどこ吹く風で受け流し、睨み返す。

「馬鹿みたいって言ったのよ。あなたも、ここにいる人たちも、全員!騙されていることにも気付かずに、一体その目は何を見ているのかしら!?」
「シオン!言葉が過ぎるぞ」
「名前で呼ばないでくださる?第二王子殿下?」

 シオンは今まで許されていたリュカの名をあえて呼ばなかった。
 彼はもう、シオンの婚約者ではない。今さっき、それは破棄された。

「もういい!衛兵!連れていけ!」
「いいえ!私一人で出ていきます!」

 シオンは腕をつかんできた兵の手を振り払った。だがそれがいけなかったのか、王宮騎士団の団員で、リュカの側近である兄、ノクスに後ろ手で捕らえられてしまい、抵抗が出来なくなる。肩から腕にかけて痛みが走り、シオンは顔を歪ませた。

「お兄様、痛いわ!そんなことしなくても、大人しく出ていきますから!」
「お前は信用できない」

(実の兄にも見放されるなんて……。私、本当に何もしていないのに……!)

 ノクスの言葉に傷付いた表情を浮かべるシオン。彼女はそのまま連行される形で、会場を出た。

(許さない。こんな仕打ち、絶対に許さない!)
 
 そうして半日もしないうちに、シオンは国境の門の外に出されたのだった。


 □□□□□□□□


「……る…さな…」

 シオンの傍らに、小さな少女が座っている。
 シオン眠っていた。
 少女はシオンがうなされているようだったので、心配だったのだ。
 
「これ、安心する魔法……お姉ちゃん、早く元気になってね」

 少女はシオンに薄黄色の光の粉を振りまいた。その仕草で長い袖の隙間から、鱗が見えた。少女はシオンの寝息が落ち着いたのを確認して、また隣で眠った。


 □□□□□□□□

 
 目を覚ますと、知らない天井が見えた。

「!?」

 シオンは慌てて飛び起きて、辺りを見回す。知らない部屋だ。白い壁に青い花柄の模様が入った壁紙、木の机と椅子、服が何着か収納できるクローゼット、大きな窓。王宮にいた頃と比べるとずいぶん小さいが、それでも十分広い、恐らく女性用の部屋。

「どこ、ここ」
「ここは……黒霧館こくむかん
「!」

 すぐ右隣りで声がして、はじかれたようにそちらに顔を向ける。
 起き上がったベッドの上、布団の中で、何かがうごめく。膨らみからして小さい何かであることは分かった。
 何かが布団から出ようとしている。シオンは構えた。すぐにでも聖女の力を出せるように準備した。

「お姉ちゃん、元気になった?」

 舌足らずな口調で訊ねたのは、体に鱗が浮き出た翡翠色の髪と瞳が特徴の、小さな少女だった。
 
 
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