聖女ですが追放されたので、怪しい3人衆と旅をすることにしました。

蒼依月

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第1章

16話

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「聖女……」

 開口一番にそう言われて、シオンはどこか懐かしい気持ちでそれを否定した。

「私はもう聖女じゃないそうです」
「聖女ハ、死ヌマデ聖女。俺タチノ敵……」
 
 よく喋るユウムだ。シオンはまた首を振った。

「ここにいる敵は私だけではありません。仲間はどこです?消える前に教えてくれた方がすぐ退治が済んで楽なのですが」
「オ、教エルト思ウノカ?聖女ナンカニ」
「……残念です」

 シオンは手を前に突き出した。その瞬間ユウムの顔色が変わる。分かりやすく焦っている様子だ。

「マ、待テ!教エタラ逃ガシテクレルノカ!?」
「そんなわけないでしょう」

 その答えを聞くなり、ユウムが逃げだした。シオン達の頭上を飛び越え森の奥へと飛んでいく。

「逃がしません!」

 シオンは結界魔法で壁を作り、ユウムの行く手を塞いだ。ユウムがたじろいだ瞬間をシオンは見逃さなかった。咄嗟に結界でユウムを囲った。

「さて、もうどこにも行けませんよ」

 淡々とそう告げて、シオンはユウムを見つめる。

「仲間の居場所、教えてくれませんか?」
「……」
「そうですか」

 目を閉じたシオンは手をすい、と右から左に流した。それと同時、結界が小さく爆発して、ユウム諸共消え去った。
 結界の欠片がシオンの髪をかすめる。
 ふう、と嘆息を一つこぼして、シオンは村人へ駆け寄った。

「うう……」
「良かった、上手くいって。もう大丈夫ですよ」

 そう告げて村人の肩に手を置くシオンの表情は、今さっきユウムに向けた冷たい視線とまるで別人だった。優しく、慈愛に満ちた瞳。まさしく聖女のものだ。

「シオン」

 ガーラに呼ばれ、シオンが振り向く。

「見事だ。先に言っていた通り、君にはユウムを人間から引き離す力があるらしい。これなら血生臭い戦闘にならずに済みそうだ」
「お役に立てそうですか?」
「もちろんだ」

 それを聞いて、ほっと胸をなでおろす。

「村人は無事なのか?」

 ウェストが木にもたれて俯く村人を見下ろしながら訊ねた。

「大丈夫です。数日眠れば体調も戻ると思います」
「そうか」
「シオンお姉ちゃん、凄いっ」
「スイ……。ありがとう。スイのその武器も強いわね。速すぎて何が起きたのか分からなかったわ」
「格好いいでしょ、スイの武器。投げたりして敵を倒すの」

 スイは得意気に青白い三叉槍を空中でくるくると回してみせた。それに微笑んだシオンだったが、周りに異様な雰囲気を感じ取って顔を上げる。

「!」

 さわさわと森の木々が揺れている。
 その隙間に、次々と丸く赤黒い光が浮かび上がった。ユウムの目だ。いつの間にか群れに囲まれている。
 
「シオン、いけるか?」

 ガーラが構える。
 シオンは静かに頷いた。
 作戦がない戦闘など初めてのシオンは、久々に緊張していた。
 しかしそんなシオンを他所に、ガーラがその薄い唇を動かした。

「ウェストはまず取り憑かれた村人をシオンのもとに集めてくれ。くれぐれも傷付けないように」
「おう」

 シオンは目を見開いてガーラを見た。

「スイはユウムを一か所に誘導。その後僕が倒す」
「はーい」
「シオンは──」
「待って」
「なんだ」
「なんだ、ではないです!え?作戦あったのですか?なぜ教えてくれなかったのです?」
「今考えたから」
「は、はあ?」
「すまない、シオン。こいついつもこうで」

 ウェストのフォローも今では何の意味も成さない。ガーラはシオンの苛立ちを流して続ける。

「シオンはウェストが集めた村人からユウムを引き離してくれ。ユウムの退治は僕がやるから、君はそれだけに集中してくれて構わない」
 
 呆れた。自分勝手すぎる。だがここで言い争っている場合ではない。
 ガーラを睨むように一瞥してシオンは渋々頷いた。
 
「ではユウム討伐、開始」

 その一言をきっかけに、ウェストは手近な村人に突進した。突進と言っても直接体当たりはせず、走り抜けながら村人を脇に抱え、シオンのもとに戻ってきた。
 取り憑かれた村人は言葉無く叫んで抵抗しているが、ウェストの強力にはかなわないようで足や手をばたつかせている。ウェストはその村人の腹に一撃を加えた。

「シオン、頼む」

 気絶した村人を置き、それだけ言ってウェストはまた行ってしまった。
 ウェストの行動に口を挟む隙も無かったシオンは、仕方なしに白目をむく村人に近付き結界を施す。

「乱暴すぎる……」

 先程と同じように、村人の頭上から黒い霧が立ちのぼり、やがて火の玉の形をした本体が姿を見せた。
 振り返ってガーラを呼ぼうとした時、視界の右側から凄まじい速さで三叉槍が飛んできて、今さっき村人から出てきたユウムは戦きながら逃げて行った。その逃げた先に、ガーラが何やらブツブツと呟いている。
 目を伏せ下を見ながら、その足元には3重の魔方陣が出来ていた。
 
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