聖女ですが追放されたので、怪しい3人衆と旅をすることにしました。

蒼依月

文字の大きさ
17 / 19
第1章

17話

しおりを挟む
 ガーラがふっと顔をあげた。それと同時、彼の背後に無数の短剣が現れる。
 スイの三叉槍は周りのユウムを追いかけながら確実にガーラへと誘導している。
 その間にも、シオンはウェストが連れてきた村の人間から、ユウムを引き離す。
 
「逃ゲロ逃ゲロ逃ゲロ!!」

 ユウムが言いながらヒュンヒュンと風をきって文字通り逃げまわる。背後の三叉槍を振り返りながら逃げまどい、しかし彼らが逃げついた先はガーラの眼前だった。
 ユウムがその事実に気づいた時には、もう遅い。
 ガーラは真っ直ぐユウムの群れを見据え、静かに右手を上げると彼の背後で浮遊していた短剣の刃が一気にユウムに向いた。

「ヒッ」
「消えなさい」

 ガーラの指先が前方に向けて動いた。それに連動するように、短剣がユウムに向かって飛んでいく。
 飛んでいった短剣は次々にユウムを襲った。短剣が刺さる度に、ユウム達は悲痛な叫びを上げて消えていく。

「ガーラさん!あと一体──」

 シオンが取り憑かれた男の村人から最後のユウムを引き離しガーラを振り返る。その一体がシオンに向かって威嚇した時、そのこめかみに短剣が刺さった。ユウムはシオンの目の前で霧のように消えた。
 一瞬のことに驚いて、声も出ない間にすべてが終わっていた。森の中に再び静寂が訪れる。ユウムは、一掃された。村人も全員ユウムから引き離した。今は気を失っているが、きっと数日以内には目を覚ますだろう。
 シオンは辺りを見回し目を閉じる。ユウムの気配は、感じられない。
 終わったのだ。

「ガーラさん。スイ、ウェストさん、終わったようです」

 ウェストが鼻をひくつかせてから、にっとその大きな口で笑った。

「辺りにユウムの匂いも無いし、本当にこれで終わったようだな」

 ガーラが頷く。スイの三叉槍はいつの間にか無くなっていた。自由に出したり消したり出来る物なのだろうか。シオンには分からない。

「帰ろう」

 ガーラが一言そう言うと、スイもそれに続いて、来た道を歩き出す。ウェストは特に具合の悪そうな村人を2人脇に抱えてガーラ達の後に付いていった。
 
「え、ちょ、ちょっと!」
 
 シオンは慌てて3人の後を追いかけた。

 ガーラが向かったのは村長の家だった。ガーラからユウムの討伐が済んだことを聞いた村長は驚いた様子だったが、ウェストが連れてきた村人を見て、嘘ではないことを確信せざるを得なかった。

「残りの者たちは森にいる。早めに迎えに行ってあげた方がいいだろう」
「分かりました」

 村長は若者を何人か集め、森に行かせた。
 ウェストが連れて帰った村人の顔色はかなり悪かった。今にも口から何かを吐き出しそうだ。2人を介抱していた女性の一人がシオンに訊ねた。

「あの、大丈夫なんでしょうか。かなり具合が悪そうなのですが……」
「それなら大丈夫です。数日も眠れば回復するでしょう」
「そ、そうですか。あともう一つ……聞きたいことがあって」
「はい」

 シオンが愛想よく頷くと、女性は、横になり苦しそうに呻く男性を見やって言った。

「ユウムって確か取り憑かれたらもう、ユウムと一緒に退治されるって聞いて。だから……」
「それも心配ありません。取りつかれた村の方々は全員ユウムを彼らから引き離してから、ユウムだけを退治しましたから」

 女性は驚いたように目を見開いた。

「そのようなこと、出来るのですか?聞いたことないです」
「それは……」

 どう伝えようか迷っていた時、後ろからはっきりと返答が降ってきた。

「出来る。彼女なら」

 答えたのは、ガーラだ。シオンの横に立って、彼女の肩に優しく手を回した。
 その反対側に、スイとウェストもやってくる。

「シオンは特別。だからシオンにしか出来ない」
「俺たちの自慢の仲間だ」

 それを黙って聞いていたシオンの胸に温かな感情が湧いてくる。シオンは髪に挿したカラーの花を触った。
 3人に出会ってから、胸のあたりがどんどん熱を帯びていくのを感じる。まるで、城に仕えていた時には、心が何も感じていなかったのかと思うほどに、3人はシオンに沢山の知らない感情を与えてくれる。

(これを、なんて言い表したらいいのか分からない)

 でも、嫌ではない。
 女性は、目を伏せて頬をほころばせるシオンを見て、優しく微笑んだ。

「本当に、ありがとうございました」
「いいえ。私に出来ることでしたら、またお力になります」

 シオンが笑顔で伝えると、女性は深々と頭を下げて男性のもとに戻っていった。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最強お嬢様、王族転生!面倒事は即回避!自由気ままに爆走しますけど何か?

幸之丞
ファンタジー
転生したら――まさかの王族。 豪華な生活は大歓迎だが、政治?儀式?婚約? そんな面倒事、わたしには無理! 「自由に生きるわ。何が悪いの!」 そう考えた主人公エリーゼは、王家の常識を軽々とぶっ壊しながら、 好きなことだけを全力で楽しむ“自由至上主義”の王族ライフを爆走する。 だが、面倒事から逃げているはずなのに、 なぜか家族は勝手に主人公を「天才」「救世主」と勘違いし始め―― 気づけば女神も巻き込む大騒動に発展していく。 面倒は回避、自由は死守。 そんな主人公の“予測不能な王族生活”が今、幕を開ける。

聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。 そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来? エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。

【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました

小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。 しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!? 助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、 「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。 幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。 ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく! ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

王女様は聖女様?おてんば姫の大冒険~ペットのドラゴンが迷子なので冒険者になって探しに行きます!~

しましまにゃんこ
ファンタジー
アリシア王国の第3王女ティアラ姫には誰にも言えない秘密があった。 それは自分が全属性の魔力を持ち、最強のチート能力を持っていた「建国の賢者アリシア」の生まれ変わりであること! 8才の誕生日を境に前世の記憶を取り戻したものの、500年後に転生したことを知って慌てる。なぜなら死の直前、パートナーのドラゴンに必ず生まれ変わって会いにいくと約束したから。 どこにいてもきっとわかる!と豪語したものの、肝心のドラゴンの気配を感じることができない。全属性の魔力は受け継いだものの、かつての力に比べて圧倒的に弱くなっていたのだ! 「500年……長い。いや、でも、ドラゴンだし。きっと生きてる、よね?待ってて。約束通りきっと会いにいくから!」  かつての力を取り戻しつつ、チートな魔法で大活躍!愛する家族と優しい婚約者候補、可愛い獣人たちに囲まれた穏やかで平和な日々。 しかし、かつての母国が各国に向けて宣戦布告したことにより、少しずつ世界の平和が脅かされていく。 「今度こそ、私が世界を救って見せる!」 失われたドラゴンと世界の破滅を防ぐため、ティアラ姫の冒険の旅が今、始まる!   剣と魔法が織りなすファンタジーの世界で、アリシア王国第3王女として生まれ変わったかつての賢者が巻き起こす、愛と成長と冒険の物語です。 イケメン王子たちとの甘い恋の行方もお見逃しなく。 小説家になろう、カクヨムさま他サイトでも投稿しています。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

追放された聖女は旅をする

織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。 その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。 国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。

処理中です...