聖女ですが追放されたので、怪しい3人衆と旅をすることにしました。

蒼依月

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第1章

18話

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 シオン達一行は黒霧館に戻っていた。
 村には数日滞在して、ユウムに取り憑かれていた村人たちの意識が戻ったのを確認して、戻ってきたのだ。報酬は、もちろん貰った。数日分の食費に値する程度のものだったが、そもそもガーラ達は報酬目的で行ったわけではない。国からの命令の為に行っている、ただそれだけだ。

「シオン。改めて礼を言う。ユウムを人間から引き離す術、実に見事だった。ありがとう」
「い、いえ、そんな。自分に出来ることをしたまでで」
「それが凄いと言っているんだ。君は自分を過小評価しすぎだ。十分に役立ってくれた」

 シオンは戸惑った。今までこんなにも褒められたことがない。当然のことをしたから、そんな大げさに言うことでもないと思っていた。事実、今までがそうだった。でも。

「本当にありがとう。やはり君を引き入れて良かった」

 ガーラが僅かに笑って言ってくる。少しは、自分を褒めてあげてもいいのかもしれない。労ってあげてもいいのかもしれない。そもそも、もう自分を物のように扱う存在はいないのだ。染みついた考えを、改める機会が今なのだろうか。

「私も、ガーラさん達に拾っていただいて、良かったです」

 そう俯きがちに伝えると、ガーラはこめかみの辺りを人差し指でかきながらシオンを見つめた。

「その、”さん”ってつけるの、やめてくれないか。あまり慣れない」
「え?でも」
「僕が嫌なんだ。こちらはシオンと呼んでいるのに、なんだか対等ではない気がして」

 ガーラは不愛想だと思っていたが、そうでもないらしい。それとも、気を許してくれているのだろうか。

(なんか、照れてる?)

 シオンが思わず笑うと、ガーラは不貞腐れたようにそっぽを向いてしまった。

「分かりました、ガーラ」
「ああ。それでいい」

 その様子を部屋の外からこっそり見ていたウェストは、口の端をにんまりとつり上げた。それはいたずらを思いついた子供のような笑みだった。

(今はそっとしておこう)

 部屋に遠慮なく入ろうとしたスイを引き留め、ウェストはキッチンに向かう。一仕事終えた後の、ちょっとした晩餐にしよう。そんなことを考えながら、スイを引きずって行ったのだった。

 ウェストが用意してくれた少し豪華な夕ご飯を食べた後、シオンは自室に戻り花瓶に飾ったカラーの花を見つめて、ベッドに一人膝を折ってうずくまった。
 眠れない。なんだか気持ちが高揚して寝付けないのだ。こんなことも初めてだ。黒霧館ここに来てから初めての経験ばかりしている。

(あのお花屋さん、雰囲気良かったな。村の人たちも、助かってよかった。ガーラ達にも、仲間って言ってもらった)

 シオンはひざに顔を埋めた。

(こんなに嬉しいことが続いていいのかな。これから、何か悪いことが起きる前触れとかじゃないよね)

 できればそうでないことを信じたい。
 暗い視界の中、思い出すのは少し前の過去。

 最初に、婚約者に裏切られた。

『お前の聖女の力が偽物だからだ!』
 
 次に実の兄に見限られた。

『お前は信用できない』

 その中心には、シオンから嫌がらせを受けたと泣く女、アリス。

『あんたの負けよ』

 実際には言われていないが、そう言っているような厭らしい笑み。
 シオンはハッと顔を上げて首を振る。

「知らないわ、あんな国の人間なんか。腐って捨てられてしまえばいいのよ」

 そう吐き捨ててベッドにもぐりこむ。
 自分を捨てた国のことなど、考えている時間がもったいない。嫌なことを思い出した。
 何度か寝返りを繰り返すこと数分。

(やっぱり眠れない。お水でも飲んでこよう)

 シオンはむくりと起き上がって、椅子の背もたれにかけていたカーディガンを羽織り、部屋のドアを開けた。
 廊下は暗く、昼間のような明るさは当然無い。シオンは月明かりのみを頼りに、1階に続く階段を降り、キッチンに向かった。
 キッチンはウェストと一緒に片付けた時のままだ。
 コップを一つ棚から取り出し、水を入れて飲む。
 
「ふう。……?」

 キッチンからリビングダイニングに続く道が僅か明るい。

(誰かいるの?)

 そっと顔を出して覗くと、暖炉に火がついていた。その前のソファに座る人影がひとつある。その人影の横に立てかけられた棒状の袋。

「ガーラ?」

 名前を呼ぶと、ガーラはこちらを振り向いた。

「シオン?」

 言葉にこそしなかったもののその表情は、何故ここに?と言っているようだった。
 
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