三毛猫、公爵令嬢を拾う。

蒼依月

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第2章

2-1

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 ミカエルが逃げた先は、彼の家だった。森の中にひっそりと佇むウッドハウスの前に、緑の光の一線が走り、直後猫の獣人と彼に抱きかかえられた少女が現れた。
 ルネを抱きなおしながらミカエルが近づくと、ポインセチアのリースを下げたドアは勝手にその鍵を開けた。すす、と滑らかに開いたドアから入ると、まず最初に丸い大木をそのまま切り抜いたような、年輪が美しい丸いテーブルがあり、壁には暖炉が備わっている。暖炉の前にはふかふかのソファが置かれ、ここはミカエルのお気に入りの場所だった。玄関から入って右側に2階へと続く階段があり、ミカエルはまずそちらに向かった。
 2階は部屋が2部屋ある。奥の部屋はミカエルが旅の先々で買ってきたお土産が押し込まれた物置となっていた。階段を上がって手前の部屋の前に止まり、ミカエルが

「開けてくれ」

というと、また扉が勝手に開いた。その部屋の中はベッドと机と椅子、それから申し訳程度の大きさのクローゼットが置かれていた。ミカエルはベッドにルネを優しく寝かせると、彼女の額に手を置き治癒魔法をかけた。これからは何の心配もせずに、彼女の怪我をすべて完璧に治せる。誰に気を使う必要もない。そう思うとミカエルの心の引っ掛かりがすっと取れた気がした。いつも彼女は遠慮して、ミカエルに怪我のすべてを治させてくれなかったのだ。最初からそういう約束だったから仕方のないこととはいえ、彼女の生活があの外道たちクロースティ達を中心に回っていると思うと腸が煮えくり返る。彼女は常にクロースティ達の顔色を伺っていた。
 それももう終わりだ。

「君が寝ている間に、君を取り巻く環境は一気に変わったよ。早く馴染んでくれると良いのだが」

 怪我を治し終えたミカエルは、ルネの自傷行為を止める時、彼女の腕につけてしまった自身の手の痕も消えていることを確認して、部屋を静かに出て行った。


□□□□□□□□


 ルネが目覚めたのは、それから約丸1日後のことだった。時刻は日付が変わろうとしている。ルネはしばらくの間ぼうっと天井を見上げていたが、徐々に意識が覚醒しそれが自分の部屋の天井でないことに気付くとハッとして飛び起きた。
 辺りを見回す。知らない場所だ。知らない匂いがする。それはどことなく屋敷の庭の匂いに似ていた。

(お義母様の好きな香水の香りがしない。…っ…記憶が曖昧だわ。最後に見たのは…あれは、ミカエル様?)

 最後に見た顔はミカエルということを思い出して、ルネは再度部屋を見回した。

(ここ、まさか)

 ルネはベッドから立ち上がって、部屋のドアを開けようとドアノブに手をかけた。その時、自分の体の違和感に気付く。痛みが全くない。いつもはクロースティやディストールに付けられた傷で体のどこかしらが痛んでいるはずなのに。

「まさか、これもミカエル様が?」

 ルネはゆっくりドアノブを回す。それから恐る恐る部屋の外に顔を出して誰もいないことを確認すると、外へ出た。ミカエルがどこかにいるはずだ。根拠のない確信を胸に、階段を下りる。暖炉の火が燃える音がする。音のするほうへ近づくと、ミカエルが暖炉の前のクッションの上で丸くなって眠っていた。

「み、ミカエル様??眠っているのですか?」

 ミカエルのすぐそばまで寄って腰を落として観察すると、彼の肩が規則的に上下しているのが確認できた。








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