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第2章
2-24
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ミカエルが走りだす。ホーンベアは向かってくるミカエルに対して、何度も攻撃をしているがかわされ続けている。ミカエルが相手の間合いに入り込む。彼のスピードは全く衰えていなかった。
「君で終わりだ」
『グルルルラアアア』
しかし、ホーンベアは仲間を傷つけられ、怒りで我を失っているのか所構わず自分の腕や頭をぶつけ始めた。ミカエルの攻撃が一度、その凶暴な腕によってはたかれた。
「!」
ホーンベアは辺りの木々をなぎ倒し始めた。その攻撃の手は、ルネが座っている木にも迫った。
ミカエルが振り返る。ルネの視線は若干の恐怖の色を見せて、真下で錯乱するホーンベアに向けられている。
「ルネ!」
ミカエルはこの時初めて焦りを見せた。
「ルネを守れ!!」
咄嗟に口から出たのは防御魔法の詠唱だった。ルネに向けてかざした手のひらから、2重の魔方陣が顕現、ルネの周りが球体の壁に覆われた。直後、ホーンベア振り回した腕が偶然にもルネの座る木の幹に当たった。木が大きく揺れる。
「きゃあああっ」
悲鳴に反応したホーンベアがルネに気付き、彼女が座っている木に目掛けてその腕を振り回した。木は凄まじい衝撃に耐えきれず、根元から折れかかり、大きくしなった。
(落ちる!!)
ルネがぎゅっと目を閉じたとき、昨日も感じた浮遊感に襲われる。それがミカエルの魔法だと気付いた時、ルネはもう彼の腕に抱かれていた。
「み、ミカエル様!!」
目を開いて彼の姿を確認する。いつものペリドットに、少しだけ緊張した雰囲気が感じられた。
「ルネ、怪我は」
「い、いいえ、ありませんわ。ミカエル様が守ってくださったから」
「そうか…。ルネ」
「はい?」
なんだか先程と少し声色が違う。元々低く静かな声が、さらに低く唸るような雰囲気になっている。
「すまない、少し時間がかかるかもしれない」
「それは構いませんが…あの、ミカエル様、大丈…」
ドサ、と視界が一段下がったのはその時だった。ルネは最初何が起こったのか分からず、自分がミカエルに抱えられながら地面に尻をついていると気付いた時、彼の異常に息を止めた。
「ミカエル様……?あ、あの、背中…」
膝をつくミカエルの背中は、ホーンベアの爪痕がはっきりと刻まれ、そこから真っ赤な血が流れ出ていた。
「まさか、私を受け止めた時に付けられたんじゃ」
「問題ない。これくらいなら、まだ大丈夫だ」
「駄目です!嫌、嫌ですわミカエル様!」
ミカエルはルネを倒れた木の影に座らせ、話も聞かずに行こうとする。その袖を引っ張って、ルネはミカエルを引き止めた。
「ミカエル様!お願い、行かないで」
「何故?私なら本当に問題ないよ」
「今は良くても、戦って動いたら傷が広がってしまいます!私にだってそれくらいわかりますわ!」
「行かなくては君を守れない。村のこともだ」
「でも!」
「ルネ」
ミカエルがいつものようにルネの頭に手を置く。とても優しく、そして冷たかった。
「ミカエル様、お願いします。行かないでください」
ルネはその冷たい手を取って、熱を分け与えるように握って視線を上げた。下を向いていると泣いてしまいそうで、必死にミカエルの双眸を見つめ返した。
「その願いは聞けない。すまない」
やんわりと手が離され、拒絶の意思を見せられる。ルネはそれ以上食い下がることが出来なかった。確固たる意志を、ミカエルのペリドットの瞳から汲み取ってしまった。
ミカエルの中でこの戦闘を続けることは決定事項だった。それはルネにも覆せない。
(こんなに優しく振り払うなんて、残酷だわ。ミカエル様…。でも、嫌よ…あの傷が広がって、気を失ってしまったらどうするの?私、もうミカエル様無しの生活なんて考えられないのに……嫌、嫌、嫌!)
「ミカエル様!!」
ぶわっという空気の震えと共に、ミカエルは背後にとてつもない魔力を感じた。振り返ろうとした瞬間、体が浮きルネのもとに戻された。
「これは……っ、ルネ?」
「君で終わりだ」
『グルルルラアアア』
しかし、ホーンベアは仲間を傷つけられ、怒りで我を失っているのか所構わず自分の腕や頭をぶつけ始めた。ミカエルの攻撃が一度、その凶暴な腕によってはたかれた。
「!」
ホーンベアは辺りの木々をなぎ倒し始めた。その攻撃の手は、ルネが座っている木にも迫った。
ミカエルが振り返る。ルネの視線は若干の恐怖の色を見せて、真下で錯乱するホーンベアに向けられている。
「ルネ!」
ミカエルはこの時初めて焦りを見せた。
「ルネを守れ!!」
咄嗟に口から出たのは防御魔法の詠唱だった。ルネに向けてかざした手のひらから、2重の魔方陣が顕現、ルネの周りが球体の壁に覆われた。直後、ホーンベア振り回した腕が偶然にもルネの座る木の幹に当たった。木が大きく揺れる。
「きゃあああっ」
悲鳴に反応したホーンベアがルネに気付き、彼女が座っている木に目掛けてその腕を振り回した。木は凄まじい衝撃に耐えきれず、根元から折れかかり、大きくしなった。
(落ちる!!)
ルネがぎゅっと目を閉じたとき、昨日も感じた浮遊感に襲われる。それがミカエルの魔法だと気付いた時、ルネはもう彼の腕に抱かれていた。
「み、ミカエル様!!」
目を開いて彼の姿を確認する。いつものペリドットに、少しだけ緊張した雰囲気が感じられた。
「ルネ、怪我は」
「い、いいえ、ありませんわ。ミカエル様が守ってくださったから」
「そうか…。ルネ」
「はい?」
なんだか先程と少し声色が違う。元々低く静かな声が、さらに低く唸るような雰囲気になっている。
「すまない、少し時間がかかるかもしれない」
「それは構いませんが…あの、ミカエル様、大丈…」
ドサ、と視界が一段下がったのはその時だった。ルネは最初何が起こったのか分からず、自分がミカエルに抱えられながら地面に尻をついていると気付いた時、彼の異常に息を止めた。
「ミカエル様……?あ、あの、背中…」
膝をつくミカエルの背中は、ホーンベアの爪痕がはっきりと刻まれ、そこから真っ赤な血が流れ出ていた。
「まさか、私を受け止めた時に付けられたんじゃ」
「問題ない。これくらいなら、まだ大丈夫だ」
「駄目です!嫌、嫌ですわミカエル様!」
ミカエルはルネを倒れた木の影に座らせ、話も聞かずに行こうとする。その袖を引っ張って、ルネはミカエルを引き止めた。
「ミカエル様!お願い、行かないで」
「何故?私なら本当に問題ないよ」
「今は良くても、戦って動いたら傷が広がってしまいます!私にだってそれくらいわかりますわ!」
「行かなくては君を守れない。村のこともだ」
「でも!」
「ルネ」
ミカエルがいつものようにルネの頭に手を置く。とても優しく、そして冷たかった。
「ミカエル様、お願いします。行かないでください」
ルネはその冷たい手を取って、熱を分け与えるように握って視線を上げた。下を向いていると泣いてしまいそうで、必死にミカエルの双眸を見つめ返した。
「その願いは聞けない。すまない」
やんわりと手が離され、拒絶の意思を見せられる。ルネはそれ以上食い下がることが出来なかった。確固たる意志を、ミカエルのペリドットの瞳から汲み取ってしまった。
ミカエルの中でこの戦闘を続けることは決定事項だった。それはルネにも覆せない。
(こんなに優しく振り払うなんて、残酷だわ。ミカエル様…。でも、嫌よ…あの傷が広がって、気を失ってしまったらどうするの?私、もうミカエル様無しの生活なんて考えられないのに……嫌、嫌、嫌!)
「ミカエル様!!」
ぶわっという空気の震えと共に、ミカエルは背後にとてつもない魔力を感じた。振り返ろうとした瞬間、体が浮きルネのもとに戻された。
「これは……っ、ルネ?」
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