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第2章
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「ルネ、魔法を使った時の記憶を覚えているか?」
朝食を食べていた時、唐突にミカエルがそう尋ねてきた。
あの任務から2日経っている今日、街の見物もゆっくり終えて、昨日の夕方帰って来たところだった。
ルネは、申し訳なさそうに眉を下げた。
「あの時の記憶はモヤがかかったようにはっきりとしなくて……。ただミカエル様が居なくなることを思ったら凄く怖くなって、そこから身体中を何かが駆け巡る感覚がしたのを覚えています」
「そうか。恐らくそれは魔力が体の神経を巡っている感覚だ。今までは放出する魔力が少なくて感じられなかったんだろう。そしてリミッターをかけていた魔法に対する恐怖より、私を失う恐怖が上回った事で一気に放出されたんだろう」
「なるほど」
確かにあの時はミカエルのことだけ考えていて、自分の魔法が怖いという感情は頭の片隅にも無かった、とルネは思案する。
ミカエルはルネを見つめた。
「ルネ。その感覚を忘れないようにしよう。暴走状態だったとはいえ、意識が全く無かったわけじゃなくて良かった。その感覚を覚えて操れるようになれば、自然と魔法も使えるようになる」
「分かりました。頑張ります」
「とりあえず今日から練習をやってみよう」
「はい!」
朝食を済ませ、少し部屋の掃除をしたらお昼前になった。
ミカエルはルネを家の前に呼んで、あの時の感覚を思い出すように言った。
「魔力暴走を起こしても、私がまたおさめるから問題無い。いつでもいいぞ」
「わ、分かりました」
ミカエルは少しだけ楽しそうだ。
ルネはあの時の、体中を何かが駆け巡る感覚を思い出す。
(大丈夫、怖くない。魔法を使うことより、もっと怖いことを知った私ならできるはず!)
すると、体が指先から暖かくなって行くような感覚を覚えた。ルネは無意識に、今だ、と思った。魔法陣を顕現させる。
「風よ、我の視界に見える木々に揺らぎを与えよ!」
ビュオォッ、という音と共に、膝をつくほどの旋風がミカエルの身体を抜けていった。そして木の枝をしならせ、ワサワサと木の葉同士がぶつかって音が鳴る。
確実に、今までとは比べ物にならないくらいの魔法が繰り出された。
ルネは驚いて口を開けたまま立ちつくした。
足元に顕現していた魔法陣が消えると、その風は自然と止んだ。
肩で息をするルネは、ようやく正気を取り戻してかろうじてミカエルを見やる。
ミカエルは、そのペリドットを大きく見開いて、こちらを見ていた。
「ルネ、今のは……」
「あ、はい、私がやりました……」
「そうか」
ミカエルはそうか、そうかと何度も噛み締めるように言って、そして急に立ち上がったと思ったらルネの首に両腕を回して抱きしめた。
「ルネ!君は今、自分の殻を自ら破ったんだ!君は素晴らしいことをやってのけたんだよ。私は心から嬉しく思うよ!」
はははっ、とこんなに声を上げて笑うミカエルを、ルネは初めて見たかもしれないと思った。目尻に皺を寄せ、口を大きく開けて喜んでいる。
(私のことで、こんなにも喜んでくれる人がいるなんて、今まで考えもしなかった。嬉しい。嬉しいっ)
「ミカエル様!私、やりましたわぁ!!」
ルネは抱きつくミカエルを抱きしめ返し、その場で体をひねって喜んだ。
こんなに感情が高ぶったのはいつ以来だろう。
もう覚えてないほど昔の事だ。
朝食を食べていた時、唐突にミカエルがそう尋ねてきた。
あの任務から2日経っている今日、街の見物もゆっくり終えて、昨日の夕方帰って来たところだった。
ルネは、申し訳なさそうに眉を下げた。
「あの時の記憶はモヤがかかったようにはっきりとしなくて……。ただミカエル様が居なくなることを思ったら凄く怖くなって、そこから身体中を何かが駆け巡る感覚がしたのを覚えています」
「そうか。恐らくそれは魔力が体の神経を巡っている感覚だ。今までは放出する魔力が少なくて感じられなかったんだろう。そしてリミッターをかけていた魔法に対する恐怖より、私を失う恐怖が上回った事で一気に放出されたんだろう」
「なるほど」
確かにあの時はミカエルのことだけ考えていて、自分の魔法が怖いという感情は頭の片隅にも無かった、とルネは思案する。
ミカエルはルネを見つめた。
「ルネ。その感覚を忘れないようにしよう。暴走状態だったとはいえ、意識が全く無かったわけじゃなくて良かった。その感覚を覚えて操れるようになれば、自然と魔法も使えるようになる」
「分かりました。頑張ります」
「とりあえず今日から練習をやってみよう」
「はい!」
朝食を済ませ、少し部屋の掃除をしたらお昼前になった。
ミカエルはルネを家の前に呼んで、あの時の感覚を思い出すように言った。
「魔力暴走を起こしても、私がまたおさめるから問題無い。いつでもいいぞ」
「わ、分かりました」
ミカエルは少しだけ楽しそうだ。
ルネはあの時の、体中を何かが駆け巡る感覚を思い出す。
(大丈夫、怖くない。魔法を使うことより、もっと怖いことを知った私ならできるはず!)
すると、体が指先から暖かくなって行くような感覚を覚えた。ルネは無意識に、今だ、と思った。魔法陣を顕現させる。
「風よ、我の視界に見える木々に揺らぎを与えよ!」
ビュオォッ、という音と共に、膝をつくほどの旋風がミカエルの身体を抜けていった。そして木の枝をしならせ、ワサワサと木の葉同士がぶつかって音が鳴る。
確実に、今までとは比べ物にならないくらいの魔法が繰り出された。
ルネは驚いて口を開けたまま立ちつくした。
足元に顕現していた魔法陣が消えると、その風は自然と止んだ。
肩で息をするルネは、ようやく正気を取り戻してかろうじてミカエルを見やる。
ミカエルは、そのペリドットを大きく見開いて、こちらを見ていた。
「ルネ、今のは……」
「あ、はい、私がやりました……」
「そうか」
ミカエルはそうか、そうかと何度も噛み締めるように言って、そして急に立ち上がったと思ったらルネの首に両腕を回して抱きしめた。
「ルネ!君は今、自分の殻を自ら破ったんだ!君は素晴らしいことをやってのけたんだよ。私は心から嬉しく思うよ!」
はははっ、とこんなに声を上げて笑うミカエルを、ルネは初めて見たかもしれないと思った。目尻に皺を寄せ、口を大きく開けて喜んでいる。
(私のことで、こんなにも喜んでくれる人がいるなんて、今まで考えもしなかった。嬉しい。嬉しいっ)
「ミカエル様!私、やりましたわぁ!!」
ルネは抱きつくミカエルを抱きしめ返し、その場で体をひねって喜んだ。
こんなに感情が高ぶったのはいつ以来だろう。
もう覚えてないほど昔の事だ。
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