成り上がれ、最強の魔剣士〜失墜した冒険者は騎士としてリスタートします〜

銀雪

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第一章 帝国脱出

『第一話 英雄になったSランク冒険者』

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「ティッセ、そっちに向かったぞ! 得意の魔法剣をぶちかませ!」
「分かりました! 火の精霊よ、我の求めに応じて剣に宿れ。喰らえ【烈火炎獄】!」

 水の力で水色に波打つ剣を、こちらに向かって突進してくるドラゴンに一閃した。
 ドラゴンは水色だから火魔法の剣は効くだろ。
 俺の予想を肯定するようにドラゴンの体が跳ねて、苦しそうな呻き声を上げる。

「GYAAAAAAAAA!」

 やがて山中に響きわたるような断末魔を上げながらドラゴンは地に伏す。
 リーデン帝国冒険者ギルドの大勝利だ。
 勝利したと分かった仲間の冒険者たちが歓声を上げる。

 そんな中、俺は四日間ほどまともに眠っていない体を横たわらせた。
 この国のギルドは俺を潰す気なんじゃないかと邪推してしまうほど扱いが雑だ。

 この前は、洞窟を三日間の徹夜で踏破した直後に大きなモンスターと戦闘させられたし。
 ああ……柔らかい布団が恋しいぜ。

「おし、素材を剥ぎとったら他の部分は燃やせ。ほらティッセ、グズグズしないで火魔法!」
「分かっています。火の精霊よ、我の求めに応じて燃やし尽くせ。【焔】」

 俺は素早く起き上がって火魔法を行使した。
 ギルドマスターでSSランクの冒険者でもあるハンルさんの指示で、ひたすら燃やしていく。

 ハンルさんは筋骨隆々とした偉丈夫で、この国で一番の戦士らしい。
 人を刺し殺せそうなほど刺々しい金色の髪と、迫力ある緑金色の瞳を持つレジェンドだ。

 俺はSランク冒険者の“魔剣士”としてギルドで働いている。
 普通はパーティーを組んで行動する冒険者だが、俺のメンバーはハンルさんだけ。
 ゆえに直接の上司もハンルさんということだ。
 俺がこのようにギルドマスター直属の部下になっているのには、いくつかの理由がある。

 まず、魔法を使うには精霊の力を借りる必要があるが、精霊はそれぞれ性格が異なる。
 例えばハンルさんみたいに剛腕な人物は土の精霊が好む。
 一方、火の精霊や水の精霊はハンルさんのような人は好まないため、力を貸さない。
 つまり火魔法や水魔法を使えないということだ。

 そして、剣と魔法を合体させて戦う人のことを魔剣士という。
 精霊を剣に効率よく宿らせなければいけないため、非常に精密な作業が必要になる。
 そのため、魔剣士は各国に一人いればいいくらい貴重な存在なのだ。

 だからこそ、魔剣士を見つけた国は冒険者や騎士の高待遇で囲い込みにかかる。
 俺の場合は、ギルドマスターとパーティーを組めるというのが好待遇に当たるはずだ。

「よし、奥に川があるから水を飲んで来い。ティッセはすぐ戻って来いよ!」
「分かっています。素材を運ぶからですよね?」

 俺は返事を待たずに川に向かう。
 待たなくてもどうせ正解だし、何より喉が渇きすぎて、疲れすぎて辛い。
 川面に顔を映して見ると、汗で湿った赤い髪と徹夜続きで疲れ切った黄色の瞳が映った。

 ああ……俺はこんなに疲れていたんだな。
 そう思っても、今回の場合は途中で離脱することが出来ようはずもない。
 ドラゴンを斬った俺は、皇帝主催の戦勝パレードへ参加しなければいけないからだ。
 豪華絢爛な馬車に乗って王都中を周っていく。

「見て……ギルドで二番目に強いと言われるSランクの魔剣士、ディール様よ!」
「やっぱりカッコいいわね。特にあの真っ赤な髪が凛々しいわ」

 俺が道筋に並ぶ女性たちに微笑むと、黄色い歓声がパレード用の絢爛な馬車を包む。
 正直、疲れているからさっさと休ませてほしいが、当然のように上手く事は運ばない。
 パレードが終われば、今度は皇帝への謁見が行われてしまうのである。

「Sランク冒険者、ティッセ=レッバロン。面を上げよ」
「ははっ。失礼いたします」

 顔を上げると、目の前にいたのはリ―デン帝国の十五代目の皇帝、オルーマン=リ―デンだ。
 やけにご機嫌そうな顔をしているな。
 今までで一番ワガママな皇帝って言われているし……皇帝の考えはよく分からない。

「此度の活躍を認めて、褒美の金貨五〇〇枚を与えよう」
「ははっ、ありがたき幸せ。謹んでお受け取りいたします」

 皇帝が宣言すると、脇に控えていたダイマス=イエール宰相が袋を持って近寄ってきた。
 彼は十三歳という若さで宰相に就任し、各国との関係を瞬く間に改善した敏腕宰相と聞く。
 それにしても、羨ましいほど顔が整っているな。

「これが褒美だ。受け取るがよい。此度の働き、実に見事であった」
「はっ、失礼いたします」

 いけない……ダイマス宰相に気を取られ過ぎていた。
 皇帝の気分を害した者はすぐに処刑されてしまうため、慎重に慎重を重ねていくしかない。
 全く……皇帝への謁見だけは何度やっても慣れないぜ。

「三日後にドラゴン討伐記念のパーティーを行う。我とともに勝利の美酒に酔おうぞ!」
「はい。お言葉に甘えて楽しませていただきます」

 礼をしながらも、俺はどこか釈然としない思いを抱えていた。
 ちょっと……大げさ過ぎないか?
 しかし皇帝主催のパーティーを断れるわけもない。
 俺は曖昧な笑みを浮かべつつ、内心では早く仮眠を取りたいと思っていた。
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