成り上がれ、最強の魔剣士〜失墜した冒険者は騎士としてリスタートします〜

銀雪

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第二章 第三騎士団、始動

『第十九話 迷惑宰相』

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「少し聞きたいことがあるんだけど……質問してもいいかしら?」
「答えを聞いたら去ると約束するのならばいいだろう」

 方法はどうであれダイマスの命を握っているからか、門番は非常に高圧的だった。
 イリナがわずかに顔を歪める。

 門番の主張は最初から“べネック団長を除く俺たちがこの国から去れ”の一点張りだ。
 相手が交渉のカードとして使ってくるのも分かってはいたが、予想以上に厄介である。
 こちら側は状況を聞いた後で交渉するつもりなのに、それが出来なくなってしまうからな。

「ふざけるな! 話も聞かずに一方的に!」

 今まで黙っていたべネック団長が怒鳴ると、門番は冷ややかな目をして剣を動かす。
 するとダイマスがわずかに歯を食いしばった。
 少しでも動けば彼の命が消えてしまう位置まで剣を動かしたのである。

「自分たちがどんな立場にあるのか分かっているか? お前らの答え次第でこの命は……」

 そう言って、剣を持っている手とは逆の手で自分の首を切る真似をした。
 べネック団長が苛立ちをぶつけるように道路を蹴るのを見ながら、アリアが頭を下げる。
 まさにこの場では最適解の行動だ。

「私たちの団長の態度により不愉快になられたことをお詫びします。申し訳ありません」
「ほぅ? リーデン帝国には話の分かる女性もいるんだな」

 門番の目がわずかに獰猛な光を帯びたとき、彼の失言に気づいた俺は少し笑う。
 アリア、今のは二重の意味でファインプレーだ。

「門番さん、“リーデン帝国には話の分かる女性もいる”。怒りの原因は女性ですか」
「しかもリーデン帝国の女性に何かをされたんですね?」

 俺の言葉から察したのだろう。
 イリナが追い打ちをかけると、門番は苦い顔をして顔を逸らした。

「もしそうだとしたら私たちも敵側の人間であることは覆せません。ですがその女とは違う」
「私たちは絶対にあなたたちに不益になるようなことはしませんわ」

 門番はしばらく躊躇っていたようだったが、やがて深い息を吐いてわずかに剣を緩めた。
 まだ解放はされていないが、まずは一歩前進したと言えるだろう。

「俺たちがどうしてリーデン帝国に憎しみを抱いているのかだっけ? いいぜ、答えてやる」

 門番はわずかに微笑を浮かべた。
 もちろん目は笑っておらず、彼の目には先ほどよりも強い憎しみが宿っている。

「六日前、リーデン帝国の新宰相だというフーナ=カイザーという女性が王城に現れた」
「フーナ=カイザーか……」

 ダイマスが首を傾げているので、恐らく皇帝がどこかの市井で見つけた人材であろう。
 そういえば六日くらい前も、俺たちは国境にある門の前で戦ってなかったっけ?
 俺たちは門に行くと戦う羽目になるのだろうか。

「彼女はヘルシミ王国がリーデン帝国の犯罪者を匿っているというんだぞ!?」
「なるほど。その後に、フーナ=カイザーなる人物がやらかしたんですね?」

 イリナが即座に尋ねる。
 正直、今の話だけでリーデン帝国は恨まれて当然だと思うんだけどな。
 まだ続きがあるのか。
 半ば呆れていると、門番は続けて解説を始める。

「国王は否定したんだがな……あの女は信じずに迷惑料として金銭を要求してきたんだ」
「きっと国家予算に匹敵するんでしょうね……」

 アリアが遠い目をして呟いた。
 俺のときのようにありもしない罪をでっち上げたのだから、目的は金銭の可能性が高い。
 恐らくアリアの予想は正しいのであろう。

「もちろん国家予算三年分なんて払えるわけもない。そう言ったら奴は何をしたと思う?」
「……戦争を予言するとかですかね」

 あの皇帝は戦争推進派だから、外交で安全を保っていたダイマスを解雇したのだ。
 今回の事件は戦争開始の切り札としてはちょうどいいからな。
 しかし、門番から聞かされた言葉は俺たちの予想を大幅に超えていた。

「払えないと分かると、俺の母を含む王城で働いていたメイドを奴隷として攫っていった」
「はぁ!?」

 イリナが素っ頓狂な声を上げる。
 彼女だけでなく、俺たちも下手をすれば大声で叫んでいたであろう。
 それほどまでにフーナ=カイザーが行った行為は非人道的であり得ない行為だと言えた。
 メイドを奴隷として攫うだって!?

「だから王城で働いていたメイドを家族に持つ人たちは、全員リーデン帝国を恨んでいるんだ」
「そんなことが……」

 べネック団長も打つ手なしといった表情で天を仰いでいた。
 これは……敵の策略にやられたな。
 フーナ=カイザーが横暴だったのは、ヘルシミ王国での印象を最悪にするためだろう。
 そうすれば後から来る俺たちが孤立するから。

 つまり、俺たちがまだヘルシミ王国に入っていないことを察していたということか。
 謎の新宰相、案外油断できない相手なのでは?

「それでジューンはどうするんだ? もうすぐここには騎士団の連中が来てしまうぞ」
「何だと!?」

 べネック団長の冷たい言葉を聞いた門番は、この時初めて不意を突かれた声を出した。
 確かにべネック団長と話していたもう一人の門番はいない。
 さっきから声が聞こえないとは思っていたが、まさか伝言係にしていたとは。

「そういえばお前だけはヘルシミの人間だったな。俺としたことがすっかり眼中になかった」
「つい我を忘れて怒鳴ってしまったからな。団長として不甲斐ない」
「お前の団長としての目標はもしかしてあの方か?」

 門番――ジューンはダイマスから離れ、剣を鞘にしまいながらそう尋ねた。
 今までの口調とはまるで違う真剣な口調。
 べネック団長が答えに窮していると、門の中で誰かがこちらに歩いてくるのが見えた。
 あれは……デールさんか。
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