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第二章 第三騎士団、始動
『第二十六話 王への謁見(Ⅶ)』
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「近衛騎士団の精鋭部隊を破ったか。べネックはいつも儂の想定を超えてくるのぉ」
「まさか本当に戦わせるとは思っていませんでしたよ」
「戦わせるのが一番良いのだ。儂は近衛騎士団の強さを分かっているからな」
ヴィル国王が鋭い視線を向ける。
彼は毎回騎士団を作りたいという人を近衛騎士団と戦わせ、実力を見極めているらしい。
簡単に言えば、先ほどの戦いはテストだったわけだ。
「それにしても、騎士団長と軍師の肩書きを誤解させる戦術は最終兵器だったはず……」
「お言葉ですが、最終兵器を使わないと勝てない相手です」
イザベラがキッパリと言い切った。
意外な評価に全員が固まっていると、イザベラは俺たちを悔しそうに見つめて続ける。
「彼らは全員二つ名持ちです。『緋色の魔剣士』、『緑の剣姫』、『血染めの宰相』」
「さらに『精霊使いの女帝』までおりますゆえ」
ルイザが言葉の後半を引き取る。
紹介された順番に、俺、イリナ、ダイマス、アリアの二つ名であろう。
というかダイマス、お前そんな二つ名を持っていたのか。
「なるほどな。儂も若いことは『悪魔の王太子』と呼ばれた身じゃ。強さは分かっておる」
「はあ、それが四人ですよ。べネックはどうやってスカウトしたのだか……」
「ルイザ近衛騎士団長、リーデン帝国では過剰な強さは恐れを生み出すだけです」
「なるほど……恐れるのは上層部だから、処分対象になるということね……」
イザベラが納得したように手を叩く。
今の情報だけで俺たちの事情が分かったのなら、さすが近衛騎士団の策を練る人物だ。
――策を講じるのって苦手なんだよね。
一回だけ指揮を担当したことがあるが、同伴のギルドマスターがいなかったらヤバかった。
俺は指揮なんて執れる器じゃないなって思ったわ。
昔のことを考えていると、突然妙な威圧感が俺たちを荒れ狂う濁流のごとく襲ってきた。
威圧感を出しているのは……ヴィル国王か。
この人も【威圧】の能力持ちなんだな。
リーデン帝国の皇帝に謁見していた時とは違う種類の畏怖が俺を襲っている。
しかもかなりの上級者だ。
ギルドマスターの威圧に耐えられるように訓練した俺でも畏怖してしまうんだから。
当然、ヴィル国王の隣にいるルイザたちが気づかないはずはない。
「国王様、能力を発動して何をするおつもりですか?」
「話が変わるが、君たちの能力を教えてほしいのだ。ちなみに私は【威圧】だぞ?」
「どれだけ勘が鈍くとも分かります。説明するまでもないでしょう」
イザベルが呆れたような表情で言った。
「はい。私の能力は【防御】です」
自分の能力を明かした国王に、追随しないなどという選択肢があろうはずもない。
最初に自身の能力を明かしたのはべネック団長だ。
国境の門の前で戦った時に見せた粒は、防御用のものだったのか。
その後は俺、アリア、イリナ、デールさんの順番で能力を発表し、ダイマスの番になる。
そういえば、ダイマスの能力を聞くのは初めてだな。
七日間以上、一緒にいたのに。
しかしダイマスは眉をひそめてヴィル国王に視線を向ける。
「あの……教会に連れていってくれませんか? 僕の能力は見てもらった方が早いので」
「教会……何か特別なものがあるか?」
ルイザが首を傾げる。
わざわざ教会に行くということは、神に関係ある能力なのだろうか。
「構わん。アランは急いで馬車の準備をしてくれ。護衛はべネックたちに任せよう」
「アラン……?」
イザベラが怪訝そうに言ったところで、扉の近くから「分かりました」という声が聞こえた。
背後を振り返ると、黒服に身を包んだアランが立っている。
「……っ!? いつからいたのよ!」
「模擬戦が終了したところです。二つ名について話していた時に入らせていただきました」
あの時に!?
問いを投げかけたイザベラも信じられなかったのか、目を見開くだけだった。
その反応を見たアランは一礼してから退室していく。
彼と入れ替わるようにして、一組の男女が謁見の間に入ってきた。
「父上、用事とは何でしょう?」
そう尋ねたのは男――少年の方だ。
短く切り揃えられた暗めの茶髪に紫色の瞳を持ち、どこか暗い雰囲気を纏っている。
ヴィル国王を父上と呼んでいるから、この少年は王子か。
「教会に行くからな。定期連絡を済ませておけ」
「そういうことですか。分かりました」
「私まで呼んだのはどうしてです? せっかくアレッサとお茶会をしておりましたのに」
今度は女――女性の方が質問を投げかける。
隣にいる少年とは違い、眩いばかりに輝くロングの金髪に青い瞳を持つ女性だ。
まるでエルフのように容姿が整っている。
ヴィル国王はチラリと少年を一瞥してから、困ったような表情で口を開く。
「たまには儂と一緒にいてくれぬか? 最近はアレッサに付きっ切りではないか」
「そうですね。王太子たる僕を放ってアレッサばかり構っている。まあ、能力主義のようですし?」
少年がどこか大人びた口調で言う。
その声色は半ば諦めているようであり、半ば自分を納得させようとしている響きがあった。
「ミックザム、客人の前だぞ」
「ルナお母様と馬車に乗るのは納得しかねますが……報告がありますからしょうがない」
「ミックザム!?」
ルナと呼ばれた女性が金切り声を上げた。
アリアが肩をビクッと震わせるが、ミックザム少年は飄々とした顔つきで退室していく。
でも……俺は見逃すことができなかった。
無表情に見えたミックザム少年の瞳に燃えていた、悲しみと嫉妬の炎を。
「まさか本当に戦わせるとは思っていませんでしたよ」
「戦わせるのが一番良いのだ。儂は近衛騎士団の強さを分かっているからな」
ヴィル国王が鋭い視線を向ける。
彼は毎回騎士団を作りたいという人を近衛騎士団と戦わせ、実力を見極めているらしい。
簡単に言えば、先ほどの戦いはテストだったわけだ。
「それにしても、騎士団長と軍師の肩書きを誤解させる戦術は最終兵器だったはず……」
「お言葉ですが、最終兵器を使わないと勝てない相手です」
イザベラがキッパリと言い切った。
意外な評価に全員が固まっていると、イザベラは俺たちを悔しそうに見つめて続ける。
「彼らは全員二つ名持ちです。『緋色の魔剣士』、『緑の剣姫』、『血染めの宰相』」
「さらに『精霊使いの女帝』までおりますゆえ」
ルイザが言葉の後半を引き取る。
紹介された順番に、俺、イリナ、ダイマス、アリアの二つ名であろう。
というかダイマス、お前そんな二つ名を持っていたのか。
「なるほどな。儂も若いことは『悪魔の王太子』と呼ばれた身じゃ。強さは分かっておる」
「はあ、それが四人ですよ。べネックはどうやってスカウトしたのだか……」
「ルイザ近衛騎士団長、リーデン帝国では過剰な強さは恐れを生み出すだけです」
「なるほど……恐れるのは上層部だから、処分対象になるということね……」
イザベラが納得したように手を叩く。
今の情報だけで俺たちの事情が分かったのなら、さすが近衛騎士団の策を練る人物だ。
――策を講じるのって苦手なんだよね。
一回だけ指揮を担当したことがあるが、同伴のギルドマスターがいなかったらヤバかった。
俺は指揮なんて執れる器じゃないなって思ったわ。
昔のことを考えていると、突然妙な威圧感が俺たちを荒れ狂う濁流のごとく襲ってきた。
威圧感を出しているのは……ヴィル国王か。
この人も【威圧】の能力持ちなんだな。
リーデン帝国の皇帝に謁見していた時とは違う種類の畏怖が俺を襲っている。
しかもかなりの上級者だ。
ギルドマスターの威圧に耐えられるように訓練した俺でも畏怖してしまうんだから。
当然、ヴィル国王の隣にいるルイザたちが気づかないはずはない。
「国王様、能力を発動して何をするおつもりですか?」
「話が変わるが、君たちの能力を教えてほしいのだ。ちなみに私は【威圧】だぞ?」
「どれだけ勘が鈍くとも分かります。説明するまでもないでしょう」
イザベルが呆れたような表情で言った。
「はい。私の能力は【防御】です」
自分の能力を明かした国王に、追随しないなどという選択肢があろうはずもない。
最初に自身の能力を明かしたのはべネック団長だ。
国境の門の前で戦った時に見せた粒は、防御用のものだったのか。
その後は俺、アリア、イリナ、デールさんの順番で能力を発表し、ダイマスの番になる。
そういえば、ダイマスの能力を聞くのは初めてだな。
七日間以上、一緒にいたのに。
しかしダイマスは眉をひそめてヴィル国王に視線を向ける。
「あの……教会に連れていってくれませんか? 僕の能力は見てもらった方が早いので」
「教会……何か特別なものがあるか?」
ルイザが首を傾げる。
わざわざ教会に行くということは、神に関係ある能力なのだろうか。
「構わん。アランは急いで馬車の準備をしてくれ。護衛はべネックたちに任せよう」
「アラン……?」
イザベラが怪訝そうに言ったところで、扉の近くから「分かりました」という声が聞こえた。
背後を振り返ると、黒服に身を包んだアランが立っている。
「……っ!? いつからいたのよ!」
「模擬戦が終了したところです。二つ名について話していた時に入らせていただきました」
あの時に!?
問いを投げかけたイザベラも信じられなかったのか、目を見開くだけだった。
その反応を見たアランは一礼してから退室していく。
彼と入れ替わるようにして、一組の男女が謁見の間に入ってきた。
「父上、用事とは何でしょう?」
そう尋ねたのは男――少年の方だ。
短く切り揃えられた暗めの茶髪に紫色の瞳を持ち、どこか暗い雰囲気を纏っている。
ヴィル国王を父上と呼んでいるから、この少年は王子か。
「教会に行くからな。定期連絡を済ませておけ」
「そういうことですか。分かりました」
「私まで呼んだのはどうしてです? せっかくアレッサとお茶会をしておりましたのに」
今度は女――女性の方が質問を投げかける。
隣にいる少年とは違い、眩いばかりに輝くロングの金髪に青い瞳を持つ女性だ。
まるでエルフのように容姿が整っている。
ヴィル国王はチラリと少年を一瞥してから、困ったような表情で口を開く。
「たまには儂と一緒にいてくれぬか? 最近はアレッサに付きっ切りではないか」
「そうですね。王太子たる僕を放ってアレッサばかり構っている。まあ、能力主義のようですし?」
少年がどこか大人びた口調で言う。
その声色は半ば諦めているようであり、半ば自分を納得させようとしている響きがあった。
「ミックザム、客人の前だぞ」
「ルナお母様と馬車に乗るのは納得しかねますが……報告がありますからしょうがない」
「ミックザム!?」
ルナと呼ばれた女性が金切り声を上げた。
アリアが肩をビクッと震わせるが、ミックザム少年は飄々とした顔つきで退室していく。
でも……俺は見逃すことができなかった。
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