成り上がれ、最強の魔剣士〜失墜した冒険者は騎士としてリスタートします〜

銀雪

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第三章 訓練と初めての依頼

『第三十五話 初めての依頼①』

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 新設第三騎士団として訓練を始めてから三日後。
 いつも通り魔法の制御などの訓練を受けた俺たちは昼食休憩となった。

「みんなは昼ご飯どこに行く?」
「寮の近くに美味しい定食屋があったわ。値段も安いし私たちにはうってつけじゃない?」
「……」

 イリナの言葉につい反応してしまう。
 四日前、危うく無銭飲食をしそうになったことを思い出して暗い気持ちになるのだ。
 どうして自分が両替をしていないと気づかなかったのか。

 国の治安を守るという名目で作られた騎士団に所属する騎士が犯罪って……。
 本当に助けてくれたセーラには頭が上がらないな。
 そんなことを考えていると、べネック団長にとある人物が近づいていくのに気づいた。

「んっ? あれは誰?」
「べネック団長と親しげに会話を楽しんでいる……ってわけでもなさそうね」

 同じく謎の人物に気づいたダイマスとアリアが揃って首を傾げる。
 二人とも険しい表情をしており、友達や親戚といった関係ではなさそうだ。
 みんなで正体について想像を膨らませていると、突然謎の人物がこちらに視線を向けた。

「なぜか、こっちを見ているわね」
「険しい表情が変わらないということは文句の可能性があるかも」

 ダイマスが不吉なことを呟いた途端、謎の人物が目を大きく見開いて叫んだ。
 彼の視線はダイマスに向けられている。

「あれー? リーデン帝国のダイマス=イエール宰相じゃないですかー。どうしてここに?」
「えっ……ああ! 宰相を解雇されたからさ。それより君こそどうしてここにいるんだい?」
「まあまあ、それより第三騎士団の皆さんですね。私はヘルシミ王国宰相のホラックです」

「初めまして。第三騎士団に入団したティッセ=レッバロンです」
「同じくイリナ=グリードです」
「同じくアリア=グリードと申します。イリナの妹です。これからよろしくお願いしますね」

 それぞれが自己紹介を終えると、ホラック宰相は途端に険しい顔になった。
 珍しくべネック団長も苦い顔をしている。

「皆さんには過酷ですが初任務の通達がありました。ズバリ、氾濫した魔物の討伐です」
「えっと……それって僕たちだけで倒せる数ですか?」

 ダイマスが冷静に問いかける。
 魔物の氾濫は、一度に数百から数千ともいわれる数が押し寄せてくることでも有名だ。
 だから、それを防ぐために魔物を討伐する冒険者という職業があるわけで。

 しかし未だ第三騎士団のメンバーは四人しかいない。
 寮を第二騎士団が使っていたという問題も、国王に相談すると言われたっきりだし……。
 第三騎士団が軽視されている気がするのは俺だけ?

 というか、わざわざ依頼が来るってことは数が多いってことでしょうが。
 少なければ、門を守る騎士が倒してるわ。
 俺の予想を裏付けるように、ホラック宰相は険しい顔のまま口を開く。

「冒険者ギルドも討伐依頼を出してくれてはいるのですが……数が多すぎるんです」
「それじゃ第三騎士団だけじゃ討伐しきれない可能性もありますね」

 べネック団長が厳しい声で漏らすと、ホラック宰相は頷いて手元の資料を見せる。
 そこには、隣国であるフルフス王国の第三騎士団長の署名が書かれていた。

「これは承諾書です。魔物の氾濫が起こると、我が国だけでなく隣国も被害を受けるので」
「リーデン帝国とは逆側の隣国と協力するんですね」

 アリアが静かに呟いた。
 ヘルシミ王国は東側でリーデン帝国、西側でフルフス王国と領土を接している。
 俺たちは東側から入国したから、今回の依頼でヘルシミ王国を縦断することになるな。

「ええ、今回の任務は他国との合同作戦になります」
「新人がいる部隊に対して出すミッションにしては、随分とレベルが高いように思えるが」
「緊急事態なんです。出動できる部隊もここしかないんですよ」

 ホラック宰相が申し訳なさそうに言う。
 数日前から件の第二騎士団を見かけないなと思ってたけど、依頼で留守にしていたのか。
 やっぱり、どの騎士団も忙しいのだろう。

「第一騎士団はどうしたんだ? まさか依頼拒否だなんてことはないよな?」
「国王様が直々に出された依頼を遂行している最中です。今回は正規の拒否ですね」

 第一騎士団長のプライドが高いのはどの国でも同じなのか。
 リーデン帝国でも、第一騎士団長が依頼を拒否したという話をよく聞いたものだ。

「分かった。任務を受けさせていただく」
「助かります。連携も十分に取れていないでしょうから、無理はなさらないように」
「大丈夫だ。新設第三騎士団には連携の練習など必要ない」

 べネック団長が自信満々に胸を張った。
 実質、ダイマスとイリナが前衛、べネック団長が中衛、俺とアリアが後衛だからな。
 連携などしなくても役割は既に決定している。

「相手の騎士団が到着するのはいつだ? まさか待たせるわけにもいかないだろう」
「いえ。相手の騎士団は到着しており、先に魔物の討伐を始めています」

 衝撃の事実を聞いたべネック団長の顔が強張った。
 恐らくは、どこかの騎士団の手が空くまで待ってもらうつもりだったのだろう。
 そして、幸運にも第三騎士団が新設されたから声をかけたというところか。

「明日には出立するぞ。今のうちに準備を整えておけ。アリアはこの後、私のもとに来い」
「分かりました」
「よし、只今をもって訓練を終了する。解散!」

 べネック団長がハッキリとした声で訓練の終了を告げると、アリアが前に進み出た。
 話の内容は杖についてだろう。
 魔法を使うのに杖を持っていないと、精霊使いだとバレて攻撃を喰らいやすくなるからな。
 俺がアリアとともに後衛として控えているとはいえ、全ての攻撃は対処しきれない。
 攻撃のリスクを減らすのは大事なことだ。

 まあ、今は明日の準備を整えて、万全の状態で戦えるようにしないと。
 俺はそう思いながら寮の自室に戻ったのだった。
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