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第三章 訓練と初めての依頼
『第四十話 初めての依頼⑥』
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俺がギルドマスターに縛られている?
やっぱりダイマスの言っていることが理解できず、俺は首を傾げるしかない。
「どういうことだ? さっぱり意味が分からない」
「じゃあこう言おう。君はギルドマスターに邪魔されて、自分の本当の力を把握していない」
「……何だって?」
ギルドマスターが俺の特性などを考えてくれたおかげで、俺はSランクになったはずだ。
それなのに自分の本当の力を把握できていない?
ダイマスは何を言っているのだろうか。
「何を言っているんだ? ギルドマスターがいたから今の俺があったんだぞ?」
「確かに魔剣士のスタイルを勧めたのは彼の功績だけど……特に指揮については違う」
「指揮だと?」
ギルドマスターは、お前に指揮は出来ないからリーダーになるなって言って――あれ?
これってもしかして……。
「その表情は気づいたかな? ギルドマスターは意図的にギリギリの戦いにしたのさ」
「まさか奇策ばかりを勧めてきたのも?」
「ティッセが考えていた正攻法で戦うと、すぐに決着がついてしまうからだよ」
すぐに決着がつくということは、俺に指揮能力があると知らしめることになってしまう。
リーデン帝国の中で一番強い冒険者に指揮能力がある。
帝国側は相当焦ったのだろう。
そして実行された打開案が、ギルドマスターが主導権を握ってギリギリを演出すること。
それどころか、目の前で傷ついた冒険者までも彼らの策だった可能性もある。
自分の指揮で傷ついた人を目の当たりにすれば、大抵の人は指揮に対して自信を失うだろうし。
まさか、あの事件がそこまで計算されていたとは……。
ダイマスが『ギルドマスターに縛られている』って言いたくなる気持ちも分かるってものだ。
「なるほど、事情は分かった。指揮を引き受けよう。ジュリア殿、すみませんが補佐を」
「分かっているわ。私に任せなさい」
ジュリアはそう言うと、剣を突きあげて無詠唱で火柱を起こしてみせた。
ドンという爆発音が辺りに響き、こちらに来ようとしていた魔物は逃げ出していく。
すると、轟音に驚いた様子がない騎士たちが続々とジュリアのもとに集まってきた。
総勢二百人の軍勢だ。
ジュリアは彼らを見渡しながら、凛とした口調で宣言した。
「全員集まったな。我が隊はこれより、『緋色の魔剣士』であるティッセ殿の傘下に入る!」
「ほ、本物のティッセ殿ですか?」
「ああ。ティッセ殿、自己紹介を頼みます」
ジュリアがそう言ったタイミングで、俺は一歩前に踏み出して一礼した。
二百人の訝しげな視線が突き刺さる。
一息ついて自分を落ち着かせてから、ゆっくりと言葉を紡いでいく。
「ティッセ=レッバロンです。今日は皆さんの指揮を担当するのでよろしくお願いします」
「本物か。指揮能力はまだ疑問が残るがな」
「そればっかりは俺にも分かりませんね。皆さんの評価に任せるしかありません」
俺は嫌味おじさんに笑みを浮かべると、ダイマスの方を向き直った。
ここからは全員の力を借りた総力戦だ。
「さっき【ホーリーライト】の正体を掴んだって言ってたけど、あれは何だったんだ?」
「聖属性の怪鳥、ホワイトバードの亜種であるホワイトバード・シャドウだね」
「姿だけでなく気配も消すことができるSランク指定の魔物だな。何でそんな奴が……」
ジュリアが苦々しげに呟く。
特に最終兵器の【ホーリーライト】は強力で、今までSランク冒険者を何人も葬ってきた。
高ランク冒険者の死因ランキング第一位の非常に危険な魔物である。
「分かった。とりあえずジュリア隊百は東で戦っているシルさんっていう人のところへ」
「一体でも多く魔物を減らしましょう」
アリアが補足すると、ジュリアと俺から見て左半分の兵士たちが鬨の声を上げた。
問題は残りの百人だな。
状況的に嫌味……というか難癖おじさんを部隊長に据えるのが適任だが、指示に従わない可能性がある。
リスキーだが……やるしかないのか?
躊躇していると、間の悪いことにジュリアが先手を打ってきてしまった。
こうなったら選択肢は一つしかない。
「ティッセ殿、残りの百人はどうするんだ?」
「そこにいる銀色の鎧の方に率いてもらいます。そちらの百人は北側へ行ってください」
「はっ」
短く返事をしながらも、明らかに不機嫌そうな難癖おじさん。
だから北側に向かってもらったのだが。
北側は危険な魔物が多い地帯なので、俺の指示に従わなかったら確実に死ぬだろうな。
そんな場所に他国の部隊を送るのは非人道的かもしれない。
しかし、難癖おじさんたちにホワイトバード・シャドウの相手をさせる方が圧倒的にマズイ。
最悪の場合は全滅もあり得る。
そうならないために、俺たち四人でホワイトバード・シャドウの相手をするしかないのだ。
「皆さん、ティッセの指示は分かりましたね? それでは行動開始!」
「おうっ!」
まず声を上げて動き出したのは、意外にも難癖おじさんだった。
俺の顔を見たくなかっただけかもしれないが、戦闘になると雰囲気が変わるのはいいな。
それだけ集中力などが上がったということだ。
続いてジュリアたちの部隊が動き出し、その場には俺たち四人だけが残された。
「よし、俺たちはホワイトバード・シャドウを倒すぞ」
俺がそう言うと、三人は揃ってキョトンとした顔を浮かべた。
あれ……俺、変なこと言った?
やっぱりダイマスの言っていることが理解できず、俺は首を傾げるしかない。
「どういうことだ? さっぱり意味が分からない」
「じゃあこう言おう。君はギルドマスターに邪魔されて、自分の本当の力を把握していない」
「……何だって?」
ギルドマスターが俺の特性などを考えてくれたおかげで、俺はSランクになったはずだ。
それなのに自分の本当の力を把握できていない?
ダイマスは何を言っているのだろうか。
「何を言っているんだ? ギルドマスターがいたから今の俺があったんだぞ?」
「確かに魔剣士のスタイルを勧めたのは彼の功績だけど……特に指揮については違う」
「指揮だと?」
ギルドマスターは、お前に指揮は出来ないからリーダーになるなって言って――あれ?
これってもしかして……。
「その表情は気づいたかな? ギルドマスターは意図的にギリギリの戦いにしたのさ」
「まさか奇策ばかりを勧めてきたのも?」
「ティッセが考えていた正攻法で戦うと、すぐに決着がついてしまうからだよ」
すぐに決着がつくということは、俺に指揮能力があると知らしめることになってしまう。
リーデン帝国の中で一番強い冒険者に指揮能力がある。
帝国側は相当焦ったのだろう。
そして実行された打開案が、ギルドマスターが主導権を握ってギリギリを演出すること。
それどころか、目の前で傷ついた冒険者までも彼らの策だった可能性もある。
自分の指揮で傷ついた人を目の当たりにすれば、大抵の人は指揮に対して自信を失うだろうし。
まさか、あの事件がそこまで計算されていたとは……。
ダイマスが『ギルドマスターに縛られている』って言いたくなる気持ちも分かるってものだ。
「なるほど、事情は分かった。指揮を引き受けよう。ジュリア殿、すみませんが補佐を」
「分かっているわ。私に任せなさい」
ジュリアはそう言うと、剣を突きあげて無詠唱で火柱を起こしてみせた。
ドンという爆発音が辺りに響き、こちらに来ようとしていた魔物は逃げ出していく。
すると、轟音に驚いた様子がない騎士たちが続々とジュリアのもとに集まってきた。
総勢二百人の軍勢だ。
ジュリアは彼らを見渡しながら、凛とした口調で宣言した。
「全員集まったな。我が隊はこれより、『緋色の魔剣士』であるティッセ殿の傘下に入る!」
「ほ、本物のティッセ殿ですか?」
「ああ。ティッセ殿、自己紹介を頼みます」
ジュリアがそう言ったタイミングで、俺は一歩前に踏み出して一礼した。
二百人の訝しげな視線が突き刺さる。
一息ついて自分を落ち着かせてから、ゆっくりと言葉を紡いでいく。
「ティッセ=レッバロンです。今日は皆さんの指揮を担当するのでよろしくお願いします」
「本物か。指揮能力はまだ疑問が残るがな」
「そればっかりは俺にも分かりませんね。皆さんの評価に任せるしかありません」
俺は嫌味おじさんに笑みを浮かべると、ダイマスの方を向き直った。
ここからは全員の力を借りた総力戦だ。
「さっき【ホーリーライト】の正体を掴んだって言ってたけど、あれは何だったんだ?」
「聖属性の怪鳥、ホワイトバードの亜種であるホワイトバード・シャドウだね」
「姿だけでなく気配も消すことができるSランク指定の魔物だな。何でそんな奴が……」
ジュリアが苦々しげに呟く。
特に最終兵器の【ホーリーライト】は強力で、今までSランク冒険者を何人も葬ってきた。
高ランク冒険者の死因ランキング第一位の非常に危険な魔物である。
「分かった。とりあえずジュリア隊百は東で戦っているシルさんっていう人のところへ」
「一体でも多く魔物を減らしましょう」
アリアが補足すると、ジュリアと俺から見て左半分の兵士たちが鬨の声を上げた。
問題は残りの百人だな。
状況的に嫌味……というか難癖おじさんを部隊長に据えるのが適任だが、指示に従わない可能性がある。
リスキーだが……やるしかないのか?
躊躇していると、間の悪いことにジュリアが先手を打ってきてしまった。
こうなったら選択肢は一つしかない。
「ティッセ殿、残りの百人はどうするんだ?」
「そこにいる銀色の鎧の方に率いてもらいます。そちらの百人は北側へ行ってください」
「はっ」
短く返事をしながらも、明らかに不機嫌そうな難癖おじさん。
だから北側に向かってもらったのだが。
北側は危険な魔物が多い地帯なので、俺の指示に従わなかったら確実に死ぬだろうな。
そんな場所に他国の部隊を送るのは非人道的かもしれない。
しかし、難癖おじさんたちにホワイトバード・シャドウの相手をさせる方が圧倒的にマズイ。
最悪の場合は全滅もあり得る。
そうならないために、俺たち四人でホワイトバード・シャドウの相手をするしかないのだ。
「皆さん、ティッセの指示は分かりましたね? それでは行動開始!」
「おうっ!」
まず声を上げて動き出したのは、意外にも難癖おじさんだった。
俺の顔を見たくなかっただけかもしれないが、戦闘になると雰囲気が変わるのはいいな。
それだけ集中力などが上がったということだ。
続いてジュリアたちの部隊が動き出し、その場には俺たち四人だけが残された。
「よし、俺たちはホワイトバード・シャドウを倒すぞ」
俺がそう言うと、三人は揃ってキョトンとした顔を浮かべた。
あれ……俺、変なこと言った?
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