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第3章 銀髪の兄弟と国を揺るがす大戦
『112、イルマス教の内乱(十一)』
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鏡のようになった結界は敵の攻撃を消滅させるのではなく、的確に跳ね返していく。
相手は自身が放った攻撃で命を落とすわけだ。
「魔法兵は攻撃を中断。これより接近戦で決着をつける。全軍は我に続け!」
「おおっ!」
黒い馬に乗って駆けてくる人物には見覚えがある。
アラッサム王国が音楽魔法を使った時、会議で一緒になったイワレスの王子だ。
名前は・・・ヘウムとか言ったっけ。
「落ち着いて迎え撃て。僕がここにいる限り、敵の進路は限られているのだから」
「リレンの指示に従え。策に従えば大丈夫だ」
青く光る剣を構えたボーランが突撃に慄く兵たちを鎮める。
その言葉に落ち着きを取り戻した兵たちは、勢いに乗って数で勝る敵兵を押し返す。
不愉快そうに顔を歪めたのはヘウムだ。
兵の数で有利を取っておきながら、俺の結界戦術に手も足も出ない。
大将としては失格である。
「何をしている。兵を3つに分けて結界に向けろ。あの結界は内側からは攻撃できん」
「チッ・・・気づかれたか」
この結界の欠点は内側にいる俺からの攻撃は通らないということだ。
だから魔力を通し続けて防御を固めるしかない。
内心で舌打ちをした俺は、ライフ・バーン・エクスプロージョンの出力を上げた。
これで直接攻撃にも耐えられるだろう。
「後ろからの兵をエーリル将軍たちが堰き止めている間に倒すぞ。気合を入れろっ!」
「はいっ!リレン王子の名の下にっ!」
味方兵の頼もしい叫び声を聞きながら、飛びそうになる意識を必死に覚醒させる。
もう魔力が尽きそうだということか。
しかし敵兵の姿を見るに、まだ8000は残っているから結界は解除不可能。
今は耐えるしかない。
「リレン、大丈夫か?お前のおかげで戦いは楽だ。辛いだろうがもう少し頑張ってくれ」
「分かった。ボーランも死なないようにね」
汗を流しながら結界を維持している俺に言えたセリフではないだろうが。
しかし、自分で勝手な行動をしておきながら途中離脱などという無様な姿は晒せない。
必ず戦勝まで持ち込んでやる。
「よし、ちょっと早いけど第2段階行くよ。古代魔法の肆、ライフ・バーン・フラッシュ!」
「技の二重がけ!?そんなの体が・・・」
今は自分の体よりも、この戦での勝ちをイルマス教国に届けるほうが大事だ。
ボーランも理解しているのか、躊躇しながらも前を向く。
「結界の上部に魔法砲を発動。攻撃は火魔法、水魔法、光魔法とする!」
「うわっ・・・しかも背後にまで攻撃するつもりだ」
この砲台の素晴らしいところは方向を自在に操れるというところだろう。
ゆえに4台設置し、後ろにも砲台の先を向けることによって援護も可能になる。
エーリル将軍たちも死なせるわけにはいかないからな。
「魔法砲台、発射!」
「何なのだ、あの魔法は!遠距離からあの威力を出せるのはマズイ・・・」
近距離にいるためヘウム自身は喰らっていないが、控える兵たちはまともに喰らう。
着実に兵は数を減らされていた。
「グワッ・・・まさか喰らったのが水の檻だとは・・・。私も運の尽きだな」
「デーガン様!?密輸路をどこまで壊せば気が済むのだ、グラッザドの第1王子!」
「さあ?全部でしょうか」
答えるのもキツイ状態だが作戦の成功には挑発が必要不可欠だ。
挑発されたヘウムは、目論見通りに怒って突撃を命じた。
「もう我慢ならん。全軍突撃。私も突撃する!」
「今だな。第3段階。古代魔法の五、ライフ・バーン・インフィニティ!全員を捕らえよっ!」
「もう驚かないぞ。しかし大丈夫か?3つも重ねて・・・」
ほとんど残っていない魔力をありったけ込めて、魔法の檻を敵を囲むように作った。
魔法の種類は火魔法。
後は水魔法を池のように平べったく固まらせ、火魔法の檻の上部を塞ぐようにして置く。
そう。挑発した後にわざと結界を透明にしたのだ。
だから敵は結界が解除されたと勘違いを起こして、俺を捕まえようと纏まった。
相手が纏まってしまえば、こちらの作戦勝ち。
前世の知識にある酸素を死なない程度に奪ってしまえば、勝手に気絶してくれる。
ヘウムが苦しむ声が聞こえてきたので水魔法を解除した。
これで空気は吸えるだろうが、火魔法の熱さと重なって脱水症状を起こしているはずだ。
「よし、次は後ろだ。3つめは解除。再び第2段階に移行!」
俺の体の負担が軽くなった。
エーリル将軍たちに当たらないように注意しながら、光の矢を降り注がせる。
視力を限界を超えるくらい大幅に上昇させているからか、目から血が垂れて来た。
ただ、敵の数は確実に減っていく。
後はエーリル将軍や他の兵たちに任せようか。ようやく結界を解除できるな。
「古代魔法の弐、術式解除。よ・・・し・・・兵たち・・・を捕ま・・・え・・・てしま・・・お・・・う・・・」
「リレン!?」
魔力が枯渇した俺の体をとてつもない倦怠感が襲い、思わず地に伏す。
ああ・・・みんな、ごめん。
ライフ・バーンの影響もあるから死ぬかも。
生きて帰れるように調整しようと思ったんだけどな。さすがに敵の数が勝ったか。
勝手に行動して、死にそうになって・・・俺って最悪。
------------------------------------------------------------
※お知らせ
私用のため、7/29~31日更新分の1話の文字数がかなり少なくなります。
ご容赦ください。
いつも稚拙な作品をお読みいただき、ありがとうございます。
相手は自身が放った攻撃で命を落とすわけだ。
「魔法兵は攻撃を中断。これより接近戦で決着をつける。全軍は我に続け!」
「おおっ!」
黒い馬に乗って駆けてくる人物には見覚えがある。
アラッサム王国が音楽魔法を使った時、会議で一緒になったイワレスの王子だ。
名前は・・・ヘウムとか言ったっけ。
「落ち着いて迎え撃て。僕がここにいる限り、敵の進路は限られているのだから」
「リレンの指示に従え。策に従えば大丈夫だ」
青く光る剣を構えたボーランが突撃に慄く兵たちを鎮める。
その言葉に落ち着きを取り戻した兵たちは、勢いに乗って数で勝る敵兵を押し返す。
不愉快そうに顔を歪めたのはヘウムだ。
兵の数で有利を取っておきながら、俺の結界戦術に手も足も出ない。
大将としては失格である。
「何をしている。兵を3つに分けて結界に向けろ。あの結界は内側からは攻撃できん」
「チッ・・・気づかれたか」
この結界の欠点は内側にいる俺からの攻撃は通らないということだ。
だから魔力を通し続けて防御を固めるしかない。
内心で舌打ちをした俺は、ライフ・バーン・エクスプロージョンの出力を上げた。
これで直接攻撃にも耐えられるだろう。
「後ろからの兵をエーリル将軍たちが堰き止めている間に倒すぞ。気合を入れろっ!」
「はいっ!リレン王子の名の下にっ!」
味方兵の頼もしい叫び声を聞きながら、飛びそうになる意識を必死に覚醒させる。
もう魔力が尽きそうだということか。
しかし敵兵の姿を見るに、まだ8000は残っているから結界は解除不可能。
今は耐えるしかない。
「リレン、大丈夫か?お前のおかげで戦いは楽だ。辛いだろうがもう少し頑張ってくれ」
「分かった。ボーランも死なないようにね」
汗を流しながら結界を維持している俺に言えたセリフではないだろうが。
しかし、自分で勝手な行動をしておきながら途中離脱などという無様な姿は晒せない。
必ず戦勝まで持ち込んでやる。
「よし、ちょっと早いけど第2段階行くよ。古代魔法の肆、ライフ・バーン・フラッシュ!」
「技の二重がけ!?そんなの体が・・・」
今は自分の体よりも、この戦での勝ちをイルマス教国に届けるほうが大事だ。
ボーランも理解しているのか、躊躇しながらも前を向く。
「結界の上部に魔法砲を発動。攻撃は火魔法、水魔法、光魔法とする!」
「うわっ・・・しかも背後にまで攻撃するつもりだ」
この砲台の素晴らしいところは方向を自在に操れるというところだろう。
ゆえに4台設置し、後ろにも砲台の先を向けることによって援護も可能になる。
エーリル将軍たちも死なせるわけにはいかないからな。
「魔法砲台、発射!」
「何なのだ、あの魔法は!遠距離からあの威力を出せるのはマズイ・・・」
近距離にいるためヘウム自身は喰らっていないが、控える兵たちはまともに喰らう。
着実に兵は数を減らされていた。
「グワッ・・・まさか喰らったのが水の檻だとは・・・。私も運の尽きだな」
「デーガン様!?密輸路をどこまで壊せば気が済むのだ、グラッザドの第1王子!」
「さあ?全部でしょうか」
答えるのもキツイ状態だが作戦の成功には挑発が必要不可欠だ。
挑発されたヘウムは、目論見通りに怒って突撃を命じた。
「もう我慢ならん。全軍突撃。私も突撃する!」
「今だな。第3段階。古代魔法の五、ライフ・バーン・インフィニティ!全員を捕らえよっ!」
「もう驚かないぞ。しかし大丈夫か?3つも重ねて・・・」
ほとんど残っていない魔力をありったけ込めて、魔法の檻を敵を囲むように作った。
魔法の種類は火魔法。
後は水魔法を池のように平べったく固まらせ、火魔法の檻の上部を塞ぐようにして置く。
そう。挑発した後にわざと結界を透明にしたのだ。
だから敵は結界が解除されたと勘違いを起こして、俺を捕まえようと纏まった。
相手が纏まってしまえば、こちらの作戦勝ち。
前世の知識にある酸素を死なない程度に奪ってしまえば、勝手に気絶してくれる。
ヘウムが苦しむ声が聞こえてきたので水魔法を解除した。
これで空気は吸えるだろうが、火魔法の熱さと重なって脱水症状を起こしているはずだ。
「よし、次は後ろだ。3つめは解除。再び第2段階に移行!」
俺の体の負担が軽くなった。
エーリル将軍たちに当たらないように注意しながら、光の矢を降り注がせる。
視力を限界を超えるくらい大幅に上昇させているからか、目から血が垂れて来た。
ただ、敵の数は確実に減っていく。
後はエーリル将軍や他の兵たちに任せようか。ようやく結界を解除できるな。
「古代魔法の弐、術式解除。よ・・・し・・・兵たち・・・を捕ま・・・え・・・てしま・・・お・・・う・・・」
「リレン!?」
魔力が枯渇した俺の体をとてつもない倦怠感が襲い、思わず地に伏す。
ああ・・・みんな、ごめん。
ライフ・バーンの影響もあるから死ぬかも。
生きて帰れるように調整しようと思ったんだけどな。さすがに敵の数が勝ったか。
勝手に行動して、死にそうになって・・・俺って最悪。
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※お知らせ
私用のため、7/29~31日更新分の1話の文字数がかなり少なくなります。
ご容赦ください。
いつも稚拙な作品をお読みいただき、ありがとうございます。
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