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第3章 銀髪の兄弟と国を揺るがす大戦
『113、閑話 バカだな (ボーラン視点)』
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こちら側での戦が終わった後にリレンが地に伏した。
顔は青ざめており、呼吸は驚くほど荒いから今にも死んでしまいそうだ。
「リレン・・・まさか死んでないよな?」
せっかく出来た友達を亡くしたくないという思いだけで近づく。
もちろん敵は水の檻で閉じ込めているが。
恐る恐る近づいていくと、お腹が荒い呼吸に合わせて上下しているのが目に入る。
「良かった。死んでなかった」
ひとまず安心だな。
強化魔法を3つも自分にかけるなんて、常人であれば普通に死んでいるはずだ。
それでも命に別状はなさそうだから、王族っていうのはやっぱり凄い。
「そっちは大丈夫だった?ってリレンはどうしたの?」
「強化魔法の使い過ぎだ。自分に3つもかけて戦いが楽になるように仕向けたんだな」
「まさか・・・フェブアーさんのために?」
フローリーが信じられないといった表情でリレンを見下ろしている。
魔力の枯渇は治癒魔法では治せないため、このまま拠点まで運ぶしかない。
「よっと・・・って軽い!」
持ち上げてみると、リレンの体は思った以上に軽かった。
ちゃんとご飯を食べているのだろうか。
「魔力が無くなったせいかしら?リレンがご飯を食べてないとも思えないし」
「確かにな。俺たちの体調まで気遣ってくれるもん」
領地巡りの旅でも今回の旅でも、リレンは俺たちのことを気にかけてくれた。
ご飯もしっかり食べていたように思える。
「エーリル将軍たちの方は大丈夫だったのか?10000はいたんだろ?」
「でも適度に魔法の砲撃が来て魔術師を倒してくれたから。あれはリレンがやったのね」
フローリーが金の髪を撫でる。
いつもは風に吹かれて輝く金髪も今では湿り、碧い目は閉じられていて見えない。
「リレン様!?まさか・・・」
「カルスさん。気持ちは分かりますけど焦り過ぎです。魔力が切れただけですよ」
「そうですか。本当に良かったです」
せっかく見つけた主を失いたくない気持ちは痛いほど分かる。
俺も友達である彼を大切に思っているのだから、カルスさんはなおさらであろう。
「リレン様!?・・・見たところ大丈夫そうですね」
「呼吸はしてますし、魔力が枯渇してしまったのでしょう。あんな魔法弾を放つから・・・」
フェブアーとエーリル将軍も安堵の表情を見せた。
リレン・・・お前はバカだな、と心の中で悪態をついてから、彼をカルスさんに預ける。
こんなに心配してくれる人がいるのに。
「早く目覚めて安心させてくれよって言いたいな。無茶しやがって・・・」
「本当ね。とりあえず見えた傷は治したけど。隠れているお姉ちゃんの反応が見ものだわ」
おいおい・・・心配している姉の反応で楽しむなよ。
俺は呆れながら、意地の悪い笑みを浮かべるフローリーに続いて拠点に入る。
春の風が頬を撫でる。
少しは魔剣士としてリレンの役に立ててればいいな。
俺はそんなことを思った。
--------------------------------------------------------------
※お知らせ
予告通り、今日から3日分の話が短くなります。
そこから先は普段通りの文字数になりますのでご安心下さい。
これからも稚拙ではありますが、この作品をよろしくお願いいたします。
顔は青ざめており、呼吸は驚くほど荒いから今にも死んでしまいそうだ。
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「強化魔法の使い過ぎだ。自分に3つもかけて戦いが楽になるように仕向けたんだな」
「まさか・・・フェブアーさんのために?」
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魔力の枯渇は治癒魔法では治せないため、このまま拠点まで運ぶしかない。
「よっと・・・って軽い!」
持ち上げてみると、リレンの体は思った以上に軽かった。
ちゃんとご飯を食べているのだろうか。
「魔力が無くなったせいかしら?リレンがご飯を食べてないとも思えないし」
「確かにな。俺たちの体調まで気遣ってくれるもん」
領地巡りの旅でも今回の旅でも、リレンは俺たちのことを気にかけてくれた。
ご飯もしっかり食べていたように思える。
「エーリル将軍たちの方は大丈夫だったのか?10000はいたんだろ?」
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フローリーが金の髪を撫でる。
いつもは風に吹かれて輝く金髪も今では湿り、碧い目は閉じられていて見えない。
「リレン様!?まさか・・・」
「カルスさん。気持ちは分かりますけど焦り過ぎです。魔力が切れただけですよ」
「そうですか。本当に良かったです」
せっかく見つけた主を失いたくない気持ちは痛いほど分かる。
俺も友達である彼を大切に思っているのだから、カルスさんはなおさらであろう。
「リレン様!?・・・見たところ大丈夫そうですね」
「呼吸はしてますし、魔力が枯渇してしまったのでしょう。あんな魔法弾を放つから・・・」
フェブアーとエーリル将軍も安堵の表情を見せた。
リレン・・・お前はバカだな、と心の中で悪態をついてから、彼をカルスさんに預ける。
こんなに心配してくれる人がいるのに。
「早く目覚めて安心させてくれよって言いたいな。無茶しやがって・・・」
「本当ね。とりあえず見えた傷は治したけど。隠れているお姉ちゃんの反応が見ものだわ」
おいおい・・・心配している姉の反応で楽しむなよ。
俺は呆れながら、意地の悪い笑みを浮かべるフローリーに続いて拠点に入る。
春の風が頬を撫でる。
少しは魔剣士としてリレンの役に立ててればいいな。
俺はそんなことを思った。
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※お知らせ
予告通り、今日から3日分の話が短くなります。
そこから先は普段通りの文字数になりますのでご安心下さい。
これからも稚拙ではありますが、この作品をよろしくお願いいたします。
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