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プロローグ
しおりを挟むあの時、彼に会ったのは運命だったのだろうか。
恋なんかどうでもいいと、
ただ、レールに沿った人生
を歩めば、無駄な感情にも
左右されずに穏やかに
生きていけると、ずっと思っていた。
それが優哉(ゆうや)に出会って、
砂のように、音もなく、
崩れてしまったの。
どういう生き方が正しいのだろう。
こんなに心が揺さぶられることも初めて。
姉は私に言う。
「よかったじゃない、ロボットから
人間になれて…
今のあなたの方がよっぽど、魅力的よ」と。
本当によかったのだろうか。
今では分からない。
私の大部分を占めていた理性は枯れてしまった。
親の思う通りに生きてきた私に、
人を思う切なさを与えてくれたのが
優哉だった。
平凡で安定した暮らしもいらないって、
もうただあなたの笑顔を見ていられれば、
幸せって思ってしまったの。
私らしくないわ。
いったい私の理性はどこに
行ってしまったんだろう。
不甲斐ない出来事の数々が私を
暗闇に支配する。
冷静にならなければ…
この恋を終わらせたら、きっと楽になる。
とにかく、この曖昧な関係を終わらせよう。
私はそう、固く、決意して、
バッグに閉まっていた
携帯を取り出し、急ぎ足で、家を出た。
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