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櫻井海斗
20××年6月12日15:45
しおりを挟む「京香!今日、一緒に帰れる?」
「あー、ごめん。今日用事あって早く帰らなきゃいけないから…」
「わかった…」
下校時間になり、教室の前で京香に声をかけたが、断られてしまった。
部活が引退してからあまり話すこともなくなり、俺が話しかけなければ、自然消滅してしまいそうな状況であった。
「海斗、このあと時間ある?」
隣のクラスの美緒に肩を叩いて呼ばれた。美緒は前にサッカー部の須藤と付き合っていて、俺と京香と4人でよく遊びに行っていたこともあり、仲が良かった。一年前に2人が別れた後も、たまに話すような間柄ではあった。
「別にあるけど」
「行きたいところあるんだけど一緒に行けない?」
「え、でも…」
「お願い!ダメかな?」
「まあ…いいよ」
「ほんと!ありがとう!」
同じバスに乗って、駅へ向かった。駅前のカフェに入った。
「で、なんで俺を誘ったの?」
「それは…その…好きだから…」
「え?」
「海斗のことが好きで。でも海斗は京香と付き合ってることも知ってるから、黙っておこうって思ってたんだけど、京香と海斗、最近一緒にいないし…」
途中からうつむいて、俺と目線を合わせようとしなかった。しばらく沈黙が続いた後で気まずいと思ったのか、彼女はぎこちなく笑った。
「…ごめんね。こんなこと言って。帰るね。今日はありがとう。」
そう言って、席を立とうとしたのを咄嗟に彼女の手首を掴み、止めてしまった。
「え…これって…いいよってこと?」
何も言えず、黙り込んでしまった。
「無言は肯定だとみなすよ」
結局何も言えず、そのままズルズルと関係を続けてしまった。
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